2021.1.1
2021年に福を呼ぶ縁起物と幸せの呪文 『四季に寄り添い、祈るように暮らす(連載第七十回)』

皆さま、あけましておめでとうございます!
私たちが口にする「あけましておめでとうございます」という言葉は、無事に一年を乗り越え、年神様をお迎えできることが「非常に目出度い」という気持ちを言葉にしたもの。
新型コロナウイルス感染拡大により、当たり前のことなどないのだと気づかされた2020年。
新たな一年の始まりは、これまで以上に心を込めて新年のあいさつを交わしましょう。
今日は、お正月の本来の意味、2021年に福を呼ぶ縁起物と幸せの呪文をご紹介します。
おこもりのお正月
新年を祝うしきたりは、平安時代には行われていたといわれています。
室町時代より氏神さまへの新年の参拝が始まり、江戸時代後期に入ると一年の福徳を司る吉神さまがいる方角の神社をお参りする恵方参りなどが行われるようになりました。明治時代になると鉄道の発達により、遠方への初詣も盛んに行われるようになったのです。
そもそも、お正月というのは年神様(祖霊神)と歳徳神を迎えるため、みな家にこもり、静かに過ごすものだったそうです。
お正月にもご先祖様が帰ってくると信じられていたのですね。
以前、遠野の「早池峯(はやちね)神社」を取材した時のこと。
「亡くなった人は空の上に行ってしまうのではなく、山にのぼり、山の上から子孫の暮らしを眺めていると信じられているんですよ」と、宮司様に伺いました。
神社の背後にそびえる早池峰山。
その手前にある薬師岳の又一の滝は、亡くなった人が山へ至る入り口と考えられていたそうです。
生者が横切ることは決して許されません。
こういった話しは皆さんが暮らす街にも残されているのではないでしょうか。
民俗学の用語で「祖霊神(それいしん)」と呼びますが、この祖霊神こそ年神様の本来の姿です。
その年神様が訪れる目印が、門松。常磐木に神様が宿ると考えられていたことから、お正月に家の門に常盤木をお飾りしたのが門松の始まりといわれているんですよ。
2021年は本来のお正月の意味を考えて、帰ってきたご先祖様とお家で静かに語らう時間を大切にしませんか?
若水
新年の季語。元旦の朝、川や井戸から最初に汲んだ水のことをいいます。
昔の人は水を神聖なものとして敬い、命の再生を願って若水を汲んでいました。
若水には邪気を祓う力があると信じられていたのです。
水道水やミネラルウォーターであっても、「命をつなぐありがたい水」と感謝の心をもって飲めば、福を呼ぶ特別な水になると思います。
お正月はお水を飲むとき、幸せの呪文を唱えましょう。
「福くむ、徳くむ、幸いくむ!」
幸せの呪文の言霊で、お水がいつもより美味しく感じられるかもしれません。
良き初夢を見て2021年のしあわせを手に入れる
現代においては、正月二日に見る夢を「初夢」といいます。
日本では、お正月や節分に1年の運勢を占う風習があり、中でも、初夢が良いか悪いかで、大人も子どもたちも一喜一憂していたといいますから、「おたから~、おたから~」と声を上げながら、宝船の絵を売る「夢売り」がいたというのも納得です。
「是が非でも縁起の良い夢が見たい!」という江戸の人々の願いから生まれたビジネス。
夢売りが、家々に売り歩く宝船の絵には、こんな回文が記されていました。
実は、これ。前から読んでも後ろから読んでも同じ読み方ができる回文。
読み人知らずのこの歌の解釈には諸説ありますが、意味としては・・・
宝船が、波を越え進んでいく音の、なんと心地良い夢だろう ~
濁音がひとつもない回文は唱えてみるとなんとも心地よく、まさに明日、唱えていただきたい福を呼ぶ呪文です。
私のお気に入り、秋保の平賀こけし店の平賀輝幸さんの作品です。
2021年バージョンはもっとこけしがニコニコ顔で、カラフルになっていました。
この子を飾ると、お正月だな~と感じます。
皆さま、本年もよろしくお願いいたします。
参考文献
『お家で楽しむ デイリーおみくじ「福を呼ぶ 四季みくじ」』
三浦奈々依(文)、観瀾斎(絵)、栗原周玉(書):プレスアート(発行)
『日本の歳時記』小学館 編集委員/宇多喜代子、西村和子 、中原道夫、片山由美子、長谷川櫂
三浦奈々依 のプロフィール

フリーアナウンサー・神社仏閣ライター・カラーセラピスト。
ラジオ番組にて20年以上にわたり、音楽番組を担当。
東日本大震災後、雑誌Kappoにて約7年にわたり「神様散歩」の連載を執筆。心の復興をテーマに、神社仏閣を取材。
全国の神社仏閣の歴史を紹介しながら、日本の文化、祈りの心を伝えている。
被災した神社仏閣再建の一助となる、四季の言の葉集「福を呼ぶ 四季みくじ」執筆。
→ http://ameblo.jp/otahukuhukuhuku/
アマゾン、全国の書店、世界遺産・京都東寺等で販売。
カラーセラピストとしても全国で活動中。
旅人のような暮らしの中で、さまざまな神社仏閣を訪ね、祈り、地元の人々と触れ合い、ワインを楽しむ。