2023.1.5
【スウェーデン研究】〜排水処理施設がホットスポットに!〜 水道水に潜む抗生物質耐性菌が、人の健康に脅威をもたらす!

抗生物質は、細菌の増殖を抑制したり、機能を阻害する医薬品です。細菌による感染症などに抗生物質を処方された経験のある方も多いことでしょう。
最近では抗生物質の過剰な摂取が、腸内細菌を減少させ、健康状態に多大な影響を与えることが問題視されているほか、抗生物質そのものが効かない抗生物質耐性菌の存在も問題になっています。
医学ジャーナル『The Lancet Planetary Health』に掲載された、スウェーデン・ストックホルムにある「カロリンスカ研究所(Karolinska Institutet)」による分析によれば、中国とインド周辺地域の排水および、排水処理プラントに残留する抗生物質は、抗生物質耐性のリスクがあり、飲料水はヒトの健康に脅威を与える可能性があることが分かりました。
耐性菌の脅威
私たちが感染症などの治療目的で服用する抗生物質によって、多くの細菌は死滅しますが、抗生物質に耐性をもった細菌は生き残り、増殖します。
抗生物質耐性菌は、抗生物質に頼りきり、不適切に繰り返し摂取して来たことで生まれた存在です。耐性菌に打ち勝つため、より強力な抗生物質を用いる手段もありますが、それによって、より腸内環境を悪化させることになり、また、そこをすり抜ける細菌もあります。
このように、抗生物質に耐性をもった細菌は、動物や人間に治療不能な感染を引き起こす可能性がある世界的な脅威なのです。
抗生物質は、生産、消費、廃棄物など、生活環境に流入してしまう可能性があります。排水や水道水(飲料水)などの環境中に残存する抗生物質残留物は、耐性の出現と拡大に大きな影響を与えます。
排水や排水処理施設がホットスポットに!
研究者らは、「WHO(世界保健機構)」の定義する地域区分である、西太平洋地域(WPR)と、東南アジア地域(SEAR)の抗生物質残留物のレベルを調査しました。両地域は、抗生物質の世界最大の生産国である中国とインドを含んでいます。
西太平洋地域では92種類、東南アジア地域では45種類の抗生物質が、様々な環境から検出されています。
廃水および廃水処理施設の流入水と流出水では、PNEC(無影響濃度予測値:耐性発生に対して安全であると考えられるレベル)を超える抗生物質濃度が観察されています。
耐性発生のリスクが最も高いと考えられたのは、「シプロフロキサシン」では中国の水道水(飲料水)でした。
排水および排水処理施設に残存する抗生物質残留物が、耐性菌発生のホットスポットとなり、飲料水へと流入することで、ヒトの健康に重大な脅威をもたらしています。
日本は世界でも有数の水道設備を誇っていますし、抗生物質の使用量も年々減少しています。しかし、これまでの調査では、様々な環境から耐性菌が検出されています。
WHOでも、「薬剤耐性に関するグローバル・アクション・プラン」が採択され、加盟国では5つの柱(「普及啓発・教育」「動向調査・監視」「感染予防・管理」「抗微生物剤の適正使用」「研究開発・創薬」「国際協力」)を元にした行動計画の策定が求められました。
これにより、日本も独自のアクションプランを決定しています。
まずは、薬剤耐性菌の存在を知ることから、始めましょう!
(文=久保多渓心)
News Source
AGLA編集部 のプロフィール
心と体を調える 女性のための新感覚スピリチュアルメディア編集部。