【うつ病】自分の心の病について、すべてを打ち明けることが良いとは限らない

2023.1.30

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AGLA編集部

心と体を調える 女性のための新感覚スピリチュアルメディア。

心の病をカミングアウトするということ

精神病にまつわる沈黙を破る必要性に疑問を持つ人はほとんどいないでしょう。

数え切れないほどのキャンペーンで、そのような沈黙は有害であり、どこであろうとそれを破るよう努力すべきだと叩き込まれてきました。

Britain Get Talking」もそのようなキャンペーンのひとつです。

数年前、『ブリテンズ・ゴット・タレント』で、司会のアントとデックが番組を1分間中断し、視聴者が互いの心の健康について話せるようにしたことがきっかけで、このキャンペーンは大きな反響を呼びました。1分間が終わると、アントはこう宣言しました。

「ほら、難しくなかったでしょう?」

間違いなく、このようなキャンペーンは、特に偏見やスティグマのために沈黙を守ってきた人たちが、自分の精神衛生上の問題について心を開くのを助けてきました。

しかし、このようなキャンペーンは、精神疾患における沈黙についての誤解を助長することにもなりかねません。このようなキャンペーンは、精神疾患の沈黙は常に悪いものであり、恐怖とスティグマに根差していて、それを打破する努力は良いものであると暗に示しているのです。

実際、精神疾患における沈黙にはさまざまな形があります。

ある種の沈黙は、うつ病のような気分障害の一部を形成しています。うつ病の体験談を書いた人たちは、しばしば、思考を形成する能力を失い、話すことができないように感じると述べています。

たとえば、作家のアンドリュー・ソロモンは、「多くを語ることができなかった」と回想しています。

また、「いつも親しんできた言葉が、突然、非常に手の込んだ難しい比喩に思え、その使用には、私の気力をはるかに超えるエネルギーが必要だった」とも書いています。

うつ病のこのような側面は、精神医療の世界ではよく知られています。

考えることと話すことが少なくなることは、実はうつ病の2つの異なる症状と考えられています。沈黙は信頼性の高い症状であるため、人の会話パターンに基づいてうつ病を診断する自動化ツールを開発できるかもしれないという研究結果もあるほどです。

このような「うつ病の沈黙」を経験している場合、キャンペーンや人に促されるままに発言しても、その人の善意とは関係なく、何の解決にもならないかもしれません。

結局のところ、問題は、他の人があなたの言うことを受け入れてくれないとか、反応が悪いとかいうことではありません。それは、あなたが何も言うことがないということなのです。

他の種類の沈黙は、力を与えてくれるかもしれません。精神疾患を持つ人の中には、周囲から歓迎されない質問をされたり、役に立たない意見を言われたりして、反抗的に沈黙している人もいます。彼らは賢明にも、難しい話はセラピストのためにとっておくという選択をするかもしれません。

そのような選択は、必ずしもスティグマに根差しているわけではありません。誰かが善意で、精神衛生に関するいくつかの事実を知っていることは、その人が精神疾患について話すのに適した人であることを意味しません。

精神疾患における沈黙は、気持ちの良いものでもあります。考えたり話したりすることに苦労する人がいる一方で、考えすぎたり話しすぎたりすることに苦労する人もいます。

例えば、双極性障害の人は、うつ病のエピソードと躁病のエピソードを経験し、しばしば思考が高ぶって話すことへの強制を伴います。このような人にとって、穏やかな沈黙の時間は苦労して勝ち得たものであり、時にはそのために悲劇的なほど高い代償を払うこともあるのです。

精神疾患における沈黙のこうした側面について、私たちが耳にすることはほとんどありません。

しかし、少なくともドナルド・ウィニコットがその代表的な論文『The Capacity to be Alone』を発表して以来、セラピストは心の健康を支える沈黙の役割を認識してきました。また、何らかの形で沈黙することは瞑想の重要な要素であり、瞑想はうつ病の再発を予防することが研究で示されています。

 

適切な状況

これまで述べてきた沈黙は、おそらく適切な状況下で破られるべきものでしょう。

うつ病の沈黙は、うつ病の病気の一部であるように思われるので、回復の一環として、患者がメンタルヘルスケアの専門家の助けを借りて破る必要があるのかもしれません。

同じように、たとえ沈黙が心地良く感じられるとしても、セラピーで平穏な沈黙を破ることが有益な場合もあります。

テレビで有名人が励ましてくれても、なぜか多くの人は家族や友人、同僚にそういう状況を見出すことができません。

事実、私たちを愛し、支えてくれる人たちとでさえ、メンタルヘルスの問題について話すのはとても難しいのです。それはスティグマのせいである場合もありますが、そうでない場合もあります。

もちろん、私たちは、適切な場で人々が自分の精神衛生上の問題について打ち明けやすくなるよう努力し続ける必要があります。

しかし、なぜ黙っているのか、話すことが彼らのためになるのか、ということを無視して、沈黙を破るように圧力をかけるようなレトリックは排除しなければなりません。

 

News Source

Mental health: it’s not always good to talk by Dan Degerman(ブリストル大学博士研究員)『THE CONVERSATION』

The Conversation

本記事は『THE CONVERSATION』(1月19日掲載 / 文=Dan Degerman)からの提供を頂き、翻訳を行ってお届けしています。
(翻訳=久保多渓心)

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