2019.9.27
香水で幸せの魔法をかける 『四季に寄り添い、祈るように暮らす(連載第二十三回)』

9月も残りわずかですね。
私が暮らす家のすぐそばに大きな金木犀の木があって、毎年、枇杷色(びわいろ)の花が甘やかな香りで、本格的な秋の訪れを知らせてくれます。
枇杷色の花を咲かせるのが金木犀。白い花を咲かせるのが銀木犀です。
金木犀も銀木犀も、芳香を放つ同じ「木犀(もくせい)」の仲間。ちなみに木犀の「九里香(きゅうりこう)」という異名は、九里先までも香るということからつけられたそうです。強い香りでその存在を知らせる金木犀にぴったりですね。ちなみに、銀木犀には「七里香」という呼び名も。七里香は早春に咲く沈丁花の別名でもあります。
言うならば、金木犀と銀木犀の花の香りは、自然に宿る神さまがおつくりになった天然の香水。
「香りには、未来を変える幸せな力がある!」と言われたら、驚きませんか?
今日はフレグランスデザイナー、カラーセラピストとして全国で活動していらっしゃる五味久里子さんにお話を伺いました。
香水の歴史

東方三博士の礼拝
人類は紀元前3千年の古代メソポタミアの時代から香りを生活に取り入れてきたと言われています。香水を英語でperfumeと言いますが、ラテン語のper fumum(煙を通して)が語源です。
もともと香りは神聖な儀式、場の浄化や神に捧げる薫香として用いられてきました。ミイラの語源はミルラ(没薬)からきているとか。香料は薬品として、また、香油を身体に塗り、体臭を消すためにも使われていたそうです。
五味さんは天然香料、合成香料を使った香水はもちろんのこと、チュニジアの香料商であるケミリー園子先生に従事。100%植物から抽出される精油を用いて、幅広い香りの提案を行っていらっしゃいます。
ヨーロッパの女性たちの香りの楽しみ方
五味さんが、パリを訪れた時のこと。
パリコレの会場で、昼間仕事を通じてお会いした女性と、夜、プライベートでお会いした時に、まったく違う印象をお持ちになったそうです。
その秘密は、「香り」。
その女性は昼と夜、ふたつの香水を使い分けていたのです。
「ヨーロッパの女性たちは一日の中で、ふたつの香りを楽しんでいます。朝、仕事中に身にまとう香りと、仕事を終えて身にまとう香りは別なんだと感動しました」と、五味さん。
昼間と夜を“オードトワレ”から“パルファム”へと香水の濃度を変えるだけでなく、会う人やシチュエーションに合わせて、いくつかの香水を所有し、使い分ける。また、仕事中と仕事を終えて身につける香りを変えることによって、自分自身の気分も切りかえる。
素敵だと思いませんか?
ヨーロッパの女性たちは、香りで自分自身に魔法をかけているのかもしれません。
五味さんは、昼間の香りの余韻を残しつつ、その香りに重ねるように、用意していた仕事後の香水を身にまとう。その女性のセンスに、ヨーロッパの女性たちの香りに対する意識の高さを感じたそうです。
香りで未来を変える
人間には5つの感覚がありますが、その中で「嗅覚」は唯一、脳にダイレクトに伝達されます。大脳辺緑系の主な働きは、食欲や性欲などの本能的な行動や、喜怒哀楽などの感情を司るところ。
つまり、香りは行動や感情に直接作用するため、気分を切りかえたい時、自分を変えたいと思う時に、瞬間で、効果的に働いてくれるのです。
五味さんは、その方が心地よく感じる香りから、心の状態を分析。望む未来を現実へと導く香水を調香なさっています。
明るく前向きな気持ちで毎日を過ごしたい
人生をエネルギッシュに楽しみたい
やわらかな気持ちで生きたい
いつまでも若々しく、美しくありたい
あなたが求めるのはどんな人生、どんな未来でしょう?
香りこそがあなたの心の流れを変え、あなたの未来を幸せ色に輝かせてくれます。
香りを新調して、新たな自分を演出しよう
この秋、イメージチェンジをしたい!という皆さん。服装やメイクや髪形だけではなく、香りを新調してみませんか?
行動的になりたい時は、柑橘系やスパイシーさをほのかに感じる香りを。
女性らしさに磨きをかけたい時は、ローズ系やエキゾチックな花の香りを。
「なりたい自分」を想像して香りを選んでみると新しい香りに出会えますよ、と五味さん。
また、心を許している友人やパートナーに香りを選んでもらうと、周りの人から見た自分のイメージがわかり、新たな自分発見につながることも。
平凡な毎日に飽きている時、また、マンネリな関係性に変化が欲しい時。
香りは、新鮮な気持ちを与えてくれるそうです。
「人は、意外性に恋をする」と、以前、大人な女性に教えていただいたことがあります。ぜひ、香水にも意外性を。
自分のイメージにない香り、愛用している香りをガラッと変えてみることによって、人生に予想外の展開が起こるかもしれません。
大人の女性としてのたしなみ ~上級者の香りの楽しみ方~
香水といえば、血管が通っている体温の高いところ、耳の後ろやうなじ、手首などにつけるのが一般的ですが、香りのプロフェッショナルからのアドバイスとして、下から上に立ちのぼる香水の性質をいかし、足首や膝の内側、おへその辺りにつける楽しみ方も。自分自身は常にその香りに包まれ、周りの人に対してはほのかに香るので、実は、香水初心者にもおすすめのつけ方だそうです。
また、香水は濃度にもよりますが、つけてからトップ(約30分間)、ミドル(30分~3時間)、ラスト(それ以降12時間くらい)と、少しずつ香りが変化していきます。人に会う直前に、いかにも香水をつけました!というより、場所や会う時間を逆算し、香りをつけるタイミングをはかることが出来るのが、香りの上級者だそうです。
いかがでしたか?
五味さんからアドバイスをいただいて、私も新たな未来を願う時、新たな香りに挑戦するようになりました。そんな時間の中で、「香りは心の流れを変え、人生に新たな流れをもたらしてくれる」という五味さんの言葉の意味を深く感じています。
ですが、自分が進むべき方向性が見えなくなった時、自分に戻れる香りもあります。
ANNICK GOUTALの「スソワール ウジャメ」。
アニックさんは元ピアニスト。希少かつ貴重、天然由来の成分を使い、調香は、中世そのままのイタリアの修道院の一室で行っていたそうです。「今宵こそは」 と名付けられた香水は、司祭の庭に咲くバラの香りに魅了されたアニックさんが13年間研究し、完成させた香り。「バラの花びらを浮かべたピンクのシャンパン」と表現される香水は繊細で神秘的、とても美しい香りです。アニックさんは53歳で他界。この香りが遺作となりました。香りの美しさはもちろんのこと、彼女の生き方にシンパシーを感じています。
皆さんはこの秋、どんな香りと出合うのでしょう。香りを新調して人生に幸せの魔法をかけませんか?
フレグランスデザイナー 五味久里子
香りの世界に魅了され、調香師立川一義氏を師事し調香を学ぶ。その後、心身に働きかける精油の素晴らしさを体感。チュニジアの香料商、ケミリー家の芳香療法を継承するケミリー園子氏から直に精油について学び、香水やメディカルアロマとしての精油など、それぞれ用途に合わせた提案を行う。また、震災復興を目的として仙台の出版社・株式会社プレスアートから発売された香「祈りの風」の香りをプロデュース。
三浦奈々依 のプロフィール

フリーアナウンサー・神社仏閣ライター・カラーセラピスト。
ラジオ番組にて20年以上にわたり、音楽番組を担当。
東日本大震災後、雑誌Kappoにて約7年にわたり「神様散歩」の連載を執筆。心の復興をテーマに、神社仏閣を取材。
全国の神社仏閣の歴史を紹介しながら、日本の文化、祈りの心を伝えている。
被災した神社仏閣再建の一助となる、四季の言の葉集「福を呼ぶ 四季みくじ」執筆。
→ http://ameblo.jp/otahukuhukuhuku/
アマゾン、全国の書店、世界遺産・京都東寺等で販売。
カラーセラピストとしても全国で活動中。
旅人のような暮らしの中で、さまざまな神社仏閣を訪ね、祈り、地元の人々と触れ合い、ワインを楽しむ。