「梅の実」に込められたお守りの力と、命の願い『四季に寄り添い、祈るように暮らす(連載第九回)』

2019.6.14

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三浦奈々依 ( フリーアナウンサー )

フリーアナウンサー・神社仏閣ライター・カラーセラピスト。
ラジオ番組にて20年以上にわたり、音楽番組を担当。東日本大震災後、雑誌Kappoにて約7年にわたり連載「神様散歩」を執筆。『福を呼ぶ 四季みくじ』出版。カラーセラピストとしても全国で活動中。

朝の食卓に欠かせない梅干しは、現存する日本最古の医学書『医心方(いしんほう)』にもその名が登場するほど、すばらしい力を秘めています。まさに、健康守り。新暦6月16日~21日は梅の実が黄色く熟す、第二十七候「梅子黄(うめのみきばむ)」。

今日は「梅干し」の歴史、効能についてご紹介しながら、ある女性にまつわる梅酒の秘話をご紹介します。

お子さんの死から10年。女性は夢を叶えました。

梅子黄(うめのみきばむ)とは?


新暦6月16日~21日は「梅子黄(うめのみきばむ)」。梅の子と書いて、うめのみと読みます。

梅干しは平安時代の医学書『医心方』で、「味は酸、平、無毒。気を下し、熱と煩懣(はんもん)を除き、心臓を鎮め、四肢身体の痛みや手足の麻痺なども治し、皮膚の荒れ、萎縮を治すのに用いられる。青黒い痣や悪質の病を除き、下痢を止め、口の渇きを止める」と効用が記されています。平安時代、梅干しはまさに薬として用いられていたんですね。

6月に入り、スーパー等で梅の実が売られているのを見かけるようになりましたが、「梅子黄」の時季に仕込んだ梅干しは「夏の土用」に干すとよい味になると言われているとか。

令和元年、私も梅干し作りに挑戦しようと、手持ちの果実酒用のアデリアの保存容器で代用。重石は焼酎で消毒したビニール袋に入れた水です。「梅子黄」の時季に漬けて、夏の土用の晴れの日に天日干しをしたら、完成です。梅の実が入った袋を開けた瞬間、まるで桃のような、杏子のような甘やかな香りが漂いうっとり。どんな梅干しが出来るのか、今から楽しみです。今年の夏の土用入りは7月20日、土用明けは立秋の前日の8月7日です。皆さんも一緒に梅干しを漬けてみませんか?

梅干しが持つすばらしい力

亡くなった祖母が漬けていた梅干しは、良質の梅を塩とシソだけで漬けるシンプルなものでした。口に入れた瞬間、その酸っぱさに「う~っ」とうなり、思わずご飯に箸がのびる、昔ながらの梅干し。

実は、この酸っぱさが健康によいとされ、疲労回復、防腐作用、体内のエネルギー代謝の活性化、風の予防の効果があると言われているそうです。

健康によいのはもちろんですが、梅干しはその昔、難を逃れるためのお守り的な意味も持っていました。これは、旅人がその土地の風土病にかからないよう、梅干しを薬代わりに持ち歩いていたことに由来します。

今でも温泉宿に宿泊すると、必ずと言っていいほど、朝食に梅干しが出されますね。そこには、「道中、ご無事でありますように」という、昔と変わらぬ旅人へのおもてなしの心が込められています。

梅酒に込められた命の願い

先日、ラジオ番組で、体重2500グラム未満の低出生体重児用のベビー服の企画・販売を行う「一般社団法人くるむ」を立ち上げた佐藤里麻さんにお話を伺いました。

日本では10人に1人が、2500グラム未満の低出生体重児で生まれてくるといわれているそうです。佐藤さんのお子さん、大生(だいき)君は2009年、体重2300グラムで誕生。生まれた時から重度の障害を持っていました。

現在も、小さな赤ちゃん用のベビー服を販売する店舗はほとんどなく、通信販売でも一枚3000円と高めの価格で売られていると伺い、驚きました。

病院のベッドにおむつ姿で寝ていた大生君に、妹さんがベビー服を作りプレゼントを。ベビー服を着た大生君を見た時、「一人の人間として認められたようで誇らしかったんです」と、あの日の喜びを、目にいっぱい涙を浮かべ話して下さいました。
同じ思いを感じているパパとママに、あの日の喜びを届けたい。小さな赤ちゃんを愛情と笑顔で包みたい。そんな願いを込めて、法人名を「くるむ」と命名。
ベビー服は一枚1000円という低価格を目指し、県内の新生児集中治療室(NICU)がある病院等を中心に販売していく予定。また、生後間もなくして亡くなった赤ちゃんのためのベビードレスも作りたいと、話していらっしゃいました。

番組終了後、佐藤さんが梅にまつわる話を。

大生君が生まれた年、ご主人のお兄様が「大生のお酒」と名づけた、梅の実を漬け込んだ梅酒をプレゼントして下さったそうです。長くは生きられないという現実を知りながらも、「頑張れ!」という命の願い、祈りを込めて。大生君は1歳3カ月で天国へと旅立ちましたが、2029年、大生君の20歳の誕生日である6月5日に大生君と乾杯することを楽しみに、佐藤さんは仕事に、勉強にと、忙しい毎日を過ごしています。

そして、大生君と生きた時間の中で佐藤さんが感じた思いがカタチとなったベビー服は、東北から小さな赤ちゃんたちの元へ羽ばたいていきます。
(お問合せは、info@kurumu.orgまで)

冬の厳しい寒さに耐え、可憐な花を咲かせる梅。
その、すばらしいたくましさも梅の実から授かりましょう。

『四季に寄り添い、祈るように暮らす』

次回は、「祓いこそが、しあわせへの第一歩!」と題して、心健やかに美しく生るための「祓い」についてご紹介します。祓いといっても、デイリーな祓いです(笑)。

参考文献

山下恵子『二十四節気と七十二候の季節手帖』                                                          

三浦奈々依 のプロフィール

三浦奈々依

フリーアナウンサー・神社仏閣ライター・カラーセラピスト。

ラジオ番組にて20年以上にわたり、音楽番組を担当。

東日本大震災後、雑誌Kappoにて約7年にわたり「神様散歩」の連載を執筆。心の復興をテーマに、神社仏閣を取材。

全国の神社仏閣の歴史を紹介しながら、日本の文化、祈りの心を伝えている。

被災した神社仏閣再建の一助となる、四季の言の葉集「福を呼ぶ 四季みくじ」執筆。


http://ameblo.jp/otahukuhukuhuku/
アマゾン、全国の書店、世界遺産・京都東寺等で販売。


カラーセラピストとしても全国で活動中。
旅人のような暮らしの中で、さまざまな神社仏閣を訪ね、祈り、地元の人々と触れ合い、ワインを楽しむ。

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