2019.6.21
祓いこそが、しあわせへの第一歩!「祓い」で、美しく生きよう 『四季に寄り添い、祈るように暮らす(連載第十回)』

6月30日は夏越の祓(なごしのはらえ)ですね。
夏越の祓は半年分の罪穢れを祓い、一年の後半も健やかに過ごすことが出来るよう祈願する行事。
祓いの起源は、イザナギノミコトが黄泉(よみ)の国から戻って来られ、筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原(あわぎはら)で穢れを払うため、禊祓(みそぎはらひ)をされたのが始まりと伝えられています。
私は毎年6月に入ると、「祓いの一カ月」と銘打って、大掛かりな部屋の掃除を始めます。
「祓いだなんて、難しそう~」と思った皆さん。
「祓い」は難しいものでも、特別なものでもありません。お金を支払う、煤(すす)を払う。私たちが日常的に行っているそれらの行為もまた、立派な祓いのひとつです。
祓いこそが、しあわせへの第一歩!
心健やかに美しく生きるために、「祓い」について考えてみませんか?「祓い」といっても、神職さまが大麻(おおぬさ)を振って祝詞を唱える、特別なものでなく、デイリーな「祓い」。
今回は、神秘のベールに包まれた祓いの女神についてもご紹介します。
人生に迷ったら、塩の神さまへ
「祓い」と聞いて、真っ先に頭に浮かぶのが「塩」ではないでしょうか。
全国各地に祀られるシオツチオヂノカミは、「塩の神さま」と呼ばれています。潮の満ち引き、人の生死を司る、ひいては安産の神であり、相談事を解決する、智慧深いお導きの神さまだと、陸奥国一ノ宮である宮城県「鹽竈(しおがま)神社」の神職さまに伺いました。海幸彦の釣り針をなくし途方に暮れていた弟の山幸彦に、解決策を授けたとされるシオツチオヂノカミは、人生に迷った時に力を授けて下さる、心強い神さまです。
清めの塩で新たな出発を
鹽竈神社では大麻を振ったのと同等の祓いの力が得られるという、切麻が入った御神塩を授与していただけます。何か気になること、良くないことがあった時など、神職さまが大麻を振るように、『左、右、左』と、自分に塩を振りかけ心を洗い清めれば、新たな気持ちで出発できますよ、と取材で伺ってから、イライラしたり、心によどみを感じた時は塩を振り、気持ちを切り替えるようにしています。
また、亡くなった祖母が、
と話していた言葉を思い出して、月に一度はすべての部屋を拭き掃除!塩を使って部屋を拭き清めると、驚くほど気持ちがすっきりします。
運気を変えたいと思ったら、まずは心と身体、部屋の掃除を心がけましょう。
ミステリアスな祓いの女神
「祓いに始まり、祓いに終わる」といわれる神道の世界。
古くは「中臣(なかとみ)の祓詞」とも呼ばれた「大祓詞(おおはらえのことば)」には、罪を祓い清めて下さる祓戸四柱の神さまの名が登場します。
速川の瀬で、すべての罪穢れを大海原に流し去って下さるセオリツヒメ。
荒潮がぶつかり合う渦を巻いているところで、口を大きく開け、すべての罪穢れをがぶがぶ飲み込み、海底深く沈めるハヤアキツヒメノカミ。
罪穢れを、「根の国、底の国」という地下の国に吹き祓う イブキドヌシノカミ。
最後に、ハヤサスラヒメノカミが罪穢れを何処とも知れず運び去り、跡形もなく消し去って下さるのです。
祓戸四柱はあらゆる罪穢れを消し去り、私たちを再び美しい元の姿に磨き清めて下さる、荒々しくも、やさしい神々さまです。
古代日本史における特別な神でありながら、古事記や日本書紀といった神道譜からその名が消され、千年以上の深い歴史の眠りから目覚めるように姿をあらわしたセオリツヒメ。不思議なことに、祓戸四柱の一柱であるセオリツヒメは何故か、岩手県に集中して祀られています。
柳田國男の『遠野物語』。「大昔に女神あり」という遠野三山の物語に登場する女神は、セオリツヒメであるといわれていますが、この辺りでセオリツヒメは「姫神」と呼ばれ、古よりセオリツヒメについて語ることは禁じられていたそうです。
私が取材に伺った岩手の二つの神社の境内、鎮守の森には、どちらも立派な滝が流れていました。清冽に流れる、激しくも美しい滝の飛沫を浴びながら、心が洗い清められていく気がしました。
それこそが、セオリツヒメが持つ祓いの力なのでしょう。
<健やかに、美しく生きる>
いかがでしたか?
以前、「禊ぎ発祥の地」「祝詞発祥の地」とされる、宮崎市に鎮座する江田神社の「みそぎ池」を訪ねたことがあります。イザナミノミコトを追って黄泉の国へ行ったイザナギノミコトが、祝詞を唱えながら清らかな水で体を洗い、黄泉の国の穢れを祓ったと伝えられる場所。空の青を映した池の水面をカワセミが舞う、本当に美しい聖地でした。
個人的には、美しいと思うモノに触れる、美しい風景を眺める、心の美しい人と話す。
そういった時間もまた、祓いにつながるのではないかと思っています。
祓いを心がけ、心健やかに、美しく生きていきましょう。
今よりもっとしあわせになるために。
次回は、いよいよ「夏越の祓」についてご紹介させていただきます。
天草のある神社に伝わる、病を癒す「河童の手」伝説。夏越の祓の神事で、河童の手が子どもたちの無病息災を願います。
お楽しみに。
福ふく
参考文献
神社新報社『大祓詞の心』
加門七海『お祓い日和』
三浦奈々依 のプロフィール

フリーアナウンサー・神社仏閣ライター・カラーセラピスト。
ラジオ番組にて20年以上にわたり、音楽番組を担当。
東日本大震災後、雑誌Kappoにて約7年にわたり「神様散歩」の連載を執筆。心の復興をテーマに、神社仏閣を取材。
全国の神社仏閣の歴史を紹介しながら、日本の文化、祈りの心を伝えている。
被災した神社仏閣再建の一助となる、四季の言の葉集「福を呼ぶ 四季みくじ」執筆。
→ http://ameblo.jp/otahukuhukuhuku/
アマゾン、全国の書店、世界遺産・京都東寺等で販売。
カラーセラピストとしても全国で活動中。
旅人のような暮らしの中で、さまざまな神社仏閣を訪ね、祈り、地元の人々と触れ合い、ワインを楽しむ。