【タイ研究】仏教の「五戒」を守る人は、うつ病になりにくい

2022.12.5

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AGLA編集部

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仏教の「五戒」とは?

仏教には信徒が守らねばならない行動規範である5つの戒「五戒(ごかい)」があります。

 

仏教の五戒

不殺生戒(ふせっしょうかい):生き物をみだりに殺してはならない

不偸盗戒(ふちゅうとうかい):他人のものを盗んではならない

不邪婬戒(ふじゃいんかい):不貞行為を行ってはならない

不妄語戒(ふもうごかい):嘘をついてはならない

不飲酒戒(ふおんじゅかい):酒を飲んではならない

上記の「不殺生戒」は、主に菜食主義を指しています。肉を食べないのは勿論ですが、野菜や果物も私たちと同様、生命を持っています。その生命を「いただいて」生きているのですから、それを無駄にせず、貪らず、腹八分で有り難く食する気持ちも含まれている「戒め」です。

「不偸盗戒」は、文字通りの盗みや詐欺的行為のほか、ギャンブルもその範疇にあります。

 

チェンマイ大学による横断的研究

タイのチェンマイ大学(Chiang Mai University)精神医学部教授のNahathai Wongpakaran博士らの研究によると、神経症傾向やストレスのレベルが高い人は抑うつ症状のリスクが高い可能性がありますが、仏教における「五戒」を守る人にとっては、これらの関連性が緩衝される可能性があることが分かりました。

この研究では、横断的研究longitudinal study)デザインが採用され、タイで2019年末から2022年9月までデータの収集がなされました。

横断的研究とは、例えば今回の例では「五戒」を守った集団と、「五戒」に従っていない普通の生活を送っている集団の健康状態をデータとして採集して評価する研究手法です。

この反対に、縦断的研究longitudinal study)という手法がありますが、こちらは共通の特徴を有する集団に対して、継続的な追跡調査を行うもので、これまでAGLAでご紹介して来た研究の手法はこちらの方が多い印象です。

この研究では、2019年後半から2022年9月にかけて、644人の成人がオンライン調査に参加しました。全体の74.2%が女性で、平均年齢は28.28歳でした。

参加者は、「神経症傾向(※)尺度 (Neuroticism InventoryNI)」 、「10項目の認知ストレス尺度 (Perceived Stress Scale:PSS)」、「うつ病スケール」、「内的強さに基づく五つの概念サブスケール(Subscale of the Inner Strength-based Inventory:SBI-PP) 」に関するアンケートに回答しています。

(*)神経症傾向:神経症傾向のスコアが高い人は、平均的な人よりも不機嫌で、不安、心配、恐怖、怒り、不満、嫉妬、罪悪感、抑うつ気分、孤独などの感情を経験しやすいとされている。 このような人々はストレス要因に対する処理が不得手で、小さな不満などからいたって普通の状況を絶望的に難しく見るように解釈する傾向があると考えられている。神経症傾向のスコアが高い人は、一般的な精神障害(気分障害、不安障害、物質依存が研究されている)や、伝統的に「神経症」と呼ばれる種類の症状を発症する危険性があると考えられている

wikipediaより

(※)日本語版 Perceived Stress Scale

 

「五戒」に従うと、うつ病になりにくい

これまでの研究では、五戒を守ることは、一般の人々(五戒を守っていない仏教徒を含め)の幸福と生活の質を高めることができると示唆されています。

しかし、五戒がリスクの高い人々のうつ病の症状を緩和できるかどうかは、あまり明らかになっていませんでした。

この問題に取り組むため、Wongpakaran博士らは神経症傾向、ストレス、うつ病の間の既知の関連性に注目しました。

以前の研究では、神経症傾向が強いほど、直接的にも間接的にも、ストレスの多いライフイベントの後に(人々がどのように考え、感じているかによって)うつ病のリスクが高まることが示されています。

今回の調査結果を統計的に分析したところ、五戒を厳密に守ることは、ストレスを感じることによる、うつ病への影響を和らげる効果があると考えられました。

これらの結果から、神経症傾向やストレスのレベルが高い人は、五戒に厳密に従うと、抑うつ症状を発症しにくい可能性があることが示唆されています。

参加者の大部分は女性であり、93.3%が仏教徒であるとアンケートに回答していますが、信仰の程度や関与については不明です。

また、この調査結果が、タイ以外の国や、仏教徒以外にも当てはまるのかは、今後の研究が待たれるところです。

信仰が深いほど、五戒を守ることに幸せを感じているはずです。しかし、信仰心が浅ければ、五戒を守ること自体に多大なストレスがつきまとうのかもしれません。

しかし、ここで示された結果は、五戒に挙げられている事柄は、人間にとってより自然で豊かな生き方であること。五戒に背く生き方の方が楽なように見えて、実際はストレスフルなのではないかということです。

人間本来の生き方に従いさえすれば、心病むことはないという至極当然な結果なのかもしれません。

 

News Source

Moderating role of observing the five precepts of Buddhism on neuroticism, perceived stress, and depressive symptoms『Neuro Science News.com』

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