2022.5.10
【米研究】"もう一つのゲートキーパー"の登場?血液で自殺リスクの予測が可能に!?

コロナショックで再び自殺者が増加傾向に
カリフォルニア大学アービン校の研究チームが、Pritzker Research Consortiumと共同で行った研究によると、大うつ病性障害(Major depressive disorder:MDD)、いわゆる「うつ病」患者の、自殺リスクを予測できる血液バイオマーカー(※1)を同定するアプローチを開発したことが医学雑誌『Translational Psychiatry』に掲載されました。
ある疾患の有無や、進行状態、治療の有効性や副作用の反応をみる生物学的指標のこと。
分かりやすく言えば、血液と脳のサンプルデータから、その人の将来的な自殺リスクを判定することができ、実際の自殺の実行を未然に防ぐための配慮が可能となるアプローチであるということ。
日本では、第二次平成不況にあたる平成10年に自殺者が前年の24,391人から、一気に32,863人と3万人の大台を突破したのを契機に自殺者数は高止まりを見せ、リーマンショック後の平成23年まで3万人台が続きました。
以降毎年、減少傾向にあった自殺者数はコロナショックと呼ばれる新型コロナウイルスの世界的大流行による影響で、令和2年から再び増加しています。
昨年(令和3年)の自殺者数は21,007人と、前年より74人減っていますが、女性は2年連続の増加となっており、その窮状が危惧されます。
もう一つのゲートキーパー
研究では、うつ病による自殺者、うつ病患者である非自殺者(自然原因)、そして対照群の保存血液と背外側前頭前皮質 (Dorsolateral prefrontal cortex:DLPFC)のサンプルが分析の対象となっています。
その結果、ポリアミン代謝、概日リズム、免疫調節不全、テロメア維持などのストレス反応における遺伝子発現の変化を発見しました。
※概日リズム:一般的に「体内時計」といわれるもの。ほとんどの生物に存在する約25時間周期で変動する生理現象のこと。
※テロメア:細胞の染色体末端にある特定の塩基配列の反復とタンパク質からなる複合体のことを指し、DNAを保護する役割を担っている。詳細は過去記事を参照のこと。

こうした人的な防波堤は、人の温かみ、優しさ、他者を慮る気持ちが作用して成り立ちます。その一方で、血液バイオマーカーのような医学的見地による「もう一つのゲートキーパー」があれば、少しでも自殺者を減らすことに役立つのではないでしょうか。
人が誰1人として孤立することのない社会。
人が人を思い合える温かい社会。
「生きていて良かった」と思える社会。
そんな当たり前の社会が訪れることを真に願って止みません。
いえ、訪れるのを待つのではなく、私たち一人一人がそのように努力することが社会を変えるのでしょう。
(文=久保多渓心)
参考文献
Identification of potential blood biomarkers associated with suicide in major depressive disorder『Translational Psychiatry』※
Researchers reveal possible molecular blood signature for suicide in major depression『Medical Xpress』※
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心と体を調える 女性のための新感覚スピリチュアルメディア編集部。