2020.1.31
魔物退散!春の誕生日「立春」に福を呼ぶ 『四季に寄り添い、祈るように暮らす(連載第三十九回)』

まもなく立春。
江戸時代の暦の解説書『暦便覧(こよみべんらん)』によると、立春とは「春の気たつをもってなり」と記されています。
これは菅原道真公の有名な和歌ですが、ちょうど2月4日~8日は七十二候の第一侯「東風解凍(はるかぜこおりをとく)」。春を呼ぶ風が氷をとかす時季とされ、九州や太平洋側の地方では梅が咲き始め、春の気配が感じられるようになりますね。
私は梅の花が大好きで、梅の花の香水をいくつか持っています。
金箔の美、伝統の技を伝承する金沢HAKUZAの「オードトワレ 紅い梅の香り」は香水とオーデコロンの中間の濃度で、香りをまとえば、心に春が広がりますよ。
立春から、暦の上ではもう春。今日は立春にまつわるお話を。
魔物退散のお札、しあわせの春を呼ぶお守り、トイレのふくのかみ等々……。
魔物には退散していただき、人生に福を招きましょう。
春の誕生日
「立春」とは二十四節気の春の始まりの日。言うなれば、春の誕生日です。
2020年の立春は2月4日。春とはいえ、実際の気候では、最も寒さが厳しい時季。
どうして、そんな時季に春が生まれるのでしょうか。
それは、古代中国の陰陽五行思想「陽極まって陰に転じ、陰極まって陽に転ず」という考え方に由来します。寒さも極まると、暖かさに転じるというわけですね。
節分
立春を翌日に控えた2月3日は節分です。
「節分」とは本来、四季それぞれの変わり目を指す言葉で、かつては立春だけでなく、立夏や立秋、立冬の前日すべてに節分の行事があったと知り、驚きました。
もともと節分は、「追儺(ついな)」という名称で日本の宮中行事にもなっていました。
季節の境目、季節を分ける日というのはどうもバランスが悪く、魔物も入ってきやすいとされ、「魔物を滅ぼす=魔滅(まめつ)」から転じて豆が、そして「魔物の目を射る」と「炒る」をかけて、炒った豆をまいて厄祓いをしたそうです。
先日、九州福岡の住吉神社を参拝。
注連縄を巻いた棒に、さかき、すすき、さるすべりが添えられた疫塚(えきづか)で、自分自身にひそむ邪悪な心、鬼の退散を願い、「鬼は外、福は内」と唱えながら、豆をまいてきました。
心穏やかに春を迎えるために、今年も是非、豆まきを。
おっちょこちょいな鬼 魔物退散のお札
立春の早朝、禅寺などでは入り口に、「立春大吉」と書かれたお札を貼る習慣があります。
この四文字。縦書きにすると、表から見ても、裏から見ても、立春大吉。
また、すべての文字が左右対称になることから、魔物の侵入を防ぐ力があると言い伝えられています。
皆さんは、立春大吉のお札にまつわるおもしろ話をご存知ですか?
悪さをしようと、ある家を訪れた鬼。
家に入りこもうとした時、玄関に貼ってある立春大吉のお札が目にとまりました。
門をくぐり、振り返ると、同じように、立春大吉と書かれたお札があるではないですか。
「なんだ、この家にはまだ入っていなかったな」と思い込んだ鬼は、逆戻りして、家を出て行ってしまいました。
裏からお札の文字を見て、勘違いをした鬼。
おっちょこちょいな鬼に笑ってしまいますが、立春大吉のお札を貼っていると、一年間、平穏無事に過ごすことが出来ると言われています。
今年は、ご自分で縁起物のお札を作ってみませんか?
紙のサイズに特に決まりはありません。習字道具、もしくは筆ペンを使って、「立春大吉」と書くだけ。金箔などがあしらわれた縦長の和紙に、白い半紙を貼るなどの工夫をすれば、オリジナルのお札になりますね。
大切なのは、心を込めて文字を書くことです。
お子さんがいらっしゃれば、家族のお守りをお子さんに書いてもらうのもいいですね。
一陽来復
2月3日の節分まで、東京都早稲田に鎮座する「穴八幡宮(あなはちまんぐう)」で特別なお守りが授与されています。
私は2年連続で神社を訪れましたが、土日は長蛇の列。お守りを授与していただくためには、ある程度の覚悟が必要です。
地元の人に「穴八幡」と呼ばれ親しまれている神社で、昔も今も変わることなく、人々がこぞって求めているのが「一陽来復(いちようらいふく)」のお守り。
一陽来復には「陽極まって陰に転じ、陰極まって陽に転ず」。「しあわせの春を迎えましょう」という願いが込められています。
縁起がよい春財布
皆さんは、立春に財布を新調すると縁起が良いという話を聞いたことはありませんか?
風水の世界で、財布を新調するのに良いとされる季節は春と秋。
春財布は春が「張る」を意味し、お財布が膨れるくらいお金が入ってくるとされ、秋財布は、実りの季節にかけて「実り財布」と呼ばれるそうです。
ちなみに財布ですが、キャッシュレス時代の波に乗って、よりコンパクトなものを求める方が増えているそうです。ミニ財布よりさらにコンパクトなフラグメントケースを愛用する方も。
この、フラグメントケース。外側にカードスロットが搭載され、とにかく薄い。お尻のポケットにすっきり収まります。
私は時代の波に乗ることなく、立春に長財布を新調する予定です。
また、財布を新調しなくても、立春に向けて、日頃使っている財布をきれいに磨いてあげましょう。
八百万の神が住まう国、日本
私が執筆した『福を呼ぶ 四季みくじ』には、「八百万の神が住まう国、日本。あなたが手にしているすべてのものに命がある」というメッセージが込められた、「針祭る」というカードがあります。
日本では古来より自然はもちろんのこと、身近にあるものすべてに神が宿ると信じられてきました。昔の人たちは、古くなり、役に立たなくなったものにさえ、「ありがとう」「おかげさま」の気持ちを大切に生きていたのです。
自分の手元に入ってくるお金に感謝の気持ちを込めて、財布もきれいに磨いてあげましょう。
合皮の財布なら、黒ずんだ箇所を消しゴムを使ってやさしく擦りましょう。
ただし、強く擦りすぎると生地を傷めてしまいますので、注意が必要です。
頑固な黒ずみは、中性洗剤を吹きかけて、きつく絞った布で拭きます。
革の財布であれば、革専用のクリームを使って磨くのがベストですが、軽めの黒ずみならお酢と亜麻仁油を使っても綺麗に汚れをオフすることが出来ます。
カップに、酢と亜麻仁油を大さじ一杯づづ入れてよく混ぜます。あとは、コットンに含ませ、革の表面を優しく拭きます。最後に乾いた布で磨きましょう。
革の種類も様々ありますので、まずは目立たない箇所でお試しくださいね。
愛情と敬意を持って接したものには、愛情という名の神様が宿ります。
粗末にした財布には、貧乏神が宿るかもしれません。
先日、遠刈田(宮城県)の温泉街で、『ふくのかみ』という赤いだるま柄のトイレットペーパーを購入しました。倉敷を拠点に活動する雑貨メーカーの商品。白檀の香りつきです。なんとも良い香りにうっとり。
店主の話では「このトイレットペーパーを一年間、トイレの中に飾り、不浄に触れた時はトイレットペーパーを使い、祓い清める。もし、何事もなく一年を終えることが出来たら、お守りとして飾ったトイレットペーパーを感謝の気持ちを込めて使い切って下さい」ということでしたが、立春、きれいなトイレにだるま柄のトイレットペーパーを飾ったら、なんだか福がやってきそうで、ワクワクしています。
今年の春の誕生日。
しあわせも一緒に生まれますように……
参考文献
山下景子『二十四節気と七十二候の季節手帖』
観瀾斎『福を呼ぶ 四季みくじ』
三浦奈々依 のプロフィール

フリーアナウンサー・神社仏閣ライター・カラーセラピスト。
ラジオ番組にて20年以上にわたり、音楽番組を担当。
東日本大震災後、雑誌Kappoにて約7年にわたり「神様散歩」の連載を執筆。心の復興をテーマに、神社仏閣を取材。
全国の神社仏閣の歴史を紹介しながら、日本の文化、祈りの心を伝えている。
被災した神社仏閣再建の一助となる、四季の言の葉集「福を呼ぶ 四季みくじ」執筆。
→ http://ameblo.jp/otahukuhukuhuku/
アマゾン、全国の書店、世界遺産・京都東寺等で販売。
カラーセラピストとしても全国で活動中。
旅人のような暮らしの中で、さまざまな神社仏閣を訪ね、祈り、地元の人々と触れ合い、ワインを楽しむ。