【米研究】環境中に存在する化学物質が、子宮筋腫を増殖させていた!?

2022.11.18

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AGLA編集部

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フタル酸エステル類とは?

電線の被覆剤として用いられる

フタル酸エステル類」とは、アルコールと無水フタル酸から合成された化合物の総称であり、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride:PVC)などのプラスチックを柔らかくするための可塑剤として使用されているものです。

用途としては、床材、壁材といった建材に最も多く使われているほか、電線の被覆剤、食品包装パッケージ、一般フィルムシート、家具などに使われる合皮、衣料・履物類、玩具、塗料、接着剤など、多岐に渡ります。

毒性が強いことで知られ、各国で規制されています。日本でも、直接 "口に含む" 可能性のある幼児の使用する玩具では、全面的に使用が禁止されているほか、他の製品(住宅建材や内装材は除く)でも基準値が設けられています。

有害性の内容としては、生殖毒性や発がん性が挙げられています。

「アメリカ疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)」の調査によると、大部分の米国人の尿からフタル酸エステル類の代謝物が検出されているそうです。

規制されていない、床材やフローリングなどの上にある、埃などから体内へ取り込む危険性が問題になっています。

 

環境中のフタル酸エステル類が子宮筋腫の原因に?

米国・イリノイ州シカゴにあるノースウェスタン大学ファインバーグ医科大学と提携する非営利の医療施設「Northwestern Medicine」の研究者たちが、環境中のフタル酸エステル類 と、女性に最も多い腫瘍である子宮筋腫の増殖増加との因果関係を初めて明らかにしました。

これらの有毒汚染物質は、食品包装、ヘアメイク用品などあらゆる場所に存在しており、その使用は禁止されていません。

これらは単なる環境汚染物質ではなく、ヒトの組織に特定の害を及ぼす可能性があるものです。

Uterine fibroid growth activated by chemicals found in everyday products『Medical Xpress』

と、研究著者であり、ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部産婦人科の学科長でノースウェスタン大学の医師でもあるDr.Serdar Bulunは話します。

全女性の最大80%が生涯に子宮筋腫を発症する可能性があり、これらの女性の1/4は、技術的に困難な手術を必要とする、過剰で制御不能な子宮出血、貧血、流産、不妊症、大きな腹部腫瘍を伴う症候性となります。

DEHP(フタル酸ジ-2-エチルヘキシル)は、製品の耐久性を高める汎用可塑剤としてシャワーカーテン、壁紙、内装材、靴などに使用されますが、こうした特定のフタル酸エステル類や、その代謝物への暴露が多い女性は、症候性筋腫を発症するリスクが高いことが、この研究で新たに判明しました。

DEHPは、点滴、透析、流動食、気管のチューブ、カテーテルとして、また血液バッグなど、医療機器の可塑剤として多く利用されていたため、患者の多くはDEHPに暴露されていた。

以前の疫学研究では、フタル酸曝露と子宮筋腫の増殖との関連性が一貫して示されていましたが、この研究では、その関連性の背後にある機序を説明しています。

DEHPに晒されると、環境毒素を認識する「香族炭化水素受容体(aryl hydrocarbon receptor:AHR)」を活性化してDNAに結合し、子宮筋腫の増殖を促進するホルモン経路が活性化される可能性があることを発見しました。

興味深いことに、AHRはオレンジ剤の重要な毒素であるダイオキシンの受容体として90年初頭にクローン化されました。

ベトナム戦争中のオレンジ剤の使用は、曝露された集団に重大な生殖異常を引き起こしています。ダイオキシンとAHRがこの原因であると考えられています。

Uterine fibroid growth activated by chemicals found in everyday products『Medical Xpress』

とDr.Bulunは話します。

フタル酸エステル類の体内への取り込みを防ぐためには、ポリ塩化ビニルやプラスチック製品の使用を極力控えるか、フタル酸エステル類が付着していると思われる床材の上の埃などを、掃除機や水拭きで綺麗に取り除くことが必要です。

 

(文=久保多渓心)

 

News Source

Mono-(2-ethyl-5-hydroxyhexyl) phthalate promotes uterine leiomyoma cell survival through tryptophan-kynurenine-AHR pathway activation『PNAS』

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