香がつなぐ生きる命と偲ぶ命『香りと暮らし、和をたしなむ(連載第十七回)』

2021.8.4

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多田博之・晴美 ( 香司 )

FOUATONS aroma&herb・お香school 主宰。夫妻ともに薫物屋香楽(たきものやからく)認定香司。福岡と宮崎の教室を拠点に、NHK文化センターの講師として、九州各地と広島県にて天然香料にこだわったお香教室を開催。

大暑を迎え、蝉の鳴く声が一段と大きく聞こえてきます。

今年のお盆は、我が家では特別な日になりました。

歳を重ねると大切な人が亡くなることが身近になり、若い時とはずいぶん想いも変わりました。

社会に出たばかりの頃はお盆について、なんとなくは知っていたけれども、お盆休みは何日もらえるのか、休みはどう過ごそうか、なぜ親戚が集まって来るのか、母が家に居なさいと言うのが煩わしいとか・・・そんなことばかり考えてしまっていました。

 

お盆の習慣

お盆の習慣は、仏教の「盂蘭盆会(うらぼんえ)」という行事から始まったものです。

旧暦7月15日を中心にご先祖様や亡き人を偲び、心静かに命の尊さを感謝する期間でもあります。西日本では1月遅れの8月15日に行う地域も多くあります。

盂蘭盆会は「盂蘭盆経」の親孝行について説かれている教えが由来しています。

お釈迦様の弟子の1人であった目連様が、亡き母を神通力で覗くと餓鬼道の中で苦しんでおられました。

どうしたら飢えと渇きに苦しむ母を救えるのか、お釈迦様に教えを乞うと、同じ苦しみにある者に対し、同じ思いで救う気持ちを持つように、とお釈迦様は諭されました。

そこで目連様は夏の修行の終わった修行僧に、食べ物や飲み物、ゆっくりできる場所を用意したところ、修行僧達はとても喜んだそうです。

この功徳が母のいる世界にも届き、母も救われたのだそうです。

盂蘭盆は、サンスクリット語の「ウランバナ(ullambanaउल्लम्बन))」の音写語にあたるという説があります。「ウランバナ」は、逆さ吊りの意味をもちます。


お盆の過ごし方や祖先のお迎えの仕方は宗教や地域によっても、様々
なようですが先祖を敬う気持ちや、亡き人を忍び命の大切さを認識するという思いは同じです。

 

夏の安居とは

お釈迦様は修行僧達に、雨季は托鉢(たくはつ)に出ることを禁じるよう教えていました。

雨季のインドは生命活動の活発な時期であり、歩き回ると新しい草の芽や虫たちを踏んでしまうからだという理由です。

修行僧達は庵に集まり、共同生活をしながら座禅をしてこの時期を過ごします。これが「寺」の始まりともいわれています。この一定期間、僧侶達が集まって集団で修行することを「安居(あんご)」と言います。

夏の雨季に行われることから「雨安居(うあんご)」「夏安居(げあんご)」ともいい、安居に入る日を「結夏(けつげ、けちげ)」といい、安居を終える日を「解夏(げげ)」といいます。

この「結ぶ」「解く」という表現も、飾り結びをしている私には心地よく思えました。

この日(安居を終える日)に目連様は、修行僧に供物をしたのですね。

ふと脳裏に浮かんだのが、コロナ感染を避けるためにとあらゆる手段で接触をさけることが優先されている昨今の状況。

無観客となってしまったオリンピック。五輪選手として参加できる喜びを、精一杯のパフォーマンスで表現するアスリート達。

コロナ禍にありバブル方式が採用されている状況ではありますが、そんな彼ら、彼女たちに少しでもエールを贈りたいと選手たちに見えるよう横断幕を掲げたりする国民の姿は、母を救いたいと願う目連様の精神そのもののようですね。

仏教の教えは、今でも人の心に寄り添っています。

 

 

解夏

安居の話から、ずっと昔に観た「解夏」という映画を思い出し、改めて観直しました。さだまさしさんの同名タイトルの短編小説を映画化した作品です。

難病(ベーチェット病)が発覚した主人公・隆之(大沢たかお)と、その婚約者・陽子(石田ゆり子)を中心に、地元の友人・輝彦(田辺誠一)、隆之に病気を告知した医師でもう1人の友人・博信(古田新太)、隆之の母親(富司純子)、それぞれの人との関わりや、そこから生まれる心の苦悩が描写された作品でした

寺院業務の傍ら大学で郷土史を教えている老人・茂太郎(松村達雄)は、隆之の病に冒された境遇を「行」に例え、「解夏」という言葉の由来を教えます。タイトルの「解夏」は、ここから取られています。茂太郎は、隆之を慈悲深く支える存在です。

奇しくも、茂太郎役の松村達雄さんと陽子の父・健吉役の林隆三さんという昭和を彩った名優の御二方は、この作品の公開後に亡くなられています。

ここでも命の尊さを感じさせられました。

 

お盆とお香

お盆に欠かせないものがやはりお香です。主に、線香または焼香を用います。

この二つは火をつけて煙を立てることが大切です。

◉人の心身とその場を清める。

◉仏様の慈悲が平等であるようにお香の香りはそこにいる人に平等にひろがっていく。

◉煙が天への道しるべになる。故人が迷わないように。

◉お香は故人にとって食事になる。

◉線香、焼香の煙が天と地を繋ぐ。

このような役割があります。

お線香の煙のくゆる様子は、とても穏やかで静かに時が流れるようです。

このゆらぎこそリラックス効果をもたらします。

さらに良い香りなら、尚更ですね。

当教室では天然香原料を使用して、調合や成型まで体験して頂いています。

手づくりならではの「よろけ具合」も愛しくなります。

自宅で乾かす間もとても良い香りがします。仕上がりましたら お気に入りの香炉やお香立てで焚くことができます。

ご興味がある方は是非、体験してみてくださいね。

今回は、昔から習慣となっているお盆について書いてみました。

この季節に贈るお中元も、お供えしたものを身近な人達に配ったことから始まっています。由来を知ると元来の意味が理解できたり、マナーなども見えてくるのではないでしょうか。

文頭に蝉の声にふれましたが、明時代に李時珍が現した『本草綱目』には「蝉退(せんたい)」といって蝉の抜け殻は生薬として記されています。

また晩夏の季語として「空蝉(うつせみ)」と表されます。古には亡き人の蘇りを願う考えもあり、土から再生する蝉は縁起の良いものと考えました。

命のある限り鳴きつづける蝉にも、生命の大切さを考えさせられますね。

 

 

FOUATONSアロマ&ハーブ•お香スクール 華結び「組乃香」福岡校•宮崎校 

花を使わずして花の香り 〜 お香づくり
香り好き+セルフケア 〜 aroma&herb
日本の伝統文化 〜 飾り結び
体験から資格まで

https://www.fouatons.org/

多田博之・晴美 のプロフィール

多田博之・晴美

【多田博之】

FOUATONS aroma&herb・お香school 主宰
薫物屋香楽認定教授香司
歯科医師

宮崎市にて21年間開業医として地域医療に携わる。偶然に出会ったお香の魅力に惹かれ、平日は診療、週末は東京にてお香の勉強を繰り返したのち、50歳の時に閉院しお香の活動に専念する。

現在、福岡と宮崎の教室を拠点に、NHK文化センターの講師として、九州各地と広島県にて天然香料にこだわったお香教室を開催。また香木の香りの素晴らしさや香道の魅力を伝えてたいと思い、御家流香道の研鑽を積んでいる。

平安期のお香の使われ方を勉強するなかで、紫式部の「源氏物語」に興味をもち、講座では、香道や源氏物語の視点も交えて伝える。

また、薫物屋香楽認定教授香司として、香の知識や技能をさらに深め、和の香り文化とお香づくりのスペシャリスト(香司)の育成に努めている。

【多田晴美】

FOUATONS aroma&herb・お香school
華結び組乃香 主宰
薫物屋香楽(たきものやからく)認定香司

アロマインストラクター、ハーバルセラピストを経て「香司(こうし)」として 香りの楽しみ方や使い方を紹介。

ハーブのもつフィトケミカル成分が、健康や美容など様々なジャンルで注目され、特にスパイス系ハーブは生薬との共通性があり、大陸から伝わったとされる「お香」の 香原料ともなっている。

日本の歴史や習慣に深く関わり、人々の心を癒してきた文化としての「香り」を「和」の心とともに普及する活動を福岡県や、宮崎県を基盤に全国で展開。

趣味と実益をかねて日本三芸道の一つ「香道(御家流)」や、室内を飾る「飾り結び」も研鑽中。 天然香料を使ったお香作りの講師として、メディアなどで香りの魅力と素晴らしさを発信している。


ホームページ→ https://www.fouatons.org/
Facebook→ https://www.facebook.com/miyazakifouatons/


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