【米研究】自殺志願者と、そうでない人の唾液中の細菌の組成が異なっていた!

2022.9.2

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AGLA編集部

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「フロリダ大学(University of Florida:UF)」による新しい研究によると、最近、自殺を考えたことがあると報告した大学生の唾液中の細菌は、自殺を考えたことがない大学生の唾液中の細菌と、組成が有意に異なっていたことを発見しました。

 

自殺念慮をもつ学生の唾液中の細菌から発見が!

メンタルヘルスとヒトの微生物叢の関連についての研究は増加していますが、これは、自殺念慮が最近あった人と、なかった人の唾液中の細菌の違いを調べた初めての研究です。

研究に参加した学生の自殺念慮については、唾液試料を採取する前の2週間以内を対象としました。

食事や睡眠など、メンタルヘルスに影響を与えることが知られている他の要因の影響を調整すると、自殺願望のある学生は、歯周病やその他の炎症性の健康状態に関連する細菌のレベルが高いことが分かりました。

また、脳の健康を促進する化合物を生産することで知られている細菌「Alloprevotella rava(※)」のレベルが低いことを発見しました。

これらの学生は、口腔内のAlloprevotella ravaの存在に影響を与える可能性のある遺伝的変異も共有していました。

(※)Alloprevotella rava:ヒトの歯垢から分離された偏性嫌気性グラム陰性桿菌(棒状・円筒状の細菌)。2013年に提案、登録された親属・新菌種。

 

500人の大学生の唾液を分析

これらの結果は、どの細菌をより詳しく調べる必要があるかを教えてくれ、興味深いものです。私たちの疑問は、メンタルヘルスに影響を与える細菌が生物学的に何をしているのか?ということです。

最終的には、この一連の研究が、人のマイクロバイオーム(※1)に基づいた自死念慮の予測に役立ち、リスクのある人のためのプロバイオティクス(※2)またはプレバイオティクス(※3)治療に役立つことを願っています。

Differences in Saliva Bacteria of Students With Recent Suicidal Thoughts『Neuro science News.com』

(※1)マイクロバイオーム(微生物叢):ヒトを含む生物や、環境中に存在する微生物の集合体のこと。消化管、皮膚、口腔、鼻腔などに、約1000種、数十〜数百兆個の微生物が生息している。重さでは1〜2kgにも及ぶ。常在菌とも呼ばれる。

(※2)プロバイオティクス:抗生物質(アンチバイオティクス)に対比する言葉で、共生を意味する「プロバイオシス(probiosis)」を語源とする。イギリスの微生物学者ロイ・フラー(Roy Fuller)により、「腸内フローラのバランスを改善することによって宿主の健康に良い影響を与える生きた微生物」と定義される。

(※3)プレバイオティクス:1995年、イギリスの微生物学者であるGibson、Roberfroidらによって提唱された。「消化管上部で加水分解、吸収されない」「大腸に共生する一種または限定された数の有益な細菌(ビフィズス菌等)の選択的な基質であり、それらの細菌の増殖を促進し、または代謝を活性化する」「大腸の腸内細菌叢(フローラ)を健康的な構成に都合の良いように改変できる」「宿主の健康に有益な全身的な効果を誘導する」などの効果を示す食品成分を指す。(「公益財団法人・腸内細菌学会」HPより)

と、本研究の筆頭著者であり、フロリダ大学・食品農学研究所(The University of Florida's Institute of Food and Agricultural Sciences:UF/IFAS)微生物学・細胞科学部の博士研究員であるAngelica Ahrens氏は話します。

この研究では、UFの微生物学・細胞科学部の授業を受けている約500人の学部生から採取した唾液を分析しました。

これらの学生は、うつ病の症状をスクリーニングするために使用される健康アンケートに記入し、回答者には過去2週間以内に自殺を考えたことがあるかどうかを共有するよう求めています(自死念慮を報告した学生は、学内のメンタルヘルス・サービスを紹介されました)。

大学キャンパスでは精神衛生と自殺が深刻な問題となっており、学生たちはこの問題に取り組むための研究に参加することに非常に興味を持っていました。

私たちは追跡調査のためのデータを集め続けており、より多くの学生や大学が参加することを期待しています。

Differences in Saliva Bacteria of Students With Recent Suicidal Thoughts『Neuro science News.com』

微生物・細胞科学部門の責任者であり、本研究の上席著者であるEric Triplett氏は述べます。

 

 

G7(先進7カ国)中、若い世代の死因トップが「自殺」の日本

うつ病や自死念慮は大学生などの若年層に比較的多くみられ、「米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)」2020年に行った調査では、18歳から24歳までの人の4分の1が自殺を真剣に考えたことがあると答えています。

日本ではどうでしょうか?

令和3年度の日本における死因の上位は1位「悪性新生物(腫瘍)」(癌のこと)、2位「心疾患(高血圧を除く)」、3位「老衰」、4位「脳血管疾患」、5位「肺炎」となっています。

しかし、性・年齢別の統計「5歳階級(※)」では、10〜39歳までの死因の1位は「自殺」となっています(男性では10〜44歳の死因の1位が「自殺」、女性では10〜34歳の死因の1位が「自殺」)。

(※)5歳階級:年齢を「0〜4歳」「5〜9歳」などのように、5歳毎に区切った統計手法のこと。
10代の自殺の主な原因では「学校問題」がトップで、次いで「健康問題」「家庭問題」と続きます。20代ではトップが「健康問題」で、「勤務問題」「経済・生活問題」がこれに続きます。
世界を見てみると、若い世代の死因が「自殺」なのは、先進7カ国(G7)中、日本のみで、フランス、ドイツ、カナダ、アメリカ、イギリスでの死因トップは「不慮の事故」、2位が「自殺」となっています。イタリアは、「不慮の事故」「癌」に次いで、3位が「自殺」です。

令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況「死亡数・死亡率(人口10万対),性・年齢(5歳階級)・死因順位別 」

若年層の自殺をめぐる状況「厚生労働省」

このように、若い世代の自殺をどう食い止めるかということは、日本をはじめ世界中で喫緊の問題なのです。

 

 

この最初の研究では、学生たちが研究室に来て唾液のサンプルを提供しましたが、現在は、研究者たちが開発した収集キットを使って、唾液のサンプルを郵送することもできるようになりました。

この自宅での方法は、学生にとって非常に便利であり、より多様なデータセットを構築し、様々な変数をテストするのにも役立ちます。例えば、うつ病と診断されて抗うつ薬を服用している人の唾液の微生物叢を調べたいと考えています。

様々な治療法やライフスタイルの変更が役立つ可能性はあるが、マイクロバイオームがメンタルヘルスにどのような影響を与え、それを改善するために利用できるかについては、まだ多くのことがわかっていません。

Differences in Saliva Bacteria of Students With Recent Suicidal Thoughts『Neuro science News.com』

と、Ahrens氏

 

研究の進展に注目したいと思います。

 

【米研究】"もう一つのゲートキーパー"の登場?血液で自殺リスクの予測が可能に!?

 

 

(文=久保多渓心)

 

News Source

Saliva microbiome, dietary, and genetic markers are associated with suicidal ideation in university students『Scientific Reports』

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