2020.4.10
ハワイ 虹の伝説 ~春の虹~ 『四季に寄り添い、祈るように暮らす(連載第四十七回)』

まもなく、空に虹がお目見えする時季です。
私は幼い頃から虹を探すクセがあり、レインボーステートと呼ばれるハワイを旅した時、空ばかり見ていて、母と妹に笑われました。
SNSで虹の写真を見かけると、その喜びはみんな一緒なんだなと思って嬉しくなります。
虹は、異なるふたつの世界をつなぐかけ橋。ハワイでは、天国へ旅立ったご先祖様が子孫の様子を見るため、虹の橋を渡ってやってくると信じられているそうです。
ですが、その昔、「ハワイに虹はなかった」と言ったら驚きませんか?
虹のないハワイなんて、今では想像もつきませんね。
今日は、第十五候「虹始見(にじはじめてあらわる)」、悲しみを癒す虹の詩、ハワイ語の虹の呼び名、ハワイの虹の伝説をご紹介しましょう。
虹尽くしなひとときを皆さまへ……
しあわせを運ぶ「春の虹」
私が執筆した『福を呼ぶ 四季みくじ』に、「春の虹」というカードがあります。
四季みくじは、お家で毎日楽しめるデイリーおみくじ。朝起きた時、心が迷った時、何かアドバイスが欲しいと思った時にカードを引いて、メッセージを受けとるというものですが、「春の虹」はしあわせの吉カード。
春の虹は淡く、あっという間に消えてしまう。
でも、空に虹を見つけた瞬間、心が浮き足たつような、華やかな空気があなたを取り巻いている。
なんとなく気になる、面白そう、行ってみたい、やってみたい。
私たちを行動へとかりたてるのは、そんな漠然とした期待感。
あとは、一歩踏み出すか否かで、人生は大きく変わる……
このカードは、幸せの予感に満ちています。
「思い立ったら即行動!直感のままに動いた先で、思わぬ収穫がありそう」と告げる吉兆カードです。
その年の春、いちばん最初に見た虹が「初虹」。
第十五候「虹始見(にじはじめてあらわる)」は、時季でいえば新暦の4月15日~4月19日頃とされますが、東北の皆さんにとって今年の初虹は3月11日だったという人が多いかもしれません。
東日本大震災から丸9年が経った2020年3月11日の午後2時46分過ぎ。
東北各地に大きな虹がかかりました。
宮城県名取市の震災メモリアル公園の上空にかかる虹を見上げた女性が、震災で亡くなった犠牲者を思い、「虹を渡ってきてくれたんだね」とつぶやいたそうです。
あの日の虹はギフトだったと信じています。
いつか大切な人と渡る「虹の橋」
皆さんは、「虹の橋」という詩をご存知ですか?
大切なペットとのお別れを書いた散文詩は、またたく間に世界中に広がりました。
ペットのみならず、大切な人を失ったすべての人の心に寄り添ってくれる詩です。
動物たちはお別れの時が来ると、天国のほんの少し手前にある「虹の橋」に行きます。
病気を患った子も、ケガをした子も、年老いた子も、そこでは若さと健康を取り戻し、草原を元気に走り回っています。
仲間と楽しく、幸せに暮らしていますが、ひとつだけ心残りがあります。
それは、さようならを言わなければならなかった大切な人のこと。
でも、その日は必ずやってきます。
突然、ひとりの子が立ち止まって遠くを見つめたかと思うと、目を輝かせ、嬉しさに体を震わせ、突然、飛ぶように駆けていく……
草原を歩いてくる人影こそ、ずっと会いたいと願っていた大切な人。
再び出会えたふたりは、虹の橋をいっしょに渡って天国へ行くのです。
亡くなった動物たちは、飼い主が人生を終えて天へ召される日まで虹の橋で待っている。
そして、その日が来たら一緒に虹の橋を渡って天国へ向かう。
作者は不明ですが、きっと、一緒に生きてきた小さな命を失った悲しみと変わらぬ愛を胸に、詩をしたためたのでしょう。
美しい虹の呼び名
ハワイの人たちにとって、虹はとても身近な存在です。
私は、マウイに暮らす親友から送られてくる虹の写真にいつも心癒されています。
旅行作家、コラムニストの山下マヌーさんの著書『色で旅するハワイ』は私の愛読書。
その本で、レインボーツリーの存在を知りました。ハワイではなんと、木まで虹色!レインボーツリーの正式名称はペインテッドガムツリー。ユーカリの仲間で、各島で見られるそうです。
色とりどりのプルメリアも虹のよう。
虹はハワイ語で「アーヌエヌエ」。
ハワイでは虹の出方で、呼び名も変わるんですよ。
淡い色の虹は「プナケア」
太陽の周りに出る幻想的な虹(ハロ)は「ルアホアナ」
地面の近くに出る低い虹は「ウアココ」
ムーンボウ(月虹)は「アーヌエヌエ・カウ・ポー」
まっすぐ上に向かって伸びる虹は「カーヒリ」
ウアココには「虹色の雨」という素敵な意味もあるそうです。
さすがハワイですね!虹の数だけ呼び名があることに感動しました。
それにしても、ハワイ語の響きはまるで呪文のようだと思いませんか?
ハワイ語は、ハワイ諸島の先住民であるポリネシア人により使用され、言葉ひとつひとつに魂が宿っていると信じられていました。
かつてハワイ語が禁じられていた時代もあり、ハワイ語を話せる人が年々減少しているのが現実。
そこで、ハワイ語を守っていくことを目的として、1987年、ハワイ州は学校でのハワイ語教育の取り組みに着手しました。
私の友人の娘マナちゃんは、小学校の門をくぐったら、すべてハワイ語という学校に通っています。
ハワイアンの魂を学んだ子どもたちは、過去と現在、未来をつなぐかけ橋となるでしょう。
空に虹を見かけたら、虹の名をハワイ語で呼んでみませんか?
あなたの毎日に幸せの魔法がかかるかもしれません。
ハワイに伝わる虹の伝説
その昔、ハワイには虹がなく、雨が降るといつも、どんよりとした鈍色の空が広がっていました。
カウアイ島の森に住む妖精メネフネが、空に明るい虹を輝かせようと思い、材料を探す旅に出たのです。
見つけたのは、バナナ(黄色)、海の水(青)、山のシダ(緑)、王家の羽(赤)、イリマの花(橙)、女王のドレス(紫)でした。
友達のカフナ(神官)がこの6色を混ぜて、そのしずくを矢に付けて空に放つと、見事、空に美しい虹が輝きました。
ハワイアンソングでも歌われるこの伝説から、ハワイの虹は、黄、青、緑、赤、橙、紫の6色になったそうです。
奇跡の虹
昨年の10月22日に行われた「即位礼正殿の儀」。
当日、都内はあいにくの雨でしたが、儀式の直前に雨がやみ、空に大きな虹がかかりました。しかも、虹だけでなく、美しい富士山も姿を現しました。
この夢のような景色は祝福のメッセージとともにSNSでシェアされ、メディアでも大きく取り上げられましたね。
「即位礼正殿の儀」、祈りの日である3月11日と、多くの人たちが空にかかる美しい虹を分かち合ったことに深い意味がある気がします。
ハワイのことわざ、「No Rain No Rainbow」。
~雨が降らなければ、虹を見ることは出来ない~
辛いことがあった時、ハワイの人たちは「No Rain No Rainbow」と声を掛け合います。
涙を流すような出来事のあとには、良いことが待っている。
この混乱と悲しみを乗り越えたら、未来にきっと幸せの虹がかかる。
そう願って……
No Rain No Rainbow!
参考文献
山下マヌー『色で旅するハワイ』
株式会社プレスアート『福を呼ぶ 四季みくじ』
三浦奈々依 のプロフィール

フリーアナウンサー・神社仏閣ライター・カラーセラピスト。
ラジオ番組にて20年以上にわたり、音楽番組を担当。
東日本大震災後、雑誌Kappoにて約7年にわたり「神様散歩」の連載を執筆。心の復興をテーマに、神社仏閣を取材。
全国の神社仏閣の歴史を紹介しながら、日本の文化、祈りの心を伝えている。
被災した神社仏閣再建の一助となる、四季の言の葉集「福を呼ぶ 四季みくじ」執筆。
→ http://ameblo.jp/otahukuhukuhuku/
アマゾン、全国の書店、世界遺産・京都東寺等で販売。
カラーセラピストとしても全国で活動中。
旅人のような暮らしの中で、さまざまな神社仏閣を訪ね、祈り、地元の人々と触れ合い、ワインを楽しむ。