2022.4.5
子供の成長発達の特徴と、対応の工夫でイライラ減少『発達の凹凸を理解し、親子で健やかに過ごすために(連載第1回)』

子ども発達インストラクター、チャイルドコーチングマイスターのHARUと申します。
神経発達症(発達障がい、ADHD、ASD、SLD)、グレーゾーンなど対応に工夫が必要な子ども、その関係者が、のびのびと育つサポートをさせて頂いています。
第一回目となる今回は、「子供の成長発達の特徴と、対応の工夫でイライラ減少」というテーマでお届け致します。
子供のことでついイライラしてしまっている方は、イライラが減ってくると思いますので、是非最後まで読んで頂ければ幸いです。
どうして私が子どもの発達に関心を持ったか
私が神経発達症について知ったのは、成人し何年も経ってからでした。
親友の子どもが自閉症であると知らされてから、「自閉症ってどういうもの?」という疑問が湧き、自閉症について調べはじめたのがきっかけです。
その当時はとにかく「親友と、その子どもに少しでも寄り添いたい」の一心で、それを機に勉強を始めたのでした。
そして、神経発達症とコーチングについて学んだ師の「困る子どもは”困っている子ども”※」、「困る親は、”困っている親”」という言葉に衝撃を受けました。
問題行動をとってばかりで、周囲から「困った子だ」と思われている子どもこそが、適切な行動をとることができないでいる「困っている子」であるという意味。
子どもに関わる人たちに、少しでも心穏やかに、楽しく過ごしてもらいたいという想いと、発達の凸凹に関係なく”凸凹がある子に分かりやすいことは、そうでない子にも分かりやすい”という想いで子どもたちと日々接しています。
成長発達の特徴
人間の発達においては、一定時期までに達成しておく課題(発達課題)があります。
これは教育用語で、アメリカの教育学者であるロバート・J・ハヴィガーストが唱えたものです。下記の表のように、一定の年齢までに獲得(達成)しておく課題があるというものです。
まずは、どの時期にどんな発達課題を獲得するかをざっと入れておくといいと思いますので、下記の表を参照下さい。
この発達課題を達成しないまま歳を重ねると、心理的課題vsの右側が強く出てしまうことがわかっていて、最近よく聞く「愛着形成」や「自己肯定感」も、この発達課題が大きく関わっています。
また、発達に凸凹がある子どもについては、幼児前期の発達の課題獲得に、発達の凸凹がない子どもより時間がかかるとされています。
ジェンガをイメージしてもらうとわかりやすいかもしれませんが、下(最初)の土台がしっかりしておらず所どころ抜けていると、上(後の方)は不安定で崩れやすくなってしまいますね。
また、「主な関係性」部分にある「母親」は「母性的存在」、「両親」は「両親的な存在」を意味していますので、必ずしも「母親でなくてはならない」「両親でなくてはならない」ということはありません。
そしてこの発達課題については、「一度獲得(達成)した課題は、なくならない」という「発達の順序性・不可逆性」があります。
例えば、弟や妹が産まれて、排泄の自立ができている子が「トイレの失敗」をするようになったからといって、一旦獲得した排泄の自立は、なくなることはありません。
一時的にしなくなっているだけなので、失敗を責めず、寄り添ってくださいね。
「反抗期」、どう対応するか(工夫POINT①)
自我の芽生え
自我が芽生えてくると、自分の意志を主張し、親の意見との対立が生まれます。
「反抗期」といわれていますが、幼児期・思春期と成人するまでに2回ほどあるとされているのはご存知の方も多いかと思います。
そもそも「反抗」とは、「親の意見(意思)と違うから、親からみての”反抗”」であって、子供の立場からすると、自分の意見(意思)を主張しているだけなのです。
なので、「反抗期は自立期」と捉え、「お!成長しているなぁ」と前向きにとらえてみてください。
「うっせぇ」、「くそばばあ」という暴言を吐くこともありますが、子供たちはこれらを「好ましくない言葉」ということは理解していますし、幼児でも「何となく好ましくない言葉」と理解しています。なので、成長と共に自然と使わなくなっていくでしょう。
「うっせぇ」=「少し黙って放っておいてください」、「くそばばあ」=「お母さま」と言っていると思えば、いちいち腹を立てる必要もなくなります。
「怒る」と「叱る」(工夫POINT②)
イライラ削減の余地が大いにある「怒る」シーン。
よくありがちなのが、「怒る」と「叱る」をごちゃ混ぜにし、「怒る」ばかりになっていること。
本当に叱らないといけない場面は、「他人に危害が加わること」、「自分に危害が加わること」であって、その場合はその時に短い言葉で強く叱り、後で(落ち着いてから)しっかりと理由を説明します。
そして上に挙げた危ないこと以外で、声を荒げて怒る必要はないのです。
「怒る」は怒る側の感情で言ってしまうこと。
「叱る」は相手に気づかせること。
怒られた子どもは、本来の「何がまずいのか」という部分の印象よりも「怒られたこと」の印象が強く残るからなのです。
「ガミガミ怒る」って、いいことってないんですよね…。
子供からのサインと呼びかけの工夫(工夫POINT③)
発達に凸凹がある子どもの場合、音や光に過敏な場合があります。
皆さんが、自分に投げかけられる言葉の音量と、周囲の雑音が同じ音量、またはそれ以上だった場合、どうでしょう?
私も会話の最中に大きな音量で音楽を流し、自分に話しかけられている会話を選別するということをやってみたことがあるのですが、それはもう、かなりのストレスでした。
「いきなり癇癪を起こした」と思われがちな子でも、聴力過敏の子の場合は、常にこのようなストレスに晒されています。
周囲から見ると「いきなり」と思われてしまうかもしれませんが、当事者の子どもとしては「ずっと我慢していたが、もう堪えきれなくなった」というサインを出しているのかもしれません。
私たちは、”選択的注意”という脳の機能を使って、普段無意識のうちに必要な音を選択し、不必要な音を遮断することで自分が欲しい音を拾っています。
ですが聴覚過敏のある子の場合、この”選択的注意”がうまく働かず、自分への問いかけなどに気づけないということがあります。
そんな場合は、その人の正面に立ってまず名前を呼び、相手が呼ばれていることに気づいてから、話をするといいですね。
また、言葉だけでは好きなことだけが頭に残ってしまうことなどを考慮して、絵を使ったり、文字に書いたりして視覚に呼びかけるということも効果的です。
ここまで子どもの成長発達と工夫について簡単に書きましたが、どうでしょう?ちょっと対応に工夫ができて、イライラが減りそうな感じはしませんか?
最初に書いたように、発達の凸凹に関係なく、”凸凹がある子にも、そうでない子にも分かりやすい”という想いで子どもと接していれば、あなたも子どももストレスが減るのではないでしょうか。
参考になれば幸いです。
参考文献
『ふしぎだね!? 新版 自閉症のおともだち(1)』
著者/編集:内山 登紀夫, 諏訪 利明
ミネルヴァ書房
『子ども発達インストラクター講座』
著者/日本メンタルコーチング学院®
HARU のプロフィール

子ども発達インストラクター・チャイルドコーチングマイスター。
神経発達症について学んだ際の師の言葉「困る子供は”困っている子供”」、「困る親は、”困っている親”」という考えを根底にもっており、子供に関わる人たちに、少しでも心穏やかに、楽しく過ごしてもらいたいと考えている(特に、子供と密接に関わる母親(又は母的役割をする人)が心穏やかでなければと思っている)。
結婚・出産前まではシステムエンジニアとして従事していたが、第二子がポッター症候群により新生児死を経験し、子供と過ごす時間について考えることが増え、フリーランスに転身。
現在は動画クリエーターとして活動している傍ら、身近な人たちの子育て相談・発達相談を受けつつ、「ニューコードNLP」、「ポリヴェーガル理論」などを学び、カウンセラーとしての活動を開始する。