2022.1.31
勝ち運をもたらす、日本最初の舶来動物「鵲(カササギ)」『神々の意思を伝える動物たち 〜神使・眷属の世界(第五十回)』

「神使」「眷属」とは、神の意思(神意)を人々に伝える存在であり、本殿に恭しく祀られるご祭神に成り代わって、直接的に崇敬者、参拝者とコミュニケーションを取り、守護する存在。
またの名を「使わしめ」ともいいます。
『神々の意思を伝える動物たち 〜神使・眷属の世界』では、神の使いとしての動物だけでなく、神社仏閣に深い関わりのある動物や、架空の生物までをご紹介します。
動物を通して、神社仏閣の新たなる魅力に気付き、参拝時の楽しみとしていただけたら幸いです。
神使「鵲(カササギ)」

カササギ
「鵲(カササギ)」は体長約40cmほどの大きさで、肩から腹部にかけて白く、尾や羽の一部は濃青や濃緑、頭部から背中にかけては光沢のある黒い色をしています。
「カチカチ」と鳴くことから、日本の主な生息地、繁殖地である佐賀県では「カチガラス」とも呼ばれます。
佐賀県鳥栖市をホームとするサッカーチーム「サガン鳥栖」のシンボル、マスコットキャラクターは「ウィントス」の名がついた佐賀県の天然記念物でもあり、県鳥でもあるカササギです。
チームに「勝ち」をもたらす、「勝ちガラス」の語呂合わせが由来となっています。
「カラス」の名がつく通り、サギではなくカラス科の鳥です。
雑食性で、昆虫、ミミズやカエル、穀類や果実、木の実などを食べるほか、秋にはイナゴなどの害虫も食べることから益鳥とされて来ました。
10月の下旬頃になると巣作りのための営巣地を探し始め、12月から3月までにはクスノキ、ポプラといった樹高の高い木や、電柱などに球状の巣を作ります。

カササギの巣と、カササギ
北米やヨーロッパ、中央アジアなど、北半球のほぼ全域に分布するカササギですが、日本ではそのほとんどが佐賀平野に集中し、生息しています(他、福岡県筑後地方、長崎県、熊本県など)。
カササギは、古くから日本に生息する在来種ではないようです。
豊臣秀吉朝鮮出兵(1592-1593)の折、肥前佐賀藩主の鍋島直茂、筑後国柳川藩主の立花宗茂など九州の大名たちが朝鮮半島から日本へ持ち帰ったとする説があります。しかし、裏付けとなる文献がなく、はっきりとした由来は分かっていません。
カササギは七夕伝説で、牽牛(けんぎゅう)と織女(おりひめ)のために天の川に橋をかけたことで知られますが、この伝説が日本に伝わった当時、カササギは日本に生息しておらず、知る者はほとんどいませんでした。
以前、お届けした「神使・白鷺」に出て来る「鷺舞」の起源は七夕伝説のカササギでしたが、当時の人々は「カササギというくらいだから、サギの仲間であろう」と、白鷺をモチーフとしたという経緯があります。
日本にカササギが持ち込まれた最も古い記録は『日本書紀巻第廿二・推古天皇紀六年(598年)の条』にあります。
六年夏四月、難波吉士磐金、至自新羅而獻鵲二隻、乃俾養於難波社、因以巣枝而産之。秋八月己亥朔、新羅貢孔雀一隻。冬十月戊戌朔丁未、越國獻白鹿一頭。
『日本書紀巻第廿二』

鵲森宮(森ノ宮神社)
【カササギに所縁ある神社仏閣】
鵲森宮・森ノ宮神社(大阪市中央区)
参考文献
『神道辞典』国学院大学日本文化研究所(編)弘文堂
『神社のどうぶつ図鑑』茂木貞純(監修)二見書房
『お寺のどうぶつ図鑑』今井浄圓(監修)二見書房
『神様になった動物たち』戸部民生(著)だいわ文庫
『神使になった動物たち - 神使像図鑑』福田博通(著)新協出版社
久保多渓心 のプロフィール

画家の父、歌人の母のもと、福岡市博多区で生まれる。
バンド活動を経て、DJ、オーガナイザーとしてアート系イベント、音楽イベントなどを多数手掛ける傍ら、フリーライターとしても活動。
音楽雑誌でのアーティスト・インタビュー記事、書籍、フリーペーパー、WEBなどの媒体で政治、社会問題から、サブカルチャー、オカルトまで幅広いジャンルでコラムを執筆。
引きこもり、不登校、心の病など自身の経験を活かし「ピアカウンセリング」を主軸にしたコミュニティを立ち上げる。後にひきこもり支援相談士として当事者やその家族のサポート、相談活動にあたる。
現在は亡き父から継承した一子相伝の墨を用いた特殊な占術『篁霊祥命』や、独自のリーディングによって鑑定活動を行っている。2021年で鑑定活動は16年目を迎える。
月参り、寺社への参拝による開運術の指導なども行う。
『AGLA(アグラ)』スーパーバイザーを務める。
2020年10月より活動名をマーク・ケイより、久保多渓心に改名。