【夢の神秘】REM睡眠時の眼球の動きは、夢の中の視線の向きと一致していた!

2022.8.27

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AGLA編集部

心と体を調える 女性のための新感覚スピリチュアルメディア。

今回は「REM睡眠」に関する最新の研究をご紹介します。

ご好評を頂いたAGLAの「明晰夢シリーズ」でも、REM睡眠というキーワードが出てきたのを覚えていらっしゃる方も多いと思います。

 

改めて、REM睡眠とは何かについて、ご説明しましょう。

 

REM睡眠とは?

REM睡眠は、「急速眼球運動 rapid eye movementREM)」を伴う睡眠のことで、英語の頭文字を取ってREM睡眠と呼びます。

読んで字のごとく、睡眠中に眼球が急速運動をする現象のことです。夢を見るのは、このREM睡眠時であるとされるため、「夢睡眠」とも呼ばれます。

シカゴ大学の名誉教授も務めた生理学者であり睡眠研究の第一人者であるナサニエル・クライトマンの下で研究する大学院生であった、ユージン・アセリンスキーが幼児の睡眠パターンの研究を行なっている際に、発見したのが始まりです(「REM睡眠」という言葉は、同じ研究室にいたウィリアム・C・デメントにより偶然に創られました)。

身体は骨格筋が弛緩して休息状態であるにも関わらず、脳は活発に活動をしていて覚醒状態を示しているのがREM睡眠の大きな特徴です。

REM睡眠の状態になると、脊髄の最上部にある主要な運動ニューロンが抑制されます。つまり、脊髄から筋肉を動かす電気信号(情報伝達)が遮断されるため、運動機能が抑制されているのです。

これを「筋弛緩」の状態といいます。

この抑制機能が働いているので、夢を見ているままに実際に体を動かしてしまうことを防いでいるというわけです。


この運動機能の抑制について、精神科医のチャールズ・マックフィーの著書に興味深い話が掲載されていますので、その一部をご紹介しましょう。

1963年にフランスの睡眠研究家ミシェル・ジュベーがネコを使って行なった有名な実験がある。錐体路(脳内の運動ニューロンの反射を抑制する領域)を除去されたネコが、夢睡眠に入ったところで、起き上がり、動き始めたのである。

そのネコは、じゃれたり、飛びかかったり、伸びをしたり、物をよけたりと、ほとんどふだん通りの動きを示した。抑制機能を除去されていたため、夢睡眠中にも脳からの運動指令を受け取って、そのままに行動していたのである。この実験中、ネコは単独で、夢の中の相手が誰なのかは、当のネコにしかわからないことだった。

『みたい夢をみる方法・明晰夢の技術』チャールズ・マックフィー(著)石橋達也(訳)講談社
ここで分かるのは、REM睡眠時の運動機能の抑制は、夢を見ている本人を危険から回避させるためであり、不測の事態によって睡眠から覚醒してしまうことを防ぐためだということです。
もし、野生動物が睡眠中に動きまわってしまえば、天敵に襲われる危険性が増します。動き回ることで、休息しているはずの肉体を酷使してしまい、眠りから覚めてしまうことにもなるでしょう。
この運動機能の抑制が働きづらくなる「REM睡眠行動障害」という病気もあり、主に高齢者に多く、レビー小体型認知症などの初期症状となるケースもあるようです。
REM睡眠とは反対に、急速眼球運動を伴わない「ノンレム睡眠 (Non-rapid eye movement sleep,Non-REM sleep)」があり、脳波では4段階のレベルに分けられます。
この、ノンレム睡眠とREM睡眠は90分周期で繰り返されます。
詳細は以下のリンクからご参照下さい。


夢の中での視線の向きと、眼球の動きが正確に一致した!

「カリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California, San Francisco:UCSF)」の研究者たちによる新しい調査で、REM睡眠で眼球が急速運動の状態にあるとき、実際に夢の世界にあるものを目で追っていることが明らかになりました。

1950年代の、ユージン・アセリンスキーやナサニエル・クライトマンによる「REM睡眠」の発見以来、急速眼球運動の目的は謎に包まれたままで、多くの議論を巻き起こしました。

20世紀後半には、一部の専門家が、このレム睡眠時の眼球の動きは夢の世界のシーンを追いかけているのではないかという仮説を立てました。

しかし、それを検証する方法はほとんどなく、可能な実験 (夢を見ている人の視線の方向を記録し、目を覚まして夢のどこを見ているのかを尋ねる実験) では、矛盾した結果が得られるだけだったのです。

多くの研究者はREM睡眠時の眼球の動きをランダムなものとみなし、目蓋(まぶた)の潤滑を保つためのものに過ぎないと考えています。

Scanziani氏は、UCSFの博士研究員であるYuta Senzai博士とともに、より高度な技術を用いて、REM睡眠の状態にあるマウスの脳内の 頭方位細胞head direction cell) を調べることに成功しました。

マウスの脳には事前に、シリコンプローブ(電極)などの実験器具が埋め込まれ、電気生理学的記録と視線追跡カメラ用のケーブルに接続し、観察が進められました。

頭方位細胞(head direction cell)はコンパスのような働きをしており、マウスの頭の向きに反応して発火する細胞です。この細胞を調べることで、マウスがどちらの方向を向いているかを観測することが可能となります。

研究チームは、マウスの目の動きを観察しながら、この頭方位細胞からマウスの内部コンパスの方向に関するデータを同時に記録しました。

この2つのデータ(目の動きと、内部コンパス)を比較したところ、REM睡眠中の目の動きとマウスの内部コンパスの方向は、マウスが起きて動き回っているときと同じように正確に一致していました。

つまり、マウスが夢の中で視線を向ける方向と、実際の眼球の動きが正確に一致していたのです。

 

生成脳(ジェネレーティブ・ブレイン)

Scanziani氏の研究チームは、オブジェクトやシナリオを構成する能力を意味する「生成脳ジェネレーティブ・ブレイン)」に関心を持っています。

生成脳とは、現実世界の経験を、現時点では存在しない、他のものと組み合わせる能力のことで、私たちの創造性の基礎となるものです。

例えば、空を飛ぶ夢、壁をすり抜ける夢、水中で呼吸する夢、どれも現実には不可能なことであるのに、夢の中では外部からの刺激(感覚入力)がないために、それがあたかも現実に起こっていることだと信じています。

空という現実に存在する "オブジェクト"、そして、その空を飛ぶことが出来たら、と考える "シナリオ"、その双方が組み合わさることで、「空を飛ぶ夢」が構成されます。

Scanziani氏のチームは、夢を見ているときと覚醒しているときに脳の同じ部分が協調していることを発見し、夢は 1 日を通して収集された情報を統合する方法であるという考えに信憑性を与えました。

「協調」していることが発見されても、覚醒時とREM睡眠時の協調する脳領域が、どのように連携して「生成能力」を生じさせているかは、未だ謎のままです。

夢の解明は、人間という存在、世界という存在の意味に直結する大きなロマンだといえるでしょう。

今後の研究に大いに期待したいところです。

 

(文=久保多渓心)

 

News Source

A cognitive process occurring during sleep is revealed by rapid eye movements『Science』

Eye movements in REM sleep mimic gazes in the dream world『Medical Xpress』

参考文献

『みたい夢をみる方法・明晰夢の技術』チャールズ・マックフィー(著)石橋達也(訳)講談社

明晰夢で人生を豊かにする』久保多渓心

AGLA編集部 のプロフィール

心と体を調える 女性のための新感覚スピリチュアルメディア編集部。

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