2020.12.11
幸せは掃除から! ~正月事始めの12月13日~ 『四季に寄り添い、祈るように暮らす(連載第六十九回)』

今年はコロナウイルスによって、時間の流れがはやく感じている人が多いのではないでしょうか。気がつけば2020年もまもなく終わろうとしていますね。
時計メーカーのセイコーホールディングスが発表した調査結果によると、リモートワーカーの7割以上の人が「時間のメリハリがつけにくい」と回答し、さらに、リモートワークをしない人よりも時間の経過を早く感じる傾向にあったそうです。
確かに、テレワーク中心の生活は通勤していたときよりも生活にメリハリが少なく感じますよね。
また、静かな場所や狭い場所などにこもって作業をする場合、刺激の量が少なく、時間が短く感じられ、逆に、陽が燦々と射し込み、人の話し声がする明るいカフェにいるときなど、知覚する刺激の量が多いときには、時間が長く感じられると聞いて納得でした。
その他、自粛により身動きがとれず、特に心に残る出来事もなく、淡々と過ぎていく毎日を送っていると、一日を振り返ったときにとりたてて何も記憶に残らず、そのため、体感時間が短くなり、時間があっという間に過ぎてしまったように感じてしまうんだそうです。
その結果、あっという間に年をとってしまうと思ったら、ちょっと怖くなりました。
流れゆく季節の「気配」や「きざし」を感じて、昔ながらの時間を刻みましょう。
日本には旧暦で72もの豊かな季節があります。
「二十四節気」と「七十二候」。
こういう時だからこそ、原点に立ち返って自然が刻む時間に心を傾けてみませんか?
昨日より今日、今日より明日、幸せをより感じられるように。
冬ごもりの間に生まれる命
新暦の12月12日~16日は第六十二侯「熊蟄穴(くまあなにこもる)」の時季です。
栄養価の高いどんぐりや山ブドウを食べた熊は、穴にこもって飲まず食わずで冬ごもりに入ります。ほとんど身動きもせず、呼吸数も減少するそうですが、眠りも浅く、なんと熊はこの間に出産をするそうです。
目覚めの春を夢見て、花が咲き始める春には多くの熊がパパとママになっているんですね。
私の家には友だちからプレゼントされたtomotakeの泥染めの熊がいます。
泥染めとは、植物の五倍子から抽出されるタンニンで下染めをした布に、鉄分を含ませた泥を使って指で描いて染め付けられる染色のこと。
空気や光によって時間をかけて発色し、摩擦や時間の経過によって褪色し、刻々と変化していきます。家にきてかれこれ7年以上になるでしょうか。
物言わぬ熊は、まるで冬ごもり中のようで見ていてほっこりします。
年神様を迎えるための煤払い(すすはらい)は12月13日から
江戸時代、新年を迎えるために家中の煤を払う「正月事始め」の日は、12月13日だったそうです。
煤を払うというのは、家のけがれを払う清めのお掃除。
年神様を迎えるために、一年でたまった煤を払って清める「煤払い」には厄払いの意味もあります。
手伝うことができない幼い子どもや老人、病を患っている人は別室に籠る「煤籠り(すすごもり)」をしたり、「煤逃げ」といってよそへ行ったりしていたそうですよ。
正岡子規は「煤払や神も仏も草の上」という歌を詠んでいます。
煤払のときは神さまも仏さまもない。煤払いはまさに神仏混淆(こんこう)。
神さまと仏さまが一緒に、庭の草の上に置きっぱなしにされることもあったのでしょうね。
その様子を頭に浮かべると、なんとものどかだなと思います。
神棚や仏壇があるという皆さんは、ぜひそちらの部屋の煤払いから始め、新たな榊やお花を飾りましょう。
そして、13日からゆっくりと時間をかけて丁寧に家中の掃除をしませんか。
神さまへ唱える言葉
さて、神社へ行くと拝殿に祝詞が記されていることがあります。
「祓へ給ひ清め給へ 神ながら守り給ひ幸ひ給へ」
神さまに守護や幸せを祈るためにもまず、祓い清めが先に立つのです。
今年は12月13日に煤払いをはじめて、ゆっくりと湯につかりましょう。
ちなみに、煤払いのあと、その汚れを落とすためにお風呂に入ることを「煤湯」というそうです。
家中をきれいに掃除して、コロナウイルスで疲弊した心と体のけがれともサヨウナラ。
気分さっぱり、新しい年を迎えられますように・・・
三浦奈々依 のプロフィール

フリーアナウンサー・神社仏閣ライター・カラーセラピスト。
ラジオ番組にて20年以上にわたり、音楽番組を担当。
東日本大震災後、雑誌Kappoにて約7年にわたり「神様散歩」の連載を執筆。心の復興をテーマに、神社仏閣を取材。
全国の神社仏閣の歴史を紹介しながら、日本の文化、祈りの心を伝えている。
被災した神社仏閣再建の一助となる、四季の言の葉集「福を呼ぶ 四季みくじ」執筆。
→ http://ameblo.jp/otahukuhukuhuku/
アマゾン、全国の書店、世界遺産・京都東寺等で販売。
カラーセラピストとしても全国で活動中。
旅人のような暮らしの中で、さまざまな神社仏閣を訪ね、祈り、地元の人々と触れ合い、ワインを楽しむ。