心を亡くしていませんか?~ 忙し過ぎるあなたへ ~『四季に寄り添い、祈るように暮らす(連載第二十五回)』

2019.10.11

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三浦奈々依 ( フリーアナウンサー )

フリーアナウンサー・神社仏閣ライター・カラーセラピスト。
ラジオ番組にて20年以上にわたり、音楽番組を担当。東日本大震災後、雑誌Kappoにて約7年にわたり連載「神様散歩」を執筆。『福を呼ぶ 四季みくじ』出版。カラーセラピストとしても全国で活動中。

台風19号の上陸が心配されていますね。くれぐれもお気をつけください。

さて、先日新潟へ。

一線でバリバリ仕事をしてきたという60代の女性のセッションをさせていただきました。その女性は二度の入院を経験し、このままでは自分がダメになると思い、一線から退き、自分のペースで仕事をする決断を。

「当時の私は、今日の空の色は淡いブルーだなぁとか、そんなことを考える暇なんてなかったわ。常に仕事のことを考えてイライラして。以前より収入は格段に落ちたけれど、今は毎日が楽しい。食事もゆっくり味わって。もう健康そのものよ!」と、快活に笑っていました。

世界の中でも、日本は特に疲労人口が多いと言われているそうです。

数年前、アメリカのニュース番組等でしきりに報じられた、日本の「Karoshi」。

英語では「過労死」に当たる概念が存在しないため、過労死という日本語がそのまま「Karoshi」という英単語に。

「あまりに忙しい毎日を送っていると、心が死んでいくような気がする」と友人が話していましたが、まさに、「忙」という漢字は、「心」を「亡くす」と書きます。

「忙」は、他のものに心をうばわれ、心を亡くした状態をさす漢字。

皆さんの心は元気ですか?

忙しい毎日の中ですこし立ち止まり、四季の巡りに、心の目、心の耳を澄ませてみましょう。

今時期は二十四節気の「寒露」。月を眺めるのにぴったりな季節ですよ。

観覧料のかからない美術館

今年は、108日から23日までが二十四節気の「寒露」。寒露から立冬までを「晩秋」と呼びます。

寒露は読んで字の如く、朝露も冷え始める季節。

中国でこの時季は、「雀入大水為蛤菊有黄花」と呼ばれます。

古くから中国では、物が変化することのたとえとして、「雀入大水為蛤」という言葉が使われてきました。これは、雀(小さい鳥)が海に入り蛤になるという意味。雀が晩秋に浜辺で群れをなして騒ぐことから、蛤になると考えられていたそうです。面白い表現ですね。

また、草木はみな陽に花を咲かせますが、菊だけは陰、晩秋に黄色の花を咲かせます。

日一日と陰の気が増してゆく中で、決して華やかではありませんが、静かな自然の美を味わうことのできる季節が晩秋。

自然は神さまが生み出すアート。空の色、雲の形、遠くに見える山並み、ゆらめく光り、森の木々を、美術館で絵を鑑賞するように眺めてみませんか?

名月を眺めよう

さて、秋は名月の季節です。

寒露の時季には十三夜もあります。今年の十三夜は11日。古の人は十五夜の月を「明月(めいげつ)」、十三夜の月を「名月(めいげつ)」と呼んだそうです。

最近では十五夜も「名月」と言いますね。

十五夜は月見をしても、十三夜はとりたてて意識をしたことがなかったという方も多いでしょう。しかし古の時代、片方の月だけを眺めることを「片見月(かたみづき)」と呼び、縁起が良くないとされていました。

まんまるのお月さんはもちろん、欠けた月に美を見出す。

古の人の美意識、感性はやさしく、深いなと思います。

私が執筆しました「福を呼ぶ  四季みくじ」には、「後の月」というカードがあります。

自分にとって足りないと思うもの、その欠けこそがあなたをつくる。

欠けこそが、あなたの魅力を育んでいるのかもしれない。

今、あなたが手にしている幸せを見つめよう。

そんな意味が込められたメッセージカードです。

「不平不満ばかり言っていると、月に見放されてしまうよ~」と、やんわり戒めも。

満ち欠けを繰り返す月。

夜空に輝く月は少しずつ満ちて、14日に満月を迎えます。

今宵の月を眺め、その後、脳を休める癒しの時間をつくりませんか?

脳を休める瞑想法

アップル創業者のスティーブ・ジョブズが、瞑想の実践者だったことはあまりに有名な話ですね。

脳は体重の2%ほどの大きさにも関わらず、体が消費する全エネルギーの20%を使う「大食漢」と知り、驚きました。疲れをとるために、何もしないでぼーっとしているだけでも脳はエネルギーを消耗してしまう。体の疲れは改善されても、脳の疲れはとれないのです。

では、どうやって、脳の消耗をおさえるのか。

その答えが、「睡眠」と「瞑想」です。

最近、耳にすることが多くなった「マインドフルネス」。

テレビや新聞、雑誌等で特集が組まれ、話題になっていますね。

最新の脳科学で、ストレスの軽減、自律神経回復等の効果が実証され、アメリカではグーグルをはじめフェイスブックといった企業の他、政府機関の研修、小学校などの教育機関、医療の現場等で取り入れられているそうです。

マインドフルネスとは、『今、この瞬間』に意識を向ける生き方のこと。

今日は簡単にできるマインドフルネス瞑想法をご紹介しましょう。

方法はとてもシンプルです。

まずは背もたれのある椅子に、背筋を伸ばして座ります。

頭の上から糸で引っ張られている感じをイメージして下さい。

手は、膝の上に軽く置きましょう。

目を閉じて、呼吸に意識を向けます。

呼吸のスタイルは自由です。私は鼻から息を吸い込み、口からゆっくり息を吐き出しています。

もし雑念が湧いても、無理に雑念を打ち消そうとせず、その場合は再度、呼吸に意識を向けて。

息を吸い込み、ゆっくり息を吐き出す。呼吸もリズムが大切です。
これで終了です。

今の季節なら、窓を開けて、虫の声、風を感じながら瞑想をするのも良いでしょう。

マインドフルネス瞑想により「今この瞬間」に意識を向けると、洞察力や集中力が高まるとされます。また、起こる出来事に対して、より冷静に対処できるようになった、という声も。

短時間でも毎日取り組むことが大切。ぜひ今夜からお試し下さい。

いかがでしたか?

デジタルの時計が刻む無機質な時間ではなく、月と太陽が刻む「自然の時間」を意識して、今ここにいる自分を感じましょう。

心は生き物です。どうか、心を亡くしてしまわないように。

三浦奈々依 のプロフィール

三浦奈々依

フリーアナウンサー・神社仏閣ライター・カラーセラピスト。

ラジオ番組にて20年以上にわたり、音楽番組を担当。

東日本大震災後、雑誌Kappoにて約7年にわたり「神様散歩」の連載を執筆。心の復興をテーマに、神社仏閣を取材。

全国の神社仏閣の歴史を紹介しながら、日本の文化、祈りの心を伝えている。

被災した神社仏閣再建の一助となる、四季の言の葉集「福を呼ぶ 四季みくじ」執筆。


http://ameblo.jp/otahukuhukuhuku/
アマゾン、全国の書店、世界遺産・京都東寺等で販売。


カラーセラピストとしても全国で活動中。
旅人のような暮らしの中で、さまざまな神社仏閣を訪ね、祈り、地元の人々と触れ合い、ワインを楽しむ。

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