2022.10.12
【クイーンズ大学研究】COVID-19、癌だけではない!犬は人のストレスを嗅ぎ分ける!

犬が新型コロナウイルス感染の有無を、9割以上正確に嗅ぎ分けることが出来るという報道は記憶に新しいところです。既に、世界各国で研究や実証実験が行われ、ほぼ正確に感染者が特定されています。
また、呼気から肺がんを嗅ぎ分ける「がん探知犬」も話題を呼びました。
アイルランドのクィーンズ大学ベルファスト(The Queen's University Belfast:QUB)の研究チームによる最新の研究では、犬は匂いで人のストレスレベルを感知出来ることが明らかになりました。
ストレスフルな暗算テスト
犬が人の様々な病気を感知出来ることは従来から知られていましたが、人の心理状態に関連した匂いの感知までが可能であるかの研究は、これまでほとんど行われていませんでした。
実験は、被験者にセンサーを取り付けて心拍数と血圧を継続的に測定することから始まりました。参加者は、タスクに参加する前と後のストレスの感じ方も評価されます。
作業開始前に、参加者はガーゼで首の後ろを拭き、これを滅菌ガラス製のバイアル(注射剤を入れる容器のこと)に入れ、さらにバイアルの中に深く息を3回吐き出したあと、蓋を固定します。
次に、被験者にストレスを誘発するための暗算テストをさせました。
この暗算テストは、ペンや紙を使わずに声を出して回答するもので、研究者らは参加者が正解してもフィードバックを与えず(「正解です!」などの言葉をかけない)、不正解の場合は「違います」と中断し、正解を伝えます。
参加者が回答中は、研究者らは厳しい口調で「出来るだけ早く効率的にタスクを実行して下さい」「タスクが完了するまで続けて下さい」と指示を出します。
参加者にとって、とてもストレスフルな難解なテストは3分間続けられます。
テストの後、参加者はストレスの別の評価と、さらに2つの汗/息のサンプルを提供しました。
リラックスした(タスク前の) サンプルと、ストレスを受けた(タスク後の)サンプルを収集するまでの合計時間は4分であり、参加者がストレスの発生以外の変化を経験する可能性は低い状況です。
被験者がテストにストレスを感じていると報告し、課題中に心拍数と血圧の両方が上昇していた場合にのみ、サンプルを研究試料に含めました。
こうして集められた、36人分のサンプルを犬たちに見せます。
ストレスサンプルを正しく嗅ぎ分けた!
この研究の対象となった犬は飼い主が自発的に飼っているペットで、週に1回、研究室で様々なトレーニングを受けました。
対象となったのは月齢が11ヶ月から36ヶ月の4頭で、雄のコッカースパニエル、雌のコッカプー、混合種2頭(雄のラーチャー型と雌のテリア型が各1頭)で構成されています。
実験では、まず暗算テストの前後に採取した人のサンプルを犬に判別させました。
各テストセッションでどのような匂いを探すべきかを犬に教えるために、まず被験者のストレス汗/息のサンプルを、2つの 「対照サンプル」 (汗も息もついていないガラス瓶入りの無臭なガーゼ) と一緒に見せました。
犬は3つ(ストレス時、通常時、無臭)のサンプルすべてを嗅ぐことが許され、研究者にストレス時の汗や息のサンプルを知らせたことでご褒美を得ます。
その結果、犬は720回の試行のうち、94%でストレスサンプルを正しく選択していました。
暗算テスト参加者の心理的ストレスを、犬がヒトの息や汗の匂いの中に感じ取ることが出来たのです。
この研究は、採取されたストレスサンプルが心理的ストレス状態にあることを反映していると、犬が認識したかどうかを明確に判断するものではありませんが、人の心理的な変化や感情の動きを犬が汲み取っている可能性そのものを否定するものではありません。
このことから、日頃、視覚的な合図に主に反応するように訓練されている、介助犬の訓練(PTSDなど心の病をもつ患者に対して)にも役立つ可能性があると研究者は考えています。
(文=久保多渓心)
News Source
Dogs can discriminate between human baseline and psychological stress condition odours『PLOS ONE』
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