2022.6.20
【豪研究】アレルギー反応を引き起こすことで知られる「好酸球」が、腸を守っていることが判明!

オーストラリア・ビクトリア州立モナシュ大学、カナダのカルガリー大学、スイスの研究者らによる共同研究の結果、白血球の細胞のひとつである「好酸球(こうさんきゅう/ eosinophil granulocyte)」が健康な腸の維持に重要な役割を果たしていることが分かりました。
オープンアクセスの医学誌(免疫学)『Immunity』に掲載されています。
末梢血(血管の中を流れる血液のこと)中に好酸球が占める割合は、健康な人であれば1〜4%(200/mm3)ほど。
この好酸球が通常の3倍以上増えると「好酸球増多(増加)症」が認められ、軽度では500〜1500/mm3、中等度では1500〜5000/mm3、重度では5000/mm3と定義されています。
体内に侵入した寄生虫や細菌を攻撃してくれる骨髄由来の顆粒球ですが、同時に健康な組織まで傷付けてしまう特性を持ちます。
好酸球増多症の最も顕著な例は、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、気管支喘息などで、様々な薬剤アレルギーによっても引き起こされます。
このように好酸球は、重度のアレルギー症状をもつ人々の末梢血中で増加することが分かります。
好酸球は良いイメージよりも、悪いイメージの方が先行しています。研究者らは、かつての研究を紐解き、消化管の白血球では好酸球が10〜30%を占めていることに注目します。
Nicola L. Harris博士(モナシュ大学)
'Bad guy' blood cells vital to gut health found『Medical Xpress』※

腸内の絨毛
研究チームは、小腸における好酸球の役割の可能性について調査を進めました。
この調査では、好酸球が絨毛(じゅうもう)を無傷のまま維持し、組織損傷を抑えていることを発見します。
絨毛は、小腸の粘膜にある無数の樹状突起のことです。腸内の表面積を増大させ、効率よく栄養素を吸収できるようにする役割があります。

『Immunity』より ※
好酸球が存在しなければ、腸の運動性が調整不全に陥って、組織の構造に負の影響を与える可能性があることも分かっています。
腸にも多くの好酸球が存在しますが、これまでその機能について検討される機会は多くありませんでした。
アレルギー反応を引き起こしたり、アレルギー反応を誘引すると考えられていた好酸球が、腸の絨毛を守っていたとは驚きです。
健康維持や、美容のため腸内環境を整える「腸活」という言葉が、女性の間で浸透しています。
この「好酸球」というワードが、クローズアップされる日も近いかもしれません。
(文=久保多渓心)
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参考文献
Small intestinal resident eosinophils maintain gut homeostasis following microbial colonization『Immunity』※
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