フェルデンクライスの起こりと、考え方『なりたい自分になるための、フェルデンクライス(第2回)』

2021.4.2

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吉田万里子 ( フェルデンクライス・プラクティショナー )

フェルデンクライス・プラクティショナー。女子プロレスラーとして 1988 年から 2017 年まで 29 年間活動。現在は、自身が故障から復活した経験から、「フェルデンクライス メソッド」を通じてより多くの人の心身向上を目標に施術者・指導者として活動している。

こんにちは、吉田万里子です!

連載 2回目となりました。

第1回は自己紹介を兼ねて、プロレスで怪我だらけだった体がスッカリ改善した経緯を。

現在、後遺症もなく快適に過ごしている日々は、本当に奇跡に近い!と思っています。このレッスン(フェルデンクライス)に出会っていなかったら、今ごろ歩くのにも杖が必要でした。足に痛みがあり外出したくない気持ちになっていたと思います。

首も回らない、体も重たい、何かをやるゾ!!という気にも到底なれなかったと思います。

ということは、この「AGLA」さんでの連載もなかったということかしら?

2回目となる『なりたい自分になるための、フェルデンクライス』は、フェルデンクライスというメソッドがどうやって生まれたのか、そもそもフェルデンクライスとは何なのか、そしてどういう効果が期待でき、私たちに何をもたらしてくれるのかという点について、ご紹介したいと思います。

 

創始者モーシェ・フェルデンクライスと、フェルデンクライス・メソッドの起こり

International Feldenkrais Federation, www.feldenkrais-method.org, CC BY-SA 3.0

創始者のモーシェ・フェルデンクライス(1904年~1984年)さんは、ウクライナ・ベラルーシ生まれ。イスラエル、パリと拠点を変え、有名なキュリー夫人の助手であり娘婿のフェレデリック・ジュリオ・キュリー博士の研究室に所属していた物理学者です。

柔道の創始者・嘉納治五郎先生から手解きを受けて外国人として初の黒帯取得者となり、ヨーロッパに柔道を広めた方でもあります。

フェルデンクライスさんがサッカーで痛めた膝が悪化、いよいよ手術をしなければならなくなりました。

治る確率は50%、一生歩けなくなる恐れもあると医師からの宣告を受けます。結果、手術を受けず自力で治すことを選択し、歩くことに成功されました。

その時に考え出されたのが、人間の機能を向上させるために「脳神経システムに働きかける」方法。

神経学、解剖学、心理学、生体力学、システム理論、柔道・・・とあらゆるものを自分の知識と融合させ、2年間の研究と実験を重ねた末に考え出されたのです。

そしてその後も、脳と体の深いつながりを探求し続け、「脳神経システムに働きかける」レッスンを開発します。それが、フェルデンクライスの起こりです。

手法というより「哲学」に近いなぁというところがたくさんありますが・・・。

 

フェルデンクライスの考え方

その哲学に近いと思わされるところの1つが、レッスンにお手本がないことです。

レッスンでは、私の動きを真似して動くのではなく、私の言葉がけで動いていただきます。

例えば「左手を上げて」とか「右膝を曲げて」など。皆さん、自分に意識を向け、注意を払いながら、自分がどうやって動いているかを観察、客観視する、自分と向き合う時間でもあるのです。

人それぞれ。身長、体重、腕の長さ、太さ、1日中デスクワークの人、1日中立ち仕事の人、(怪我などの)過去の経験、運動量・・・だれ1人として同じ人はいません。

皆さん感じ方はそれぞれ。違ってイイし、違って当たり前。

社会のルールというものがあるから、人にどう見られるか?もちろん凄く大事です。ただそれを気にし過ぎるあまり、自分を押し殺して、本当の気持ちが分からなくなっていませんか?

また、情報が溢れかえっていて何を信じていいのか迷っていませんか?

そのような緊張した毎日を過ごしているにも関わらず、自分が緊張していることにさえも気づかない。もうそれが当たり前、習慣になっているのです。

その結果、首や肩が痛いだけでなく、目の奥が痛くなり、背中が固まってきて、挙句の果てには、頭痛薬が離せないという方がどれだけ多いことか。

フェルデンクライスにおいて、「内部感覚・外部感覚」と呼んでいるうちのひとつである、「内部感覚」に耳を傾けてみましょう。一般的なフィットネスのように、インストラクターの動きを真似ようとすることもなく、ただガイドとなる声がけをリラックスして聞きながら、自分自身の内部感覚を頼りに、自分の心地良い、しっくりくる動作を探っていくのです。

自分に意識を向けて、自分に注意を払う。人と比べることもせず、自分に向き合うそんな時間でもあります。マインドフルネスは「今この瞬間」「今ここに在る」ことを深く意識できる精神状態へと導くものですが、フェルデンクライスは動作を伴った、心身に相互に影響を与えるマインドフルネス、いわば「Mind & Body Fullness」といえるかもしれません。

 

見本は赤ちゃん

そしてもう1つ大事なこと。

それは、見本は赤ちゃん!!ということ。

ハイハイから立ち上がる時、転んでもまた立ち上がる。また転んでもまた立ち上がる。一度転んだからといって、あ~もうダメだ・・・と落ち込んだり諦めたりしないですよね(笑)!!

赤ちゃんは、何度も転んだり立ち上がったりしながら、どうやったらうまく立ち上がれるか?バランスの感覚など様々な情報を脳に送っているのです。

そうやって、新しい動き方を身に付けていき、立ち上がれるようになっていくのです。

私たちには、習慣というものがあって、ある程度できるようになったら、もうそれ以上試そうとはせず、決まったやり方を繰り返すようになります。動き方、姿勢、話し方、考え方、心の持ちようまで。

レッスンでは、普段やらないような様々な動きを何度も試して、脳に「動きのバリエーション」を増やしていきます。

その結果、今まで出来なかった動きも出来るようになり、痛みの改善につながっていくのです。

 

フェルデンクライスはどんな効果があるの?

1回のコラムに怪我だらけだった経験、そしてその怪我が回復した経緯を書かせて頂きました。

首頸椎ヘルニア3ヵ所(1ヵ所は手術)肩脱臼、肘脱臼、眼窩底骨折、鼻骨骨折、肘、足首・・・と骨折多数、股関節痛、両膝靱帯損傷とまだまだ数えきれず・・・打撲や捻挫は怪我のうちには入らない(笑)!!

それが全て改善したのです。今では全く後遺症はありません。

本当に奇跡だ!と思うくらい、ボロボロだった体が改善したのです。

レッスンでは、まずはムダな力が入っていることに気付いて、それを止めることから始まります。

そうすることで、徐々に緊張が取れていき「あ、これがリラックスできている状態なんだ!」と感じられる。そして色々な気付きが生まれ、新しい(本来の!?)自分を発見できるのです。

緊張が取れることによって痛みも改善され、体の可動域が増え、動きやすくなっていきます。

しかもただ動きやすいだけではなく、動きの「」が上がって、滑らかにしなやかに動けるようになっていくのです。これは本当に心地良いです 

そういえば、レッスン後に体の動き(の質)が変わり滑らかになった方が、急に言葉遣いまでお淑やかに変わった、といったこともありました!

これも第1回のコラムに書かせて頂きましたが、体の動き(の質)が変わると気持ちが変わります。気持ちが変わると物の見方が変わります。

「今まで気になってイライラしていたことが、気にならなくなった」とか「すぐ怒っていたんだけど『人は人、自分は自分』と思うようになって、怒らなくなった」という方もいらっしゃいます。

いくらでも心地良い日々を過ごすことができるのです。

そして、まだまだあります!

怪我の改善、予防、精神面だけでなく、色々な動きのバリエーションが増えるのでパフォーマンスの向上にもなるのです。

スポーツ、ダンス、音楽・・・あ、そういえば、私は足が痛くてたまらなかった正座が楽になりました。正座から立ったり座ったりの動作も。それによってお茶のお稽古がさらに楽しくなりました!!

今まで出来なかったことが、出来るようになり、出来ていたことが、もっと簡単に出来るようになり、簡単にできることが、もっと優雅にできるようになっていくのです。

私たち人間が持っている治癒力などの凄さ、そして可能性は無限にある!ということを私の活動の中からご紹介できたらと考えています。

また次回をお楽しみに

吉田万里子 のプロフィール

吉田万里子

1988年からプロレスラーとしてリングに立ち続け、怪我だらけの毎日。

首のヘルニア3ヵ所、膝靱帯損傷、股関節痛、骨折、脱臼・・・まだまだ数えきれない負傷箇所。

2013年フェルデンクライスに出会い、自身の怪我の回復に驚愕。

フェルデンクライスを学び始め、さらに人間が持っている可能性の素晴らしさを実感する。

2018年、国際公認「フェルデンクライス」プラクティショナーの資格を取得し、病気や怪我で悩んだり苦しんだり、また慢性的な不調を抱えている方に、「いくらでも改善できる!!」こと、人間が持っている可能性の素晴らしさをお伝えしている。

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