【最新研究】漢方薬「大建中湯」が腸内環境を改善し、大腸炎の症状を軽減させる!

2022.8.26

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AGLA編集部

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「理化学研究所・生命医科学研究センター(RIKEN Center for Integrative Medical Sciences:IMS)」の新しい研究報告によりますと、山椒乾姜(生姜)、朝鮮人参マルトース(麦芽糖)を含有する漢方薬、「大建中湯(DKT)」が、「炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)」の一つである「潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis:UC)」の症状を軽減することが分かりました。

 

炎症性腸疾患とは?

炎症性腸疾患とは、その名のごとく腸に炎症を起こす病気のことです。

通常であれば、細菌やウイルスなどから身を守ってくれるはずの免疫細胞が異常をきたした結果、自分の腸の細胞を攻撃してしまう自己免疫疾患であり、「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」の2種類からなります。

炎症はヒトにとって、体の治癒や再生に欠かせない反応ですが、過剰に起こると体を傷つけてしまいます。この過剰な炎症反応が腸管に起こってしまうのが炎症性腸疾患というわけです。

14〜24歳で発症し、腹痛と下痢が主な症状です(潰瘍性大腸炎の場合、血便の症状もあり)。

腸以外にも、関節、眼、口、肝臓、胆嚢、皮膚などに症状が及ぶケースがあり、腸に癌が発生するリスクも高まります。

現在のところ、完全に治癒させる方法がなく、異常をきたした免疫反応を鎮静させ症状を抑えることが治療の主軸となっています。

◉クローン病:小腸や大腸などの消化管に慢性炎症が生じる病気。慢性の下痢、腹痛、発熱、食欲不振、体重減少などを伴う。厚生労働省から難病に指定されている。

◉潰瘍性大腸炎:大腸の粘膜に炎症が起こる原因不明の慢性の炎症性腸疾患で、潰瘍やびらんが生じる。下痢や血便、発熱、貧血などを伴う。結腸がんの長期リスクがある。

 

(炎症については以下を参照)

【豪研究】ビタミンDの欠乏を解消すると、慢性炎症が軽減できる!?

 

 

増加する大腸炎

「Frontiers Media」が発行する免疫学に特化したオープンアクセスの科学ジャーナル『Frontiers in Immunology』に掲載されたこの研究では、山椒、乾姜(生姜)、朝鮮人参、マルトース(麦芽糖)を含む大建中湯(DKT)が、腸内微生物の特徴的な不均衡を防ぎ、炎症と戦う結腸内の免疫細胞のレベルを高めることで、実験用マウスの大腸炎の重症度を軽減したことが示されています。

NYに本拠を置く「クローン病・大腸炎財団(Crohn's and Colitis Foundation:CCFA)」の調べでは、2019年には米国で160万人が炎症性腸疾患と診断され、毎年70,000件の新規症例が報告されています。

有病率は過去20年で倍増しており、現在、世界的な健康問題として、特にヨーロッパと北米で懸念されています。

日本では、潰瘍性大腸炎の患者は22万人を超えており、これはアメリカに次いで2番目に多い患者数です。

潰瘍性大腸炎は有効な治療法がなく、炎症を和らげて症状を軽減するための薬物治療が主体となります。その他、重症のケースでは手術による治療が必要となることがあります。

このため、一部の研究者は、日本や他のアジア諸国で一般的に使用されている中国原産の伝統的な漢方薬を詳しく調べ始めています。

 

大建中湯の効果

朝鮮人参

大建中湯は、特定量の山椒、乾姜(生姜)、朝鮮人参、マルトース(麦芽糖)を含む漢方薬です。

大建中湯の「大」は「極めて」、「建」は「建て直す」、「中」は「消化管」、「湯」は「水溶性」をそれぞれ意味しており、「消化管を大々的に建て直す」という意味があるそうです。

日本では、腹痛やお腹の張りを和らげる目的で、処方されています。


これまでの研究でも、 大建中湯が大腸炎の治療に有用であることを示唆する結果が出ていましたが、特に分子レベルでのエビデンスは不足していました。

そこで、千葉大学のZhengzheng Shi氏と、理研・IMSの専任研究員、佐藤尚子氏率いる研究チームは、大腸炎のマウスモデルに対するその効果を詳細に調べました。

 

マウスに潰瘍性大腸炎を誘発する、デキストラン硫酸ナトリウムを用いて実験が行われました。

大建中湯を投与したマウスは、体重は正常のままで、大腸炎の臨床スコアは低くなりました。追加の分析によれば、結腸の内側を覆う細胞への損傷がはるかに少ないことが明らかになっています。

このように、大建中湯が潰瘍性大腸炎の治療に実際に役立つことが示されたため、研究者らはマウスの腸内の微生物叢※(マイクロバイオーム)と抗炎症性免疫細胞の発現レベルの解析を進めました。

微生物叢(びせいぶつそう):ヒトを含む生物や、環境中に存在する微生物の集合体のこと。消化管、皮膚、口腔、鼻腔などに、約1000種、数十〜数百兆個の微生物が生息している。重さでは1〜2kgにも及ぶ。常在菌とも呼ばれる。

消化管の微生物叢には、消化や免疫系を助ける多数の細菌や真菌が含まれています。

腸内の微生物叢に関しては、昨今「腸内フローラ」として広く認知される様になっています。

大腸炎はこれらの腸内微生物叢の不均衡と関連しており、大腸炎に罹ったマウスでは乳酸菌が枯渇していることが解析で示されています。また、それらの代謝産物の1つであるプロピオン酸(※)と呼ばれる短鎖脂肪酸も枯渇しました。

(※)プロピオン酸:ヒトの大腸内で腸内細菌によって生成される有機酸の一種である短鎖脂肪酸のうちのひとつ。他に酢酸、酪酸などがある。短鎖脂肪酸は、腸内を適切な酸性状態に保ち、悪玉菌を抑制する働きを持つ。

大建中湯を与えられたマウスは、失われた細菌の多く、特に乳酸菌属の細菌が回復し、プロピオン酸の濃度は正常に戻りました。

 

根治療法が存在しない、原因不明の疾患の一つである大腸炎。日本でも患者数が年々増加していることから、私たち日本人にとって身近な漢方薬が効果を発揮するという研究報告は喜ばしい限りです。

さらなる研究に期待したいところです。

 

(文=久保多渓心)

 

News Source

A Japanese Herbal Formula, Daikenchuto, Alleviates Experimental Colitis by Reshaping Microbial Profiles and Enhancing Group 3 Innate Lymphoid Cells『Frontiers in Immunology』

How a Japanese Herbal Medicine Protects the Gut Against Inflammatory Bowel Disease『Neuroscience News.com』

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