出雲「神在祭」~ 一生の幸せにつながる縁結びを願う ~『四季に寄り添い、祈るように暮らす(連載第二十七回)』

2019.11.1

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三浦奈々依 ( フリーアナウンサー )

フリーアナウンサー・神社仏閣ライター・カラーセラピスト。
ラジオ番組にて20年以上にわたり、音楽番組を担当。東日本大震災後、雑誌Kappoにて約7年にわたり連載「神様散歩」を執筆。『福を呼ぶ 四季みくじ』出版。カラーセラピストとしても全国で活動中。

出雲大社は、正確には「いづもおおやしろと称し、縁結びの神と崇められる大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)を祀る神社。

「今さら縁結び?」と思うなかれ。

縁結びとは、男女の縁はもちろん、人と人、人と物などのあらゆるつながりであるむすびを意味しています。

仕事、自分の持っている才能を花開かせることも、すべてはご縁次第。

幸せは、ご縁が運んでくるといっても過言ではありません。

神在祭(かみありさい)」は、出雲の地に神々が集い、幽(かく)れたる神事、即ち、私たちが授かり生かされる命やたましいのことなど、人智の及ばない目に見えない神事(かみごと)の世界、あらゆるご縁を決める、「神議(かみはかり)」が開かれる特別な時間です。

神様をお迎えする神迎神事・神迎祭が、11月6日(旧暦10月10日)19時から稲佐の浜で行われ、神々は11月7日~13日(旧暦10月11日~17日)までの7日間、出雲の地に滞在します。

出雲大社にはもう何度も参拝に訪れている私ですが、今年初めて神在祭へ

神在祭にお出かけになる方はもちろん、お出かけにならない方も、この一週間で人生が大きく変わるかもしれません。

一生の幸せにつながる縁結びを願う、特別な一週間。

今日は出雲大社「神在祭」についてご紹介します。

大国主大神と天照大御神の間で交わされた約束

遥か昔、大国主大神天照大御神(あまてらすおおみかみ)の間で交わされた、ある約束。

記紀によれば、大国主大神は天照大御神に「国譲り」をなさったとき、「私の治めています、この現世(うつしよ)の政事(まつりごと)は、あなたがお治めください。私は隠退し、幽(かく)れたる神事を治めましょう」と申されたのです。

天照大御神は感激され、大国主大神のために古くは高さ32丈、計算すると26階建てのビルに相当する壮大な天日隅宮(あめのひすみのみや)を建て、御子である天穂日命(あめのほひのみこと)に末永くお祀りするよう申し付けられました。

これが、出雲大社の創始です。

天穂日命の子孫は代々「出雲国造(いずもこくそう)」と称し、今日まで84代にわたり、祭祀を執り行っています。

年に一度、出雲の地に神々が集い、「神議」が開かれるようになった背景には、大国主大神と天照大御神の間で交わされた約束があったのです。

2019年の神在祭のスケジュール

2019年の神在祭は11月7日(木)~13日(水)の7日間、男女のむすびにはじまり、あらゆるご縁が出雲の地で「神議」にかけて決められるといわれています。

令和元年11月7日(神在祭)午前9時

令和元年1111日(神在祭・縁結大祭)午前10時

令和元年1113日(神在祭・縁結大祭)午前10時

令和元年1113日(神等去出)午後4時

地元出雲の人々は、神在祭の期間を、神議の妨げにならないよう、ひっそりと忌み、謹んで過ごすことから「お忌みさん」と呼んでいます。

八百万の神々をお迎えする

古来、大和の北西に位置する出雲は日が沈む聖地といわれていました。

11月6日の夕刻7時。日本海に夕日が沈むのを待って、稲佐の浜で御神火が焚かれ、注連縄が張り巡らされた斎場の中に神籬(ひもろぎ)、傍らに神々の先導役となる龍蛇神が海に向かって配され、「神迎 (かみむかえ)神事」が執り行われます。

神秘の神事の後、ご到着された神々は御使神「龍蛇(りゅうじゃ)神」様を先導として出雲大社へ。

この後、出雲大社神楽殿において「神迎祭」が執り行われ、全国からお集まりになった神々は宿泊場所となる東西の「十九社(じゅうくしゃ)」に鎮まられます。

「神議」、縁結びの会議が行われる場所とは?

11月7日からいよいよ「神議」が開かれ、神々はさまざまな縁結びのお話し合いをなされます。

会議が行われる場所は稲佐の浜に程近い、出雲大社の摂社「上の宮(かみのみや)」。

祭神は須佐之男命(すさのおのみこと)八百万の神(やおよろずのかみ)です。

出雲大社の重要なお役目を担う摂社ながら、簡素な素木造り。初めて訪れた時、田舎のおばあちゃんの家に帰ってきたような懐かしさを感じました。

神々は日中、この上の宮で会議を行い、その後、出雲大社へ戻り、十九社で翌日の会議にそなえ、休まれます。

いつもは扉を閉ざしている上の宮ですが、神在祭の期間中、扉が開かれ、神在祭限定のお守りやお札等を授与していただけますよ。

上の宮から歩いて数秒の下の宮(しものみや)も一緒に参拝するのが正式な参拝法。

下の宮に祀られているのは天照大御神です。

上の宮へのアクセスは、出雲大社から稲佐の浜に向かう途中、境外摂社である大歳社(おおとしのやしろ)の右手のせまい小道を入って、程なくの場所にあります。出雲大社から時間にして徒歩15分程。出雲大社と合わせて上の宮、下の宮も参拝しましょう。

ひと言も発さずにお参りすると願いごとが叶う

稲佐の浜近くに鎮座する上の宮、下の宮とともに重要視される因佐(いなさ)神社は、隠れたパワースポットとしてひそかに人気を集めています。『出雲国風土記』に「伊奈佐乃社」と記される古社。

ご祭神は、天照大御神の命により天降られ、稲佐の浜で大国主大神と国譲りの話し合いをされた建御雷神(たけみかづちのかみ)。国譲りの交渉を成功させ、その後国内を巡り、あらぶる神々を平定。

戦前は武運長久、現在は受験、進学、勝負の神様として知られています。

こちらの神社には不思議な言い伝えがあり、鳥居をくぐり、境内に入ったら、ひと言も発さずにお参りをすると願いごとが叶うと信じられているそうです。

地元で「速玉(はやたま)さん」と呼ばれ愛されている神社は、小さな神社ながら、近所の方に大切に守られているのでしょう。きれいに掃き清められた美しい神社です。

神在祭期間中に行われる特別な祈祷

11月11日と13日の2日間執り行われる「縁結大祭」の申し込みは終了していますが、是非、11月7日~12日の午後7時より境内の神楽殿で執り行われる、夜神楽特別祈祷(よかぐらとくべつきとう)へ。出雲神在に結ばれる祈りをお取りつぎいただく、特別な祈祷です。事前の予約は必要ありません。

出雲大社は通常、夜の8時まで参拝が可能です。

初めて、私が出雲大社を訪れたのは晩秋でした。薄暮から、暮夜へと移り変わっていくひととき。長い参道を進むと、どこからともなく篠笛の音が聴こえてきました。空を見上げると、青い闇にぽっかりと浮かんだ月。まさに、目に見えない世界、幽世(かくりよ)を司る神様を祀るにふさわしい幻想的な世界が目の前に広がりました。

11月12日は満月。7日から少しずつ満ちていく月明りを受け、長さ約13メートルの大注連縄がかけられた神楽殿へ。雅楽が奉奏され、巫女による御神楽が奏上される夜のひととき。大国主大神と八百万の神々に一生の幸せにつながる良縁を願う夜は忘れられない思い出になるでしょう。

参加者全員による玉串拝礼が終了した後、お守りが授与され、さらに御神酒と神在餅(じんざいもち)が振舞われます。

ご祈祷の初穂料は5000円。受付開始時刻は毎夜18時からとなっています。所要時間は約1時間30分~2時間ですので、特別祈祷の終了時刻は21時頃になります。

バス等の運行はほぼ終了していますので、JR出雲市駅までタクシーで移動することになります。タクシー料金は3000円前後です。

出雲の地に神々が集う佳き日に、良縁を願い、和楽豊栄の暮らしに結ばれましょう。

八百万の神々をお見送りする日

佐田神社

11月13日の夕刻4時。拝殿にて、ご縁を結ばれる大会議「神議」を終えた神々に感謝の祈りを捧げ、出雲大社からの御出立をお送りする「神等去出(からさで)祭」が執り行われます。

神々は東西の十九社より拝殿へとご遷座され、1人の神官が「お立ち~、お立ち~」と唱えます。この瞬間、神々は神籬を離れ出雲大社を去られ、引き続き松江の佐太神社で神在祭が行われ、斐川町の万九千神社より神々はそれぞれの国へ還られると伝えられ、出雲大社では旧暦26日にも神官一人が行う小祭「神等去出祭」が執り行われるそうです。

「神迎祭(かみむかえさい)」にくらべ、ひっそりと執り行われる「神等去出祭(からさでさい)」。

感謝の心で神々をお見送りいたしましょう。

 

いかがでしたか?

以前、ハワイ出雲大社の天野宮司を取材し、雑誌の記事を書かせていただきました。

その時、天野宮司が、有名な「因幡の白兎」とともに、「赤猪抱き(あかいだき)」という話を教えてくださいました。

因幡の国の八上姫(やがみひめ)が他の兄弟の神々の求婚を断り、大国主大神に嫁ぐと決めたので、怒った兄弟たちが、大国主大神に、「赤い猪を追い落とすから、それをしっかりとつかまえるんだぞ」と言い聞かせ、真っ赤に焼けた熱い大石を山の上から転がしたのだそうです。

そうとは知らない大国主大神は、その大石をしっかりと抱きとめ、大やけどをおって死んでしまわれました。

では、その後どうなったかと言いますと、古事記では息子を亡くした母の悲しみが天に通じ、やけどを治してくださる神様が遣わされ、大国主大神はよみがえるのです。

よみがえった大国主大神は人々の幸せのため、より一層のお働きをされました。

天野宮司はにっこりと微笑んで、「私たちは正しいことを行う際、赤い猪を抱かされることもあります。でも、真心を持ってすることは、いつか必ず実を結ぶもの。必ず、誰かがその真心を感じ、通じ合うのです。限りのあるものにいつまでもとらわれるのではなく、永遠に続く心やたましいを磨き続けられるかどうか。生活をうるわしくするため、日々、真心を胸につとめることが大切です。そういう生き方こそが、縁結びにつながると思いますよ」とおっしゃって、私を見送ってくださいました。

国造りの神、世の女性たちにとっては縁結びの崇敬を集める大国主大神。

神在祭で一生の幸せにつながる縁結びを願い、日々、心とたましいを磨き続けましょう。

きっと、真心を感じ、通じ合う誰かと出会えるはずです。

 

参考文献 : 神社本庁「神社のいろは」

三浦奈々依 のプロフィール

三浦奈々依

フリーアナウンサー・神社仏閣ライター・カラーセラピスト。

ラジオ番組にて20年以上にわたり、音楽番組を担当。

東日本大震災後、雑誌Kappoにて約7年にわたり「神様散歩」の連載を執筆。心の復興をテーマに、神社仏閣を取材。

全国の神社仏閣の歴史を紹介しながら、日本の文化、祈りの心を伝えている。

被災した神社仏閣再建の一助となる、四季の言の葉集「福を呼ぶ 四季みくじ」執筆。


http://ameblo.jp/otahukuhukuhuku/
アマゾン、全国の書店、世界遺産・京都東寺等で販売。


カラーセラピストとしても全国で活動中。
旅人のような暮らしの中で、さまざまな神社仏閣を訪ね、祈り、地元の人々と触れ合い、ワインを楽しむ。

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