【英研究】「匂い」が子どもの頃の記憶を呼び起こし、幸福感を与えることが判明

2022.8.5

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久保多渓心 ( ライター・占術家 )

墨が織り成す一子相伝の占術 “篁霊祥命(こうれいしょうめい)” を主な鑑定手法とする占術家。他にも文筆家やイベント・オーガナイザーとしての顔も持つ。また引きこもり支援相談活動なども行なっている。

スウェーデン王立アカデミーが運営する科学ジャーナル『AMBIO』に掲載された、英国・イングランドのケント大学・ダレル自然保護生態学研究所(Durrell Institute of Conservation and Ecology:DICE)が主導した新しい研究によると、私たちが自然の中で経験する匂い、例えば新鮮な刈られたばかりの草や、咲き誇る花の匂いは、精神的な健康を増進させるようです。

嗅覚は、人の個人的な記憶や特定の生態学的特性やプロセスと強い関連性を持って、自然との相互作用から幸福の利益をもたらすのに重要な役割を果たしていることが分かりました。

以前、『【人間関係に疲れたあなたへ】登山・ハイキングは脳の仕組みを変え、ストレスや不安を低減させる!』や『植物との対話で人は幸せになれる 〜 ルーサー・バーバンクとメスカリートと植物療法』などのコラムでも取り上げたように "自然に触れる行為" は、人の心身の健康、とくにメンタルヘルスの向上に多大な影響をもたらすことはよく知られています。

しかし、これまでに行われて来た研究では、自然の「匂い」「音」「色」などといった、どの属性が人間の幸福により影響を及ぼし得るかといった調査を行うには限界がありました。

今回の研究では、自然が幸福に影響を与える「匂い」の役割について調査を行なっています。

【人間関係に疲れたあなたへ】登山・ハイキングは脳の仕組みを変え、ストレスや不安を低減させる!

植物との対話で人は幸せになれる 〜 ルーサー・バーバンクとメスカリートと植物療法

 

森のスカベンジャーハント

調査は194人が参加し、性別、年齢、人種、出身および在住地域などに配慮した上で行われました。

2019年2月、4月、6月、10月の季節毎にワークショップが開かれ、それぞれ午前中にSherwood Forest、午後にClumber Parkを訪問しました。

森に到着すると参加者は「これから、森のスカベンジャーハント(woodland scavenger hunt)を行う」ことを告げられます。

「スカベンジャーハント」とは、日本で例えると「借り物競走」のようなゲームのことを指します。

つまり、予め与えられた制限時間内に、決められたテーマやリストに従ったものを買わずに集めてくるゲームのことです。

この研究では、1時間の制限時間中に森の中を見回して「色」「質感」「音」「形」「匂い」などの観点から気づいたことを書き留めて来るように指示を受けました。

注意事項として、他の散策者、またそうした人たちが連れている犬などのペット、人工物などではなく、森の自然の特性に焦点を当てることが挙げられました。

その、気付いた「色」「匂い」などの属性について、「好き」か「嫌い」か「無関心」かを示すようにも求められるのです。

 

匂いは、子ども時代の記憶を呼び起こす

それぞれの森林を訪れた後、参加者は10人ずつのグループに分けられました。

参加者は「この森林地帯の全体的な印象はどうでしたか?」という質問を受け、それに答えるほか、森林で気付いたり、感じた「色」や「匂い」といったそれぞれの属性が好きか嫌いか、または無関心かどうか、およびその理由についての対話を行いました。

すべての活動を通して、ウェルビーイング(心身ともに健康であること=幸福)に対する特定の関心を示さないように注意が払われました。

この調査によって分かったことは、「匂い」が子ども時代の活動に関連する記憶を呼び起こすことです。

多くの参加者は、森林そのものではなく、特定の匂いと意味のあるつながりを作り、これを思い出に残る出来事と結び付けました。その結果、記憶に対する感情的な反応を引き起こすことで、幸福感に影響を与えているようなのです。

わたしも、金木犀の匂いを嗅ぐと、小学生時代に通学路に植えられていた金木犀の匂いを思い出すとともに、その頃の友だちの顔や、通学路の詳細な道のりと、そこにあった民家の門構さえハッキリと思い出されます。

また、同時に中学進学を前に生き別れてしまった母親の顔や手の温もり、当時家族で住んでいた家の様子なども同時に思い起こされ、金木犀といえば「切なさ」と「懐かしさ」そして「温かさ」の入り混じった感情に満たされます。

夏場の瑞々しい草木の匂いは、夏休みの友だちとの冒険の数々や、心に悩みやわだかまりを抱えていなかった、無敵で遊び心に満ち溢れた純粋無垢な時代を想起させてくれ、幸福感が蘇って来ます。

匂いによっては、マイナスな思考も蘇ってしまうのかもしれませんが、自然から発せられる匂いには、子ども時代の初々しくもピュアな幸福感が、まるでタイムカプセルに納められた大切な絵日記のように存在しているのかもしれません。

 

この研究は、DICEの研究員であるJessica Fisher博士は

自然は複数の感覚を経験するものであり、私たちの研究は、幸福に対する匂いの潜在的な重要性を示している

この研究は、自然を通して幸福の成果を向上させようとしている開業医、公衆衛生専門家、政策立案者、景観計画立案者の仕事に情報と知見を提供することが出来ます。それは、公衆衛生上の利益につながる可能性もあるでしょう。

と語ります。

 

今回の調査・研究は、博士の言う通り、自然を通して人の心に安らぎと癒しを与えたいと考えている専門家の皆さんにとっては、素晴らしい情報となるでしょう。

 

 

News Source

Nature, smells, and human wellbeing『AMBIO』

Smells Experienced in Nature Evoke Positive Well-being『Neuroscience News.com』

久保多渓心 のプロフィール

久保多渓心

画家の父、歌人の母のもと、福岡市博多区で生まれる。

バンド活動を経て、DJ、オーガナイザーとしてアート系イベント、音楽イベントなどを多数手掛ける傍ら、フリーライターとしても活動。

音楽雑誌でのアーティスト・インタビュー記事、書籍、フリーペーパー、WEBなどの媒体で政治、社会問題から、サブカルチャー、オカルトまで幅広いジャンルでコラムを執筆。

引きこもり、不登校、心の病など自身の経験を活かし「ピアカウンセリング」を主軸にしたコミュニティを立ち上げる。後にひきこもり支援相談士として当事者やその家族のサポート、相談活動にあたる。

現在は亡き父から継承した一子相伝の墨を用いた特殊な占術『篁霊祥命』や、独自のリーディングによって鑑定活動を行っている。2021年で鑑定活動は16年目を迎える。

月参り、寺社への参拝による開運術の指導なども行う。

『AGLA(アグラ)』スーパーバイザーを務める。

2020年10月より活動名をマーク・ケイより、久保多渓心に改名。

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