2019.11.8
「七五三」~あなたに贈りたい、いのちのメッセージ~『四季に寄り添い、祈るように暮らす(連載第二十八回)』

11月15日は七五三ですね。
男の子は3歳と5歳、女の子は3歳と7歳の11月15日に行いますが、現在は11月中のいずれかの土日祝日に行うことが多いようです。
七五三は子どもたちがここまで無事に成長したことを神さまに感謝し、健やかな成長を願う、日本の大切な行事のひとつ。
つい先日、故郷の神社を参拝しました。
袴や着物を着せてもらっておめかしした子どもたちと、正装したお父さんとお母さんが晴れやかな笑顔で写真撮影を。
「神様にちゃんと手を合わせなさい」とお母さんに背中を押され、見よう見まねでポンポンと手をたたいて、神様に向かってお辞儀をする男の子を見て、あまりの可愛らしさに思わず笑みがこぼれました。
私たちにも、そんな幼かった日があるのですね。
七五三は、いのちを思う日。
昔、子どもだったすべての大人たちへ贈りたい「いのちのメッセージ」があります。
今日は、いのちについて考えてみませんか?
生まれてきたことがうれしくなると未来が楽しくなる
皆さんは『誕生学』という言葉を聞いたことがありますか?
「生まれてきたことがうれしくなると未来が楽しくなる」をコンセプトに、『誕生』を通して子供たちに「自分自身の生まれてきた力」を伝え、自尊感情を育むことを目的とした次世代育成のためのライフスキル教育プログラム。
ラジオ番組を通じて、すべての子どもたちに“幸せな大人”になって欲しいという思いで活動を続けるひらみゆうこさんとお会いして、「誕生学」なるものを初めて知りました。
子どもたちに、きちんと「いのちの話を知って欲しい」「子どもたちに正しく“性”を語ることの出来る大人になりたい」という思いで資格を取得なさったひらみさんは、学校でのゲストティーチングの他、都内、宮城県内にて定期的に「いのちのサロン」を開講しています。
ひらみさんが定期的に通っている気仙沼市では、総合的な子育て支援策「プロジェクト1.90」の事業として、中学生や高校生を対象に「乳幼児親子の学校訪問事業」を実施。
中学生や高校生の子どもたちが赤ちゃんを抱っこしたり、お母さんたちと交流することにより、自分が生まれた時の親のよろこびを感じて、結婚して家族を持つこと、赤ちゃんを愛おしく思う気持ちを感じて、将来、親になった時の自分をイメージする時間を提供しています。
東日本大震災で多くのいのちが犠牲となった東北の町で、こういった取り組みを積極的に行っていることに深い意味を感じました。
さて、『誕生学』の講義で、実際にひらみさんが子どもたちに話しているフリードリヒ2世の実験。
ひらみさんからこの話を伺い、強い衝撃を受けました。
ひとことも言葉をかけられなかった赤ちゃんが話す言葉とは?
今から約700年前、ローマにフリードリヒ2世という王様がいました。
彼は非常に好奇心に溢れた人で、語学に関する研究も盛んに行っていました。
「赤ちゃんにひと言も言葉をかけずに育てた場合、赤ちゃんはまず初めに、どんな言葉を話すのだろう」
フリードリヒ2世は疑問に思い、研究を始めました。
というのも、当時は「神の言語」があるとされていて、人間から一切の影響を受けない場合、赤ちゃんは「神の言語」を話すのではないか?とフリードリヒ2世は考えたのです。
そこで、国中からお城に赤ちゃんが集められました。
フリードリヒ2世は、赤ちゃんにきれいな洋服を着せ、おなかがすいたらお乳を与え、体が汚れたら衛生的に保つよう家来たちに言いつけます。
ただし、赤ちゃんが泣いても、抱きあげてあやしたり、微笑みかけて歌を歌ってあげたりすることは一切禁じました。
赤ちゃんたちに与えられないものは、一切のコミュニケーションと愛情。
さて、赤ちゃんたちはどんな言葉を話したでしょう?
この実験は失敗に終わりました。
というのも、実験に参加した赤ちゃんは1歳を迎える前に全員亡くなってしまったのです。
赤ちゃんが亡くなってしまうとは、誰一人予測をしていませんでした。
ですから、誰もが驚き、悲しみました。
「最近では、研究が進んで、愛情ホルモンの重要性なども分ってきていますね。大人だって、誰ともコミュニケーションをとらない日々が続いたら、精神的に参ってしまいます。赤ちゃんに限らず、人間には愛情のあるコミュニケーションというものが、元気に生きていくためにとても大切なんですよ」と、ひらみさん。
700年前に行われた実験が、私たちに教えてくれたこと。
それは、人間は愛情のあるコミュニケーションがなければ、おなかが満たされていたとしても、たった一年も生きられないということです。
コミュニケーションが苦手な子どもたち
昨今、若者や子どもたちのコミュニケーション能力の低下について、学校や新卒採用などの現場において、話題に上がることが多くなりましたね。
核家族化が進んだことも、その理由の一つかもしれません。
お父さんとお母さん、おじいちゃんおばあちゃん、みんなで夕飯を食べながら、その日あったことを話す。サザエさんやちびまる子ちゃんといったアニメやドラマの世界で見る日本の日常の風景も、現代では珍しいかもしれません。
また、ITの発達により、連絡はすべてメールやSNS。悩みごとがあれば、面と向かって話すよりも、自分のことを知らない人間に話す方が気が楽と、インターネット上で相談するケースも増えているそうです。
コミュニケーションの不足によって、コミュニケーションが苦手という若者や子供たちが増えるのは当然のことかもしれません。
ひらみさんが『誕生学』を伝える中学生、高校生の子どもたちは、ちょうど思春期。
「親がうざい」「面倒」と話す子どもたちも、少なくないそうです。
そんな子どもたちに、ひらみさんは、「自分が生まれたとき、この命を大切にしよう!この子のために頑張ろう!って思って行動してくれた大人たちがいたことを忘れないで欲しい。そういう誰かの力がなかったら、今の君たちはいないんだよ」と、伝えています。
「みんな愛されているよ」
ひらみさんの講義を受けて、生まれたばかりの赤ちゃんを抱っこしたり、触れ合う時間の中で、子どもたちの表情や言動もどんどん変化していくのだそうです。
「将来、僕も赤ちゃんが欲しいな。お父さんになれるかな?」
「自分は愛されてきたから、今ここにいるんだって気づくことができた」
「赤ちゃんが大きくなっていくのは普通だと思っていたけど、愛情を注いでくれるまわりの人がいたから大きくなれたんだ」
「この場所に生まれてきてよかった」
「すごくお父さんお母さんに感謝したい!」
「自分は世界に一人しかいない。誰も同じじゃなくていい。それが、個性なんだと思ったよ」
いのちを愛おしく思った時間は、きっと、子どもたちの未来を変えるでしょう。
七五三は「いのち」を思う日
「子どもには聴く準備があります」と、ひらみさん。
「性にまつわる正しい知識を毅然と、ロマンチックな物語として伝えたい。人間はみんな子宮出身。自分のいのちはもちろん、隣にいる人のいのちも誰かの大切ないのち。その家の大切な赤ちゃんだったのだと、気づいて欲しい。世の中には、いじめられてもいい、適当に扱っていいいのちはひとつもないんだということを伝えたいです」と、話して下さいました。
7歳までは神の子といわれ、幽界(ゆうかい)に戻りやすいとされていた子どもの魂が、無事にこの世に根づいたお礼を産土神(うぶすながみ)に捧げる、七五三の行事。
いのちを与えてくれた両親はもちろんのこと、私たちはみな誰かに支えられ、見守られながら、いのちを育み、大人になったのです。
今年の七五三は子どもたちと一緒に、私たちも、ここまで無事に成長したことを感謝し、健やかな未来を願いましょう。
ひらみゆうこ
一般社団法人誕生学協会認定
誕生学アドバイザー、産後教室講師
ベビータッチング教室講師
仙台市生まれ。2児の母。大学生時代まで仙台で過ごす。ショウビズ界、就職を機に上京。
テレビ番組・舞台制作プロデューサーを経て、現在は、女性だけで構成される放送作家事務所に勤務。主に子供番組、ママ・女性向け番組を担当。震災を機に家族と仙台へ。仙台に拠点を移してからは、従来の業務と並行し、津波の塩害被害を受けた農地や耕作放棄地に綿花を植える「Tattonプロジェクト」代表としても活動している。
小中学校を中心に「生と性」の話を子供たちに伝える活動を行う。
誕生学協会HP http://tanjo.org/
三浦奈々依 のプロフィール

フリーアナウンサー・神社仏閣ライター・カラーセラピスト。
ラジオ番組にて20年以上にわたり、音楽番組を担当。
東日本大震災後、雑誌Kappoにて約7年にわたり「神様散歩」の連載を執筆。心の復興をテーマに、神社仏閣を取材。
全国の神社仏閣の歴史を紹介しながら、日本の文化、祈りの心を伝えている。
被災した神社仏閣再建の一助となる、四季の言の葉集「福を呼ぶ 四季みくじ」執筆。
→ http://ameblo.jp/otahukuhukuhuku/
アマゾン、全国の書店、世界遺産・京都東寺等で販売。
カラーセラピストとしても全国で活動中。
旅人のような暮らしの中で、さまざまな神社仏閣を訪ね、祈り、地元の人々と触れ合い、ワインを楽しむ。