2022.7.11
【香港研究】眼に電気刺激を与えると、うつ病の症状が緩和され、ストレスホルモンが減少!?

これまで、眼の健康が寿命に影響を与えること、眼の網膜電図による測定で、ASD・ADHDの診断が可能となることなどをお伝えして来ました。
今回も「眼」に関する情報をお届けします。
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コロナ禍で増加した精神疾患
香港大学李嘉誠医学院(The Li Ka Shing Faculty of Medicine:LKS)、香港市立大学(City University of Hong Kong:CityU)の共同研究により行われた動物実験の結果、眼の表面に電気刺激を与えることで、うつ病の症状を軽減し、認知機能を改善出来ることを発見しました。
新型コロナウイルス感染症(Covid-19)によるパンデミックは、私たちの心身に多大で深刻な影響を与えました。
仕事を失ったり、収入が減ることで経済状況がみるみる悪化した方も多かったでしょう。長期間に渡る自粛生活(国によっては完全なロックダウンも実施)で、家族間の問題が浮き彫りになったり、孤独を強く感じることもあったでしょう。
こうした精神的なストレスにさらされ続けたことによって、2020年に世界でうつ病患者は5,300万人超、不安障害患者は7,600万人超となり、大幅な増加を示しています。特に、女性と若年層での影響は顕著でした。
眼に電気刺激を与えると、うつ病が緩和?
LKSの助教を務めるLim Lee Wei博士を中心としたチームは2015年に、動物の脳の前頭前野を脳深部で刺激すると、記憶が改善され、抑うつ症状が緩和されることを報告しています。
これらの効果は、記憶と空間学習能力に関わる脳の領域であり、うつ病やPTSD(心的外傷後ストレス障害)では、萎縮が見られることでも知られる「海馬」の脳細胞の成長に起因していました。
しかし、この部位への治療行為は、脳に電極を埋め込む手術を必要とし、感染症や他の術後合併症などの副作用を引き起こす可能性があったのです。
Lim Lee Wei博士が率いる研究チームは、こうした精神疾患の代替治療を模索する中で、今回の発見へと繋がりました。
脳に直接メスを入れない「非侵襲(ひしんしゅう)的刺激」を用いる方法に「経角膜電気刺激法(transcorneal electrical stimulation:TES)があります。
◎経角膜電気刺激法:眼の表面に電極を当て、眼の奥の網膜神経細胞を活性化させる方法。主に視神経疾患に用いられている。
「これらの研究結果は、うつ病や認知症に苦しむ患者のための新しい治療法を開発するための新たな機会への道を開くものです。臨床試験を実施して有効性と安全性を確認する必要があります」
Researchers discover non-invasive stimulation of eye as potential treatment of depression and dementia『Medical Xpress』より
薬物療法に頼る傾向のある、うつ病や不安障害。
薬物に依存してしまい、いざ投薬をやめようとしても離脱症状に苦しんでいらっしゃる方も多いのが実情です。減薬や断薬も、一筋縄ではいきません。
このTESによる治療の有効性と安全性が確認されれば、うつ病や不安障害で苦しんでいらっしゃる方の光明となることでしょう。
以後の研究の行く末を、期待して待ちたいと思います。
(文=久保多渓心)
news source
Antidepressant-like effects of transcorneal electrical stimulation in rat models『Brain Stimulation』
Transcorneal electrical stimulation enhances cognitive functions in aged and 5XFAD mouse models『Annals of the New York Academy of Sciences』
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