禅語で豊かな人生を(後編)~心美人のすすめ~『四季に寄り添い、祈るように暮らす(連載第三十七回)』

2020.1.17

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三浦奈々依 ( フリーアナウンサー )

フリーアナウンサー・神社仏閣ライター・カラーセラピスト。
ラジオ番組にて20年以上にわたり、音楽番組を担当。東日本大震災後、雑誌Kappoにて約7年にわたり連載「神様散歩」を執筆。『福を呼ぶ 四季みくじ』出版。カラーセラピストとしても全国で活動中。

 

この時季の季語に「深雪晴れ(みゆきばれ)」という言葉があります。

雪のやんだ翌日はからりと晴れ、暖かくなるといわれています。深雪晴れは、そんな晴れの日を表す言葉です。

故郷で深雪晴れの美しい朝、甥っ子とシャボン玉を飛ばして遊びました。

すべてがきらきらと輝く光の世界。

感動しました。

さて、「禅語で豊かな人生を」後編。今回も、私の心に残る禅語をご紹介したいと思います。

禅語とは仏教の名句、中国の詩句の総称。あくまで私なりの解釈になりますが、禅語との出合いによって、私自身、生きることが楽になり、新たな視点が生まれました。

皆さんにとって、心に響く禅語はあるでしょうか。

 

雪月花(せつげっか)


大好きな禅語です。

かの川端康成がノーベル文学賞の受賞記念講演で、白楽天の「雪月花の時 最も君を憶(おも)う」という詩の一行を引用しました。

~雪、月、花、四季折々の美しさにめぐりあう時、ともに詩を詠じた君のことを思い出す~

美しいものに触れ、琴や詩や酒を一緒に楽しんだ友が切に思われ、この美しさを共に分かち合いたいと願う。だが、心に浮かべた友は今では消息もわからない。

白楽天が54歳の頃に詠んだ詩です。

しんしんと音もなく降る雪。闇夜に輝く月。

まるで微笑むようにほころび、時が来れば散っていく花々。

雪月花」は四季折々の美しさの総称。

白楽天の詩は少し切ないですが、自然の美しさも、美しいと感じる心、ゆとりがなければ、ただ目の前を通り過ぎていくだけ。

美しいものを見て、美しいと感じる心。

美しいものを見て、「あの人にも見せてあげたい」「この美しさを分かち合いたい」と、誰かを思う心を大切に生きていきたいものです。

 

日日是好日(にちにちこれこうじつ)

黒木華さん、樹木希林さん共演の映画のタイトルにもなった禅語。

雨の日は雨を聞く。雪の日は雪を見て、夏には夏の暑さを、冬は身の切れるような寒さを。五感を使って、全身で、その瞬間を味わう……

静かなお茶室で繰り広げられる物語。心に染み入る映画でした。

若かりし頃は、日日是好日、「一日一日が、よい日だ」と聞いて、「そんなこと言っても、最悪な日もあるよね」と、思った私。

生きていれば、晴ればかりじゃなく、雨の日も、風の日も、はたまた嵐の日もありますね。

それでも、この禅語を残した中国唐代の僧侶、雲門文偃(うんもんぶんえん)曰く、一日一日それぞれが、「日日是好日」。

よい日という言葉の解釈は、人それぞれだと思います。

私は、一日一日がかけがえのない日、愛おしい日、という意味でとらえています。

私事ですが、余命宣告をされた父、妹と過ごした病室での日々を振り返ってみると、精神的に苦しかったですが、一日一日が私にとってかけがえのない時間、愛すべき「日日是好日」でした。

あの時間の中で感じたこと、生まれた思いは、今も私にとってかけがえのない宝物です。

 

草衣心似月(そうえのこころはつきににたり)

草の衣とは、質素、また粗末な身なりのたとえ。

草衣心似月」とは、草で編んだような粗末な身なりをしているが、その心は美しい月の如く澄んでいるという意味。

石井ゆかりさんが著書「zengo」で書いていらした解釈が、私にはいちばんしっくりきます。

要約しますと……

刻々とそのかたちを変えていく月のように、人の心も日々、さまざまに変化するけれど、もともと具わっている「仏性」は変化しない。

僧としての階級が上になればなるほど、立派な衣装を身に着けるようになる。

すばらしい衣装、肩書を、多くの人が欲しがり、それを得た人は、失うことを恐れる。

また、他の人と自分を比べて、劣等感に苦しむこともある。

一方、草衣をまとっている人は、何も失うものがない。

故に、喪失という変化を恐れることなく、また、何かにしがみつくことなく、自分の心を自然に変化に任せることが出来る。その真の姿は澄んでいて、決して欠けることがない。

石井ゆかりさんの「zengo」を読みながら、以前、世界遺産京都東寺を取材した際、伺ったことを思い出しました。

「私たちは本来、仏なのである」という空海の言葉。

仏ではあるが、現実世界でさまざまな迷いを持ち、絶えず心が揺れ動く。そのせめぎあいの中で、心眼を開き、仏の目で見ると、すべてのものの存在の尊さがわかる。

今ここにいる自分こそが、本来仏である自分なのだと、空海は私たちに伝えている、と。

絶えず、満ち欠けを繰り返す月のように、私たちも何かにしがみつくことなく、変化を恐れず、今ここにいる自分をありのまま受け入れ、自由な心で生きていくことが出来たらどんなによいでしょう。

何かに心がとらわれ、苦しくなった時。

ふと、思い出す言葉です。

ぜひ、心が迷った時、疲れた時、禅語に触れてみて下さい。

きっと、大切なことに気づかせてくれる素敵な言葉との出合いがあるはずです。

禅語で目指しましょう。心美人。

 

参考文献:石井ゆかり『zengo』

三浦奈々依 のプロフィール

三浦奈々依

フリーアナウンサー・神社仏閣ライター・カラーセラピスト。

ラジオ番組にて20年以上にわたり、音楽番組を担当。

東日本大震災後、雑誌Kappoにて約7年にわたり「神様散歩」の連載を執筆。心の復興をテーマに、神社仏閣を取材。

全国の神社仏閣の歴史を紹介しながら、日本の文化、祈りの心を伝えている。

被災した神社仏閣再建の一助となる、四季の言の葉集「福を呼ぶ 四季みくじ」執筆。


http://ameblo.jp/otahukuhukuhuku/
アマゾン、全国の書店、世界遺産・京都東寺等で販売。


カラーセラピストとしても全国で活動中。
旅人のような暮らしの中で、さまざまな神社仏閣を訪ね、祈り、地元の人々と触れ合い、ワインを楽しむ。

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