2020.11.2
シナモンティーとお香で不調を改善!『香りと暮らし、和をたしなむ(連載第九回)』

秋晴れの夕方。
移動中の車内から綴っています。
澄んだ空にくっきり浮かんだ三日月が、車窓を追いかけどこまでもついて来ます。
香司の多田晴美です
今回はお香を身近に感じて頂きたいと、アロマセラピーの精油やハーブティーとの共通点をおりまぜてお話しします。
樹木の香り
あなたにはお気に入りの香りがありますか?
今思えば私は、まだ香りについて勉強する前から白檀の香りに心惹かれ、三角形のインセンスを購入して焚いてみたり、引き出しに忍ばせたりしていました。
アロマセラピーの受講でサンダルウッド「精油」の試香を初めてしました。
サンダルウッドは、白檀を水蒸気蒸留して得られます。それを知ったときは共通性にとても感激したのを覚えています。
精油はハーブ系やお花系だけでなく、樹木やスパイス系のものも多くあります。樹木系に白檀やシナモンなどが含まれ、香原料と共通の種類があります。
形状(お香は固形、精油は液体)がちがうのに、共通する香りというところも興味深い点でした。
西洋では蒸留技術により香りの液体文化が発展し、東洋では仏教に香として用いられたことが関連しています。
日本では生育しないものがあるのも大陸からはいってきたことによります。お香は一種のみを使う他、数種を調合して作るものがあります。
よく知らない方でも、もっとも親しみやすい香料がシナモンの仲間の「桂皮(けいひ)」です。
桂は「良い香り」の意味で、皮は樹皮をさします。食品を通じて馴染みがあるシナモンは、親戚筋にあたります。
桂皮はカシア(cassia)といい、中国、ベトナム、インドネシア、中央アメリカ、ミャンマーで生産されます。シナモンは主にスリランカが生産国で、相互に世界中で親しまれるスパイスです。
料理、薬用、香り(お香、ポプリ、ティー、スィーツやお酒)に使われています。
最近ではパンやスィーツにもよく使われているため、子供もよく知っている、馴染みある香りのようです。
講座中によく「この香りは甘い感じがしますか?」、「辛い感じがしますか?」とたずねます。
すると子供から若い世代は「甘い」と回答し、シニア世代の方は「辛い」と回答することが圧倒的に多いのです。
その理由は「経験」です。
若い世代はスィーツ、パン、飲み物にアクセントとして含まれており、甘いもののイメージなのです。しかし、それより年齢の高い方は「ニッキ」、「ニッケ」といい、日本で育つ同じクスノキ科の植物である「肉桂」を知っているからです。
日本の肉桂は根を使います(現在は少なく希少です)。これを掘り起こして「おやつ」にしていた世代は、辛いという印象に行きつくのです。
厳密には品種の違いもありますが、かなり印象は違うようです。香りの認識はダイレクトに脳に伝わり、快、不快を判断することができます。
また、経験の記憶や認識が香りにより呼び起こされます。私は「香りは記憶の扉をノックしますよ」とお伝えしています。眠っていたことがハッとするくらい鮮明なこともあります。
香りと記憶の結びつきは日常でもよく起こることです。
寒い日にシナモンティー
少しずつ寒いなと感じる日がふえてまいりましたので、シナモンティーはいかがでしょう。
カプチーノにシナモンパウダーもいいですね。
シナモンには血液の循環を高める働きがあるので、冷えや風邪の症状にも役立ちます。
また、消化機能の働きを良くしたり、吐き気やお腹の張りにも効果的です。「芳香性健胃薬」でもあり、ケイヒ末として市販の胃腸薬にも含まれます。
血糖調整作用も注目したいところです。
スィーツや料理へ使うことで甘さをより感じさせる働きがあるため、減糖、その他の調味料を控えるのにも役立ちそうですね。
食べ物メインになると、香りも途端に身近な印象へ傾きます。
気軽に焚けるインセンスつくり
今のシーズンは、夏の疲れを感じたり、季節性の感情障害(物悲しい)、新型コロナウィルス対策によって強いられる「ウィズコロナ」下での不安やストレスが、不調に結びつく要因になる方もいらっしゃるのではと考えます。
先日、お香講座を開講しました。担当者さんから、「多くの皆さんに、香りで元気になってもらいたい」とのご依頼をいただき、実現した企画でした。
この講座では皆さんで、三角形のコーン型お香(インセンス)作りをしました。
使う材料の香りの紹介から始まった講座。製作中も室内にお香の香りが漂っています。香りばかりではなく、手作業で形成するので "手触り" も心地よいのです。
マスクは基本的には着用のままでしたが、自宅で乾燥させる時間も火をつけて焚く時間も、良い香りであれば自然とマスクをすることによって浅くなりがちな呼吸も深くなります。
そうしたことで、ストレスの軽減、不安感がなくなる、不眠の解消、物悲しさがなくなるなどの助けになればいいなと思います。
speciesな植物の恵み
スパイスという言葉はラテン語で「特別な種類」という「species」からきています。
昔は大変高価で箱に鍵をかけてまで保管したほどでした。薬、防腐、香料として珍重された時代から考えると、スーパーの調味料のコーナーにずらりと小瓶が並んでいるなんてびっくりですよね。
最上のもの(スパイス)を神に捧げたいという供香、庶民が気軽に使えるようになるのは17世紀くらいからです。
昔の人が知ったら驚きだろうなと想像しつつ食事やお茶の時間、リラックスタイムに香りを愉しんでください。
注意事項
シナモンには食品扱いのものと、クラフト用など雑貨扱いのものがあります。飲用、飲食の購入の際はご確認を。また、シナモンにアレルギー症状のある方はご注意下さい。
多田博之・晴美 のプロフィール

【多田博之】
FOUATONS aroma&herb・お香school 主宰
薫物屋香楽認定教授香司
歯科医師
宮崎市にて21年間開業医として地域医療に携わる。偶然に出会ったお香の魅力に惹かれ、平日は診療、週末は東京にてお香の勉強を繰り返したのち、50歳の時に閉院しお香の活動に専念する。
現在、福岡と宮崎の教室を拠点に、NHK文化センターの講師として、九州各地と広島県にて天然香料にこだわったお香教室を開催。また香木の香りの素晴らしさや香道の魅力を伝えてたいと思い、御家流香道の研鑽を積んでいる。
平安期のお香の使われ方を勉強するなかで、紫式部の「源氏物語」に興味をもち、講座では、香道や源氏物語の視点も交えて伝える。
また、薫物屋香楽認定教授香司として、香の知識や技能をさらに深め、和の香り文化とお香づくりのスペシャリスト(香司)の育成に努めている。
【多田晴美】
FOUATONS aroma&herb・お香school
華結び組乃香 主宰
薫物屋香楽(たきものやからく)認定香司
アロマインストラクター、ハーバルセラピストを経て「香司(こうし)」として 香りの楽しみ方や使い方を紹介。
ハーブのもつフィトケミカル成分が、健康や美容など様々なジャンルで注目され、特にスパイス系ハーブは生薬との共通性があり、大陸から伝わったとされる「お香」の 香原料ともなっている。
日本の歴史や習慣に深く関わり、人々の心を癒してきた文化としての「香り」を「和」の心とともに普及する活動を福岡県や、宮崎県を基盤に全国で展開。
趣味と実益をかねて日本三芸道の一つ「香道(御家流)」や、室内を飾る「飾り結び」も研鑽中。 天然香料を使ったお香作りの講師として、メディアなどで香りの魅力と素晴らしさを発信している。
ホームページ→ https://www.fouatons.org/
Facebook→ https://www.facebook.com/miyazakifouatons/