芝東照宮〜戦火を超えた奇跡の大銀杏〜

2019.8.21

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久保多渓心 ( ライター・占術家 )

墨が織り成す一子相伝の占術 “篁霊祥命(こうれいしょうめい)” を主な鑑定手法とする占術家。他にも文筆家やイベント・オーガナイザーとしての顔も持つ。また引きこもり支援相談活動なども行なっている。

今回は前回ご紹介した「愛宕神社」から約1km、徒歩15分ほど南へ下った場所にある、非常に旺盛な""が漲るスポットをご紹介したいと思います。

都内屈指のパワーをもつ神社

芝東照宮

それは「芝公園」の一角にある「芝東照宮」です。

お隣にある「増上寺」は徳川将軍家の墓所があり、観光スポットとして訪れる方も非常に多く、東京タワーの真下にある「蛇塚」なども最近はテレビやネットなどで紹介されており、そのご利益(開運、金運向上)に預かろうとする方々が多く訪れています。

しかし、芝東照宮は訪れる人もまばらな非常に静かな場所です。

こちらに滞在中、境内ですれ違ったのは、お友達同士でいらっしゃっていた様子の女性2人のみでした。

芝東照宮は、元々増上寺の境内にありましたが、明治時代の神仏分離によって現在の形となっています。本殿には60歳を迎えられた徳川家康公が自ら命じて彫刻された等身大の「寿像(じゅぞう)」が鎮座しています(江戸東京博物館にレプリカが展示されています)。寿像とはその人が存命中に作らせておく像のことを言います。

また境内の一角には寛永8年(1641年)に徳川家光公が植えたとされる御神木の大イチョウがあり、天然記念物に指定されています。

昭和20年(1945年)5月25日の東京大空襲(山の手大空襲と呼ばれる大規模な空襲)で寛永18年(1633年)に造替されて以来、維持されてきた社殿が消失しましたが、家康公の寿像と大イチョウは奇跡的に戦災から免れ消失することなく残りました。

この周辺の土地は元来、5世紀頃に築造されたとみられる都内最大規模の古墳「芝丸山古墳」があり、古くから聖域として崇められていたのでしょう。そこに徳川家の持つ力や、神仏の加護が加わり寿像と大イチョウを守ったといえます。

ご神木の大イチョウ

個人的に都内屈指のパワーを持つ場所だと感じています。鳥居を潜ると清浄で穏やかな空気が立ち込めます。特に大イチョウから素晴らしい"気"が漲り、周辺に拡散されているのが分かります。

「徳川家康公を祀っているので勝負運がある」とされますが、私はむしろ「開運」のための神社ではなく、邪気や邪念を削ぎ落とす「癒しの神社であると感じました。気持ちを一新して何か始めたい時、そんな時にここを訪れると後押しをして頂けるかもしれません。

社務所では日光連山の伏流水を汲み上げた御神水「天恵」が250円で販売されています。神社仏閣では、その土地に由来する食べ物や飲み物を頂くことは、その場所が持つパワーを自分に取り入れることに役立ちますので、是非飲んでみられては如何でしょうか。また御朱印を頂くと日光杉並木の古材で作られた「芝東照宮道中安寧守」というお守りも頂くことが出来ます。

私が参拝した時、宮司さんが社務所に集まってくるスズメ達に餌をあげていらっしゃいました。何とも微笑ましい光景でした。

一方、先ほども触れました東京タワーの直下にある「蛇塚」ですが、こちらはご利益を期待して参拝される方の「負の念」が堆積しており、一般の方がおいそれと立ち入るような場所ではないと感じました。

これと同様なのが明治神宮の「清正井」です。芸能人などがテレビや雑誌などで、そのご利益を宣伝すると現地に赴かれる方が殺到してしまいますが、あまりにポピュラーになり過ぎ人の出入りが多くなると、その場の持つパワーは失われ、穢されてしまいます。

「パワースポット=観光地」ではありませんので、なるべく1人静かに尊崇の念と畏怖の念を持ちながら静謐な雰囲気の中で、その場所と向き合える自分だけのパワースポットを作っておいた方が良いのではないでしょうか。

「蛇塚」のある芝公園のもみじ谷エリアは都の改修工事(「景観の復元」や「快適安全な整備」)の為、2020年末まで全面閉鎖中です。改修によってどのように整備されるか気になるところです。

東照宮の由来

日光東照宮・陽明門

日本各地には「東照宮」と名が付く神社が各地にあります。

中でも「四大東照宮」が特に有名です。

第一に最も有名な「日光東照宮」、次に「久能山東照宮」、そして「上野東照宮」、「芝東照宮」が挙げられます。

東照宮という名称にはどんな由来があるのでしょうか。

徳川家康公の勅諡号(生前の事績を評価して与えられる名前)は「東照大権現」です

「大権現」の部分は神号と言われ、他にも「皇大神」「大神」「大明神(明神)」「天神」「菩薩」などがあります。有名なのは菅原道真公の死後に与えられた神号であり「天神様」の元にもなる「天満大自在天神(そらみつだいじざいてんじん)」です。

他に豊臣秀吉は「豊国大明神(とよくにだいみょうじん)」の神号が与えられています。

「東照」の部分ですが、これは「薬師如来」を意味しています。

薬師如来は別名を「薬師瑠璃光如来」といい、「東方浄瑠璃世界(瑠璃光浄土)」の教主だとされます。「瑠璃光」とは美しく澄み切った宝石のような青色(または緑色)を意味しており、薬師如来は瑠璃光を以って世の中の人々を病苦から救うと信じられてきました。

「東照」の「東」は「東方浄瑠璃世界(瑠璃光浄土)」を表し、「照」は「瑠璃光」を以って世の中を「照らす」という意味合いが込められ、これがすなわち「東照」=「薬師如来」となっています。

徳川家康公は、母である「於大の方」が鳳来寺の本尊であった薬師如来に祈願して生まれてきたという逸話から薬師如来が人間界に現れた存在とされ、これらが東照大権現という勅諡号(ちょくしごう)、神号が与えられた由来になっています。

徳川家康公の死去後、遺言に従って棺は駿府城から久能山に移され1616年「東照社」が創建されます。その翌年には日光にも社殿が建てられることとなります。

その後は全国各地に建立が相次ぎ、廃絶されたものを含めて700社の東照宮が造営されました。現在では「全国東照宮連合会」に加盟している神社は49社となっています。

皆さんも、お近くの東照宮に参拝されてはいかがでしょうか。

広島東照宮 

広島東照宮

広島東照宮 

久保多渓心 のプロフィール

久保多渓心

画家の父、歌人の母のもと、福岡市博多区で生まれる。

バンド活動を経て、DJ、オーガナイザーとしてアート系イベント、音楽イベントなどを多数手掛ける傍ら、フリーライターとしても活動。

音楽雑誌でのアーティスト・インタビュー記事、書籍、フリーペーパー、WEBなどの媒体で政治、社会問題から、サブカルチャー、オカルトまで幅広いジャンルでコラムを執筆。

引きこもり、不登校、心の病など自身の経験を活かし「ピアカウンセリング」を主軸にしたコミュニティを立ち上げる。後にひきこもり支援相談士として当事者やその家族のサポート、相談活動にあたる。

現在は亡き父から継承した一子相伝の墨を用いた特殊な占術『篁霊祥命』や、独自のリーディングによって鑑定活動を行っている。2021年で鑑定活動は16年目を迎える。

月参り、寺社への参拝による開運術の指導なども行う。

『AGLA(アグラ)』スーパーバイザーを務める。

2020年10月より活動名をマーク・ケイより、久保多渓心に改名。

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