【米研究】患部に触れると痛みが緩和する「手当て」効果は、マウスの脳でも起こる!

2022.12.9

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AGLA編集部

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頭痛がするときに、こめかみに手をやったり、お腹が痛いときに、お腹をさすったり、転んで膝をすりむいたときに、とっさに膝を押さえるといった行動は人間にとって、とても自然なことであり、それによって一時的に痛みが緩和するのを感じたという方は多いと思います。

患部に "手を当てる" という、この原始的な治療方法は、世界各国で行われており、「手当て療法」「ハンド・ヒーリング」「ヒーリング・タッチ」「タッチケア」などと呼ばれ、ときにセラピーや癒しの一環として、ときに宗教行為として、また、緩和ケアの一種として行われることもあります。

「手当て」は文字通り、患部に手を接触させますが、これとは別に直接、患部には触れず、少し離れたところから患部に手をかざす、いわゆる「手かざし」が行われるケースもあります。

病気や怪我の応急処置や、労働者に支払われる報酬・賃金の意味として使われる「手当」という言葉の語源が、患部に手を当てる「手当て」に由来しているという説があります。

しかし、この説は間違いで、「手当」が指している「手」とは、身体の一部としての「手」ではなく、「手が足りない」という場合の、「人手」を意味しており、「手当」の「当」は、「人手を振り分ける」「人手を当てる」、つまり「必要な人員を前もって、充当しておく」という「準備」の意味なのです。

「マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology:MIT)」の「マクガヴァン脳研究所(McGovern Institute for Brain Research)」による研究は非常に興味深いものです。

患部を押さえることで痛みが緩和する、この「手当て」の現象が、マウスでも起こるのかを観察しました。

 

「手当て」効果はマウスでも?

「アメリカ科学振興協会(American Association for the Advancement of Science:AAAS)」が発行する科学ジャーナル『Science Advances』11月6日号に掲載された研究チームの報告によると、患部に手を当てることで痛みが緩和する、この現象がマウスの脳でも起こることが初めて観察されました

脳内の痛みに反応するニューロンが(手当てによる)触覚入力を受けると、静まるためであると研究者は考えています。

触覚を介した痛みの緩和は脊髄から始まる可能性があり、以前の研究で、触覚に反応して信号が減衰する痛みに反応するニューロンが発見されています。しかし、脳も関与していることが示唆されています。

マクガヴァン研究所のFan Wang氏によると、痛みを伴う刺激に対する脳の反応は、特に動物が動いたときなど、他のあらゆる神経活動の中でも観察するのが難しいため、ほとんど研究されて来なかったといいます。

そのため、研究チームは、マウスが頬への痛みを伴う刺激に対して、前足で顔を拭くという反応をすることを知っていましたが、マウスの脳が感じている特定の痛みの反応を追跡して、マウスの顔を拭く動作が、痛みを鎮めるのに役立つかどうかを確認することはできませんでした。

動物が顔を拭いているときの脳を見ると、動きや触覚の信号は痛みの信号を完全に圧倒しています

How Touch Dampens the Brain’s Response to Painful Stimuli『Neuro Science News.com』

と、Wang研究員は説明します。

研究チームは、マウスが顔を拭くことの効果を研究する代わりに、ひげの動きによって生じる穏やかな振動を観察するという、より繊細な触覚に注目しました。

マウスのヒゲは、高性能な触覚センサーの役割を持っています。長いヒゲで周囲のものに触れることで、暗闇の中でも自在に動き回り、ヒゲを前後に動かすことで自分がいる環境を感知することが出来ます。

この動きは、顔の触覚受容体を活性化し、振動触覚信号の形で脳に情報を送信します。

熱い鍋に触れてしまったとき、その熱さを感じて思わず手を振ってしまいます、人間の脳は、このとき同じ種類のタッチ信号を受け取ります。

これは、「手当て」同様、痛みの緩和のための、もう1つの方法です。

 

マウスはヒゲの動きで痛みを和らげていた?

研究チームは、このヒゲの動きによって、普通であれば顔を拭いてしまうような、不快な熱さや顔を触れられたときのマウスの反応が変化することを発見しました。

マウスが振動触覚(触れることで振動を感知する)によってヒゲを動かしているときに、不快な刺激を与えると、マウスはあまり反応しなくなるのです。

How Touch Dampens the Brain’s Response to Painful Stimuli『Neuro Science News.com』
と、Wang研究員。
時々、このような痛みを伴う刺激をまったく無視する動物もいるそうです。
研究チームは、触覚と痛覚の信号を処理する脳の体性感覚野(*)で、この効果の根幹をなすと思われるシグナル伝達の変化を見いだしました。
(*)体性感覚野 / somatic sensation:頭頂葉の中心後回と頭頂弁蓋部に位置し、「触覚」「痛覚」のほか、「温度感覚」「皮膚感覚」「深部感覚(筋、腱、関節などに起こる)」からなる。
不快な熱さや、顔を触れられたときに優先的に反応する細胞は、マウスのヒゲが動いているときにはあまり活性化されません。

痛みを伴う刺激に対する反応を示しにくくなっているのです。

How Touch Dampens the Brain’s Response to Painful Stimuli『Neuro Science News.com』
と、Wang研究員は話します。

研究チームは、痛みの刺激に反応して顔を拭いた場合でも、脳内のニューロンがその顔を拭くという動作に関連した発火パターンを採用するのに時間がかかることを発見しました。
痛みの刺激があると、通常、すぐに拭う動作に移行します。しかし、すでにヒゲが動いている場合は、もっと時間がかかります。
Wang研究員は、マウスが顔をこすり始める前の、比較的静止している数秒間でさえ、どの脳信号が熱の感知や顔を拭き取る動作に関係し、どれがヒゲの動きに関与しているかを選別するのは困難であることを指摘します。
研究チームは、これら難題を分析するための計算ツールを開発する予定で、他の神経科学者がこの新しいアルゴリズムを使って、データを解析することを期待しています。

ヒゲの動きが痛みのシグナル伝達に及ぼす影響は、視床後腹側核(ventral posterior thalamus)と呼ばれる脳領域から、体性感覚皮質に触覚情報を送る専用の触覚処理回路に依存しているようです。

この回路を遮断したところ、痛みを伴う刺激に対する反応を弱めることが出来なくなりました。

研究チームは、この回路が脳の他の部位とどのように連携して、痛みを伴う刺激の認識や反応を調節しているのかを知りたいと考えています。

「視床痛」は、脳の視床を侵す脳卒中の後に発症する慢性疼痛疾患です。

このような脳卒中は、通常は純粋な触覚信号を中継し、大脳皮質への疼痛信号を減衰させる視床回路の機能を低下させる可能性があります。

How Touch Dampens the Brain’s Response to Painful Stimuli『Neuro Science News.com』

と、Wang研究員は話します。

 

News Source

Somatosensory cortical signature of facial nociception and vibrotactile touch–induced analgesia『Science Advances』

How Touch Dampens the Brain’s Response to Painful Stimuli『Neuro Science News.com』

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