【八支則】ヨガの基本「ヤマ・ニヤマ」と、現代に息づくアヒンサーの教え『体と心のウェルネス 〜 意外と知らないヨガのこと(第3回)』

2023.4.19

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KAZUMI ( ヒーリングアドバイザー・ヨガティーチャー )

ヒーリングアドバイザー・ヨガティーチャー。ポーズだけでないヨガの優れた知識をはじめ、瞑想、マインドフルネス、チャクラ、アロマテラピー、ハーブ、算命学等、身につけた知識をトータル的に探求分析、身体と心のヘルシーライフを目指し、自分自身への向き合い方を普段の生活に取り入れる方法を提案している。

ヒーリングアドバイザー・ヨガティーチャーのKAZUMIです。

東京は初夏の陽気も増えてきました。この時期は自然の波に乗るように、体を動かしたくなってきます。

老若男女、簡単にできるポーズが多いヨガで少しずつ、冬に固まっていた体を動かしてみると良いでしょう。

前回お伝えしたヨガスートラ

「自由であること」「思考の動きを静かに収めること」をゴールとし、心と体に健康と幸福を得るための方法をご紹介しました。

8本の柱のヨガスートラですが、古い時代のみならずこの現代でも幸せに生きるためのヒントとなるものがたくさんあります。

 


生活に繋げるために

「パタンジャリの彫像」 User:Alokprasad, CC BY-SA 3.0

ヨガスートラの8本の柱である「八支則Ashtanga / Eight Limbs of YOGA)」は、パタンジャリ( पतञ्जलि / Patañjali)によって紀元前にまとめられました。遠い遠い昔、ましてや日本から遠いインドの生活の叡智です。

初めて読んだ時、私は文化や歴史、生活様式が全く違う国で作られたもので「インドのこと」として捉えていました。

しかし、八支則の優れているところは、それらの違いがあるにも関わらず、「人として生きるため」に共通して考えられることが記されていることです。

ただ読むだけで、感じることができる訳ではありません。実践をすることで、初めて感じることができます。すでに実践している方々は、ここで頷いていただいていることでしょう。

これらの実践のためには、「 自分に目を向けること 」が必要です。

私たちは相対的に物事を考えています。普段の生活で、他者や他のことと比較して自分の存在を感じる思考になりがちです。

他者や他のことを入れないで、自分で自分の思考に向き合ってみましょう。自分のことだけど、まるで他人事のようにそれを観察しているような感じかもしれません。

あまり難しく考えず、自分とお喋りするように、自分と向き合ってみてください。

 


社会生活の中で基本となるヤマ・ニヤマ

八支則の中で1番最初に出てくるのは「ヤマ(すべきでないこと)」「ニヤマ(すべきこと)」です。人としてのあり方や対人関係における大切なことを挙げている柱です。

八支則

ヤマ(禁戒)
ニヤマ(勧戒)
アーサナ(ポーズ)
プラーナヤーマ(呼吸法)
プラティヤハーラ(制感)
ダーラナ(集中)
ディヤーナ(瞑想)
サマーディ(三昧)

私がこのコラムでご紹介したいのが、このヤマ・ニヤマです。

「ヨガといえばポーズ(アーサナ)」という印象が強いですが、ポーズよりも大切なこととして挙げられているヤマ・ニヤマについては知らない方がほとんどではないでしょうか。

意外と知らないヨガのベースです。

以前もご紹介していますが、ヤマ・ニヤマは、人生の倫理的な枠組みであり、試練を乗り越えるための指針であり、人間関係の中で起こりうる困難な状況を乗り越えて生きやすくするための実践法です。

これらを実践することで、心の葛藤や周りのトラブルに振り回されにくくなります。この2つの柱は、心の健康を手に入れるためのベースだと私は思っています。

一つ一つの言葉は当たり前のことかもしれないのですが、可能な限りイメージを広げ、自分の生活と紐づけて考えるようにしてみると、これらが現代を生きる私たちにとって、忘れてはいけない大切なことだったりします。

四六時中それを考えるのではなく、頭の片隅にいつも置いておき、何かの時にふと思い出してみると、そこに解決のヒントがあります。

では、どのように生活に取り入れるのか、どんな風に考えると身近に感じられるのか、「ヤマ(すべきでないこと)」について、具体的な例を挙げながらご紹介しましょう。

 

ヤマ・アヒンサー(非暴力)

日常で行ってはならないとされる「ヤマ」には、5つの心得がありますが、そのひとつが「アヒンサー(Ahimsa)」、暴力を振るわない、傷つけないことを意味します。

ヤマ 5つの心得

非暴力(アヒンサー)

正直(サティヤ)

不盗(アスティヤ)

禁欲(ブラフマチャリヤ)

不貧(アパリグラハ)

ヨガの教典『ヨガ・スートラ』の「実修の章」では、暴力(殺生を含む)は、自分や他人が直接起こしたものだけでなく、容認する行為があると説いています。その原因は、貪欲・怒り・妄想にあり、それらが苦痛と無知をさらに生じさせると書かれています。

暴力は私たちの身近に多く存在します。私たち人同士はもちろんのこと、動物へ、自然へと広く考えるとキリがないくらい存在するかもしれません。

「暴力を振るう」ことだけでなく、「傷つけない」ことも「アヒンサー」であると考えると、受けた側に生まれるのが「傷」「ダメージ」ですね。

それは明らかに目にみえることだけでなく、目に見えないこともあるでしょう。

どのような形にせよ、故意にダメージを与えることは暴力になり、「ダメージを受けたと感じたとき」には暴力を受けているかもしれません。

日々の生活の中では、自分でも気づいていないところで暴力を振るったり、受けたりしている可能性があります。

現代社会の中では、暴力を振るい、人にケガを負わせたら罰せられるのは、当たり前のルールとして認識されています。

体に暴力を振るわれると、体は傷つきます。心へはどうでしょう。

暴力は形を変えて、心に傷を与えることもあり、また、同じような立場の相手に対してだけでなく、年代、対象もバラバラに行われます。体ではなく、心への傷を作る暴力の方が受ける機会は多く、威力は目に見えずとも大きく、そしてそれは長く私たちを苦しめることになるかもしれません。

 

ネグレクト

私の経験でも、育児中に身近なこととして感じる暴力はいくつもありました。

育児をしていても、身近に暴力は存在しています。

「ネグレクト」はその一つです。

どうしても育児はどこか孤独に感じる一面があります。その時に、暴力の対象が子供に向き、育児放棄をすることが「ネグレクト」です。何もしないことで、結果、子供を傷つけています。

子供達がだいぶ育った頃にも、形を変えて暴力は身近に存在しています。

子供を介して知り合いになるママ友との関係の中でも暴力は発生します。

様々な価値観を持ったママ達とのお付き合いはとても気を遣うものです。そんな生活の中では、意見が違うことに対して、影で悪口を言う人もいますし、幼稚園や保育園にお迎えに行ったときに特定のグループ以外の人には挨拶もしない人もいます。さらに、気に入らない人を無視する人もいます。

もちろん、ほんの数人が行なっていることですが、対象になった人は嫌悪を感じ、心に傷を負いますよね。対象になっていなかったとしても、気づいた時には良い気分はしません。

 

SNSに潜む暴力

また、私が経験した心への暴力といえば、SNSによる暴力です。

FBやインスタグラムの中で、ママ友とのやり取りに対する不満が書かれており、名前は出てこないものの、それは私とのやりとりで交わした言葉が原因であり、自分との意見の相違がとても不快だったと書かれていました。

誤解して伝わっていることや、間違えて捉えていることに対して、話し合うこともしないまま、一方的に文章で悪く言われるのは大変気分が悪かったですね。

まさに、近年問題になっているSNSでの誹謗中傷でした。

これは人の心を傷つける言葉の暴力ですよね。体の傷ではなくても心に傷を負わせる「言葉」も暴力となりうると捉えてみると、日々の生活に暴力はとても多く存在しています。

では、この言葉の暴力に対して掘り下げて考えてみます。

 

自分を責めること、自分の心を直視しないことも「暴力」

人から言葉の暴力を投げかけられた時は、どんな気持ちになり、どんな風に感じるでしょうか。心の中は苦悩と悲しみと痛みで満たされるでしょう。

そんな時には、自分の心の反応・苦悩としっかりと向き合ってみます。

人から受けた暴力に向き合わずにいることは、結果、そのことに対して無視をすることに繋がり、やがては暴力を受けたときの思考や感覚を鈍らせてしまうことに繋がります。

「自分が悪かったのかな」

「何が悪いんだろう」

言葉の暴力を受けたとき、無意識にしている否定的な心での自分への問いかけは、私たちをより深い闇に引きずりこみます。誰もが傷ついたことをすぐに忘れたいし、すぐに逃げたくなる暗い感覚です。

この苦悩と悲しみと痛みをまずは感じてみます。この後、ご紹介するサティアにつながることですが、自分に嘘をつく必要はありません。

心の中で自分を責めることや、何が悪かったのかぐるぐる思い巡らすことはやめましょう。自分を責めることや、それを無かったことのように無視をすることは、自分に暴力を振るうことと同じですよね。

 

自分を愛し、受容する

そして、感じた後に自分自身を思いやりと慈しみを持って受け止めてあげましょう。

自分に優しく声をかけてあげましょう。

「嫌だったよね」

「辛かったよね」

声に出してもいいし、もちろん泣いてもいいんです。悲しい感情や苦しい感情をそのまま素直に受け止めます。

そして、自分に優しくなりましょう。あまり難しく考えずに、もう1人の自分に声をかけるように行ってみましょう。

実践してみるとずっと早く心が癒されます。
人に優しくする前に、自分に優しくなりましょう。

痛みを感じ受け止めることで、暴力がどれほど人の心を傷つけるのかを感じ、傷ついた自分を優しく労わることで心は確実に成長します。

自分に優しくすることは、人に優しくすることに繋がり、そして、人に対して暴力を振るわない、傷つけないということに繋がります。

他者に対しての言葉の暴力を止める自制心が、自分の毎日を優しさで満たすことになるのです。

普段の生活の何気ない行動や言葉の中にも、もしかしたら暴力として、相手に伝わってしまっていることがあるかもしれません。

闇に引きずりこまれて暗い世界に入る前に、自分と向き合い、自分に優しくなってみましょう。そうすれば、明るく穏やかな流れにまた戻ることができるでしょう。

情報量が多くなった社会生活の中では、身体的な暴力以上に言葉が暴力になる機会が多くなっています。

このような現代でも「ヤマ・アヒンサー」の教えは私たちに大いなる気づきを与えてくれます。

自分はどんな風に感じたのか、しっかり向き合い、自分に優しくなることはさらに自分の心の成長にも繋がるのです。

KAZUMI のプロフィール

KAZUMI

大学生高校生の息子2人の母。

小学校の特別支援員として勤務後、たくさんの子供達との触れ合いの中で、未来を作る子供たちが健やかに育つためには、大人たちが健康で幸せを感じる心を持つことが大切だと気付く。

身体と心のバランスをとるインドの優れた健康法であり自身の趣味だったヨガを2011年仕事とし、自宅でのヨガ教室をスタート。

習得した様々なヨガのスタイルや体育大学、トレーニングジムのトレーナーの経験を活かし個々の生徒さんに合わせたパーソナルスタイルのヨガ教室が好評。

現在はパーソナルスタイルに、体と心を緩める陰ヨガを積極的に取り入れたレッスンを実施中。

自宅でのプライベートレッスンの他、ヨガサークル、ホットヨガスタジオで活躍中。

ポーズだけでないヨガの優れた知識をはじめ、瞑想、マインドフルネス、チャクラ、アロマテラピー、ハーブ、算命学等、身につけた知識をトータル的に探求分析、身体と心のヘルシーライフを目指し、自分自身への向き合い方を普段の生活に取り入れる方法を提案している。


2011年 全米ヨガアライアンスRYT200®︎取得
スタジオヨギーTT修了
ヨガニドラーインストラクター
マタニティ産後ヨガインストラクター
アヌサラヨガイマージョンⅠ Ⅱ Ⅲ 修了
ジュノスタイル公認陰ヨガ指導者
JO PHEE YINSPIRATION
YIN YOGA TEACHER TRAINING (60 hrs)修了
Paul Grilley
YOGI'S GUIDE TO CHAKRA MEDITATION(10hrs)修了


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