~さようなら、夏の日~ 今味わいたい四季の言の葉 『四季に寄り添い、祈るように暮らす(連載第六十二回)』

2020.8.28

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三浦奈々依 ( フリーアナウンサー )

フリーアナウンサー・神社仏閣ライター・カラーセラピスト。
ラジオ番組にて20年以上にわたり、音楽番組を担当。東日本大震災後、雑誌Kappoにて約7年にわたり連載「神様散歩」を執筆。『福を呼ぶ 四季みくじ』出版。カラーセラピストとしても全国で活動中。

処暑も過ぎて、暑さもおさまる頃といわれていますが、まだまだ暑い日が続きそうですね。

でも、空を見上げれば行き合いの空(ゆきあいのそら)。

夏の雲と秋の雲が出合い、壮大なドラマが繰り広げられています。

2020年の夏も、もう終わり……

今日は夏の終わりにぴったりな、美しい言の葉をお届けしましょう。

 

晩夏光(ばんかこう)

晩夏光とは、ゆく夏の背中を見送る今時季の日の光のこと。

広島で被爆した作家・原民喜(はらたみき)の小説『苦しく美しき夏』の一節。

彼は晩夏のうっとりとした光線にみとれて、口ずさんだ。
夏はまだいたるところに美しく燃えたぎっているようであった。

口ずさんだ言葉は、「燃えて行った夏、燃えて行った夏……」。

亡き妻をしのんで書かれた小説。夏の終わりの情景がありありと目に浮かびますね。

原民喜は代表作『夏の花』刊行から約2年後、十七通の遺書を残し、自らの命を絶ちました。

晩夏光という言葉に紅葉の最後のひと燃えにも似た美しさと、哀愁を感じるのは私だけでしょうか。

 

秋の声

秋の気配を知らせる音。水の音、風の音……

それは心の耳を澄ませなければ聴こえない、自然の声なき声かもしれません。

今年は新型コロナウィルス感染拡大の影響で自粛生活を余儀なくされ、自然の声に耳を澄ます余裕などなかったかもしれません。

この夏の終わり、深呼吸ならぬ、心呼吸をして、自然の声に心の耳を澄ませてみませんか?

どこからか秋の声が聴こえてくるかもしれません。

 

遠音(とおね)

言葉の通り、遠くから、また、遠くまで聴こえる音。

「遠音」というと、皆さんはどんな音をイメージしますか?

私は花火の音を思います。

「ヒュ~」という音で夜空に火の花が咲き、「ドン」と音を立てて火の花が散る。

花火を見上げる人は皆、しあわせそうな顔をしていますね。

さて、花火は一年中打ち上げられますが、「花火」といえば、実は、初秋の季語。

ですが、線香花火などの手花火は晩夏の季語なんですよ。

面白いですね。

今年は新型コロナウィルス感染拡大の影響で夏祭り、花火大会が相次いで中止になっていますが、代わりに線香花火が売れているそうです。

私も、友人と線香花火をしました。

筒井時正シリーズ「花」。

職人さんが1本1本手作業で撚っている花火は、手の中でパチパチとやさしい音を奏でながら小さな花を咲かせます。数年前に友人からプレゼントされ、毎年お取り寄せを。

手花火が奏でる音は遠音ではなく、近音ですね(笑)。

花火の音は疲れた心をやさしく癒してくれます。

 

空蝉(うつせみ)

蝉のぬけ殻のこと。「半夏虫(はんげむし)ともいいます。

もともと空蝉は、「現身」と書き、私たちが生きているこの世、生身の人間をさしましたが、後に、「空身」、魂のぬけ殻という反対の意味に転じました。

いにしえの人は、命の儚さ、世の中の無常を空蝉に重ねたのかもしれません。

光源氏と女性たちの恋と苦悩の生涯を描いた王朝浪漫『源氏物語』には、空蝉と呼ばれる女性が登場します。

光源氏と一夜を共にしながらも、羽化して飛び立った蝉の如く薄衣だけ残し、光源氏のもとを去った女性。 光源氏はその薄衣を持ち帰り、~残された殻にあなたを思って、なつかしむ~という歌を詠み、その女性は空蝉と呼ばれるようになりました。

夏の終わりの言の葉たちには、どこか物悲しさが漂いますね。

ゆく夏を美しい言の葉で見送りましょう。

三浦奈々依 のプロフィール

三浦奈々依

フリーアナウンサー・神社仏閣ライター・カラーセラピスト。

ラジオ番組にて20年以上にわたり、音楽番組を担当。

東日本大震災後、雑誌Kappoにて約7年にわたり「神様散歩」の連載を執筆。心の復興をテーマに、神社仏閣を取材。

全国の神社仏閣の歴史を紹介しながら、日本の文化、祈りの心を伝えている。

被災した神社仏閣再建の一助となる、四季の言の葉集「福を呼ぶ 四季みくじ」執筆。


http://ameblo.jp/otahukuhukuhuku/
アマゾン、全国の書店、世界遺産・京都東寺等で販売。


カラーセラピストとしても全国で活動中。
旅人のような暮らしの中で、さまざまな神社仏閣を訪ね、祈り、地元の人々と触れ合い、ワインを楽しむ。

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