2022.7.22
【カナダ発】欧米で増加!食品添加物による中毒と自殺の関係

「亜硝酸ナトリウム」という食品添加物をご存知でしょうか。
近年、海外ではこの亜硝酸ナトリウムが、中毒を起こしたり、自殺に使われるとして専門家たちが厳しい規制を政府に求める動きが出ているようです。
亜硝酸ナトリウムとは?
亜硝酸ナトリウムは、いわゆる「発色剤」として知られる食品添加物です。
ハムやベーコン、ソーセージといった食肉加工品、明太子やイクラなど魚卵類の、食欲をそそる鮮やかな赤みを出し、維持させるために用いられています。
肉や魚卵類に豊富に含まれる化合物、第2級アミンと亜硝酸ナトリウムが結合すると「ニトロソアミン」という発がん性物質に変異します。
このことにより、亜硝酸ナトリウムが含まれる食品を食べ続けることによって、癌の発病リスクは高まるといわれています。
食品の安全性については、国際的な期間によって無毒性量(No Observed Adverse Effect Level:NOAEL)、耐容一日摂取量・一日許容摂取量(Tolerable Daily Intake:TDI)といった数値基準が定められています。
無毒性量とは、動物実験などによってこの量を超えない限り発病するなど有害な影響が出ない最大量のことで、耐容一日摂取量とは人が毎日食べ続けても有害な影響が出ない量のことです。
日本の食品衛生法では、亜硝酸ナトリウムの残存量は「70ppm(1kgに対し0.07g=70g)以下」であることとする基準が設けられています。
また、耐容一日摂取量では「0.06㎎以下×体重(Kg)/日」となります。つまり、体重10kgの子どもであれば、0.6mgが1日の許容摂取量です。
多くの食品会社では、定められた数値の100分の1の含有量になるように独自の基準を設けているため、安全であるとされています。
しかし、もしも最大限の含有量であれば、10gで基準値の摂取量を超えてしまう計算になります。
亜硝酸アトリウムは、劇物に指定されており、消防法でも危険物第一類に指定されています。致死量は約2gで、高濃度の溶液を摂取すると、頭痛や吐き気、意識障害を呈します。
欧米で、亜硝酸ナトリウムの中毒が増えている!
カナダで最も人口の多い州、オンタリオ州では1980年から2020年にかけて、少なくとも28人の亜硝酸ナトリウムによる中毒死が発生し、そのほとんどがこの期間の最後の2年間で起こっています。
州外のノースウェスト準州と、サスカチュワン州でもサービスを提供している、アルバータ州保険サービス・中毒センターでは昨年、2件の重大な亜硝酸ナトリウムでの被害報告があり、今年も既に2件の同様の報告があります。
アメリカの全米毒物データシステム(https://aapcc.org/national-poison-data-system)では、2015年から2020年の間に、47件の亜硝酸ナトリウム中毒が記録されています。不思議なことに、前述のカナダのオンタリオ州と同様に、中毒の報告は2019年から2020年に集中しています。
カナダ・アルバータ州に拠点を置く中毒情報局のEric McGillis氏は、亜硝酸ナトリウムによる中毒は最近までほとんど知られておらず、ここ数年で指数関数的に増加の傾向にあると述べています。
中毒者増加の背景に、オンライン・フォーラムの存在
この背景には、自殺を目的としたオンライン・フォーラムの存在があります。このフォーラムの中で、亜硝酸ナトリウムの服用方法などが詳しく解説されているのです。
Amazonでは、この亜硝酸ナトリウムが容易に買えるため、遺族から訴訟を起こされています。その結果、検索結果のトップに亜硝酸ナトリウムのが表示されなくなっています。
また、この他の有名ショッピングサイトでは、販売そのものを禁止しています。
亜硝酸ナトリウムの中毒症状とは?
亜硝酸ナトリウムを摂取すると、メトヘモグロビン血症 (細胞に供給される酸素が不足する血液疾患)が発生し、急速に低酸素症を引き起こし、場合によっては死に至ることもあります。
メトヘモグロビン血症の代表的な症状は、皮膚が青紫色に変色するチアノーゼです。その他の症状としては、頭痛、酸素レベルの低下、意識障害、血液のチョコレート色への変化などがあります。
急性期の解毒には、「メチレンブルー(メチルチオニニウム)※」を用います。
医療の改善、医薬品の安全性の向上などを目指した研究を行う「Institute for Safe Medication Practices Canada(ISMP Canada)」は、亜硝酸ナトリウム中毒患者を治療するために、すべての救急医療機関がメチレンブルーを常備しておくべきだと勧告しています。
オンタリオ、マニトバ、ヌナブト中毒センターの医療責任者であるMargaret Thompson氏は、メチレンブルーの入手や投与に関する混乱が治療の遅れにつながったという事件を受けて、この勧告を支持しました。
食品業界は亜硝酸ナトリウムを合法的な目的で使用しているため、亜硝酸ナトリウムへのアクセスを制限することで、中毒を防止するのは難しいかもしれない、とThompson氏は言います。
亜硝酸ナトリウムの入手ルート
「亜硝酸ナトリウムにアクセスする前には、必ず注意が必要です」 と、ヴァージニア・コモンウェルス大学(Virginia Commonwealth University:VCU)のYub Raj Sedhai臨床助教授は言います。
4月、Sedhai氏らは、Amazonから購入した亜硝酸ナトリウムを摂取した37歳の男性の治療に関する症例報告を発表しました。
Sedhai助教授らは症例報告の中で、この物質は容易に手に入りやすく、食塩と間違えられる可能性があるため、人々は 「知らないうちに過剰摂取している」 可能性もあると指摘しています。
イギリスは亜硝酸ナトリウムを 「報告対象物質」 に指定しており、疑わしい購入をした場合は販売者が当局に報告しなければなりません。しかし、このような措置が意図的な中毒を減らすかどうかは不明です。
自殺率上位国の常連だったスリランカでは、特定の農薬の使用禁止が可決され、自殺率は70%減少しています。この強毒性の農薬の規制によって、1995年から2015年の間で、約9万3000人の命が救われたといわれています。
他の物質を規制しても同じような影響は出ていないとThompson氏は言います。
禁止に代わる方法の1つは、危険物質の販売を少量に規制することです。
正当な理由でその物質が必要な人には十分ですが、死を引き起こすほどの量ではない。
しかし、亜硝酸ナトリウムの場合は少量でも死に至る可能性があるため、必ずしもそうではありません。それでも、複数の商品を購入することは容易です。
個人への販売を制限し、企業への販売を許可する方法もあります。
カナダ保健省の広報担当者によると、「亜硝酸ナトリウムの規制監督は、販売された製品の最終用途に応じて、連邦、州、地域の規制当局間で共有されている」といいます。
意図的な中毒に対するカナダ保健省の取り組みについて質問された同広報担当者は「政府は精神衛生とウェルネスの支援に注力している」と述べています。
食品に対する「見た目」「食欲をそそる鮮やかな色合い」を重視するのは、日本人に限ったことではありませんが、食品添加物への意識は、世界的にみても必ずしも高いとはいえない実情があります。
自殺にも用いられるような、毒性の高い添加物が無毒性量、一日許容摂取量といった規制値の範囲内とはいえ、摂取することが常態化している現状というのを、グローバルな視点で今一度見直してみる必要がありそうです。
(文=久保多渓心)
News Source
Troubling Rise in Suicides Linked With Common Food Preservative『Neuroscience News.com』
亜硝酸ナトリウム(発色剤)|避けた方がよい添加物『White Food』
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