2020.7.27
和気清麻呂を守護した山の神「猪」-『神々の意思を伝える動物たち 〜神使・眷属の世界(第二回)』

前回からお届けしている『神々の意思を伝える動物たち 〜神使・眷属の世界』の第二回。
今回は「猪」についてお話しいたします。
私の干支は「猪」。
「猪」といえば「猪突猛進」のイメージですが、実は柔軟に方向転換できるのだとか。
私も一度、こうと決めると揺るがないところがありますが、どちらかといえば慎重で、比較的柔軟な発想ができると思ってはいるのですが・・・
猪

護王神社(京都市上京区)

和気神社(岡山県和気郡)
猪は、仏教において「摩利支天(まりしてん)」が乗る動物として知られます。摩利支天は陽炎(かげろう)の神格化した存在です。
陽炎とは、局所的に密度の異なる大気が混ざり合うことによって、光が屈折する現象のことを指します。晴れた暑い日に、道路の上がモヤモヤと炎が揺らめいているように見えることがありますが、それが陽炎です。
この陽炎と同じで、実際には手に触れられない、実体もないけれど、確かにそこに存在し、太陽や月から発せられる光線とともに前へ前へと突き進み、私たちの前に立ちはだかる障害を取り除いてくれる神として崇敬を集めました。
摩利支天を祀ったお寺には、猪の像が置かれています。建仁寺の塔頭である禅居庵、南禅寺塔頭の聴松院などが有名です。

禅居庵の猪みくじ
神社の神使としての猪は、和気清麻呂による「弓削道鏡事件(宇佐八幡宮神託事件)」に端を発します。
奈良時代の僧侶、弓削道鏡は孝謙上皇(のちに重祚して称徳天皇となる)の病を癒したことで、上皇の寵愛を受け出世街道を上っていきます。
僧籍を持ったまた太政大臣、法王にまで上りつめた道鏡は政治への影響力も強めます。
その頃、道鏡の弟で、大宰府の長官職(太宰帥)にあった弓削浄人(ゆげのきよひと)と、大宰府の祭祀を司る役職、大宰主神(だざいのかんづかさ)であった中臣習宜阿曾麻呂(なかとみのすげのあそまろ)が、『道鏡を皇位につければ國平らかにならん』という宇佐八幡宮の託宣(神のお告げ)を奏上します。
天皇の地位を欲した道鏡と、その弟による共謀だったのは明らかですが、この託宣の真偽のほどを確かめようと称徳天皇は、側近の貴族であった和気清麻呂を宇佐八幡宮に派遣します。
天皇の勅使として宇佐八幡宮に参宮した清麻呂の前に、八幡大神が現れて以下の神託を与えます。

足立山妙見宮(福岡県北九州市)
【神社】
護王神社(京都市上京区)
馬見岡綿向神社(滋賀県蒲生郡)
愛宕神社(京都市右京区)
和気神社(岡山県和気郡)
足立山妙見宮(福岡県北九州市)
他、全国の愛宕神社
参考文献
『神道辞典』国学院大学日本文化研究所(編)弘文堂
『神社のどうぶつ図鑑』茂木貞純(監修)二見書房
『神様になった動物たち』戸部民生(著)だいわ文庫
『東京周辺 神社仏閣どうぶつ案内 神使・眷属・ゆかりのいきものを巡る』川野明正(著)メイツ出版
久保多渓心 のプロフィール

画家の父、歌人の母のもと、福岡市博多区で生まれる。
バンド活動を経て、DJ、オーガナイザーとしてアート系イベント、音楽イベントなどを多数手掛ける傍ら、フリーライターとしても活動。
音楽雑誌でのアーティスト・インタビュー記事、書籍、フリーペーパー、WEBなどの媒体で政治、社会問題から、サブカルチャー、オカルトまで幅広いジャンルでコラムを執筆。
引きこもり、不登校、心の病など自身の経験を活かし「ピアカウンセリング」を主軸にしたコミュニティを立ち上げる。後にひきこもり支援相談士として当事者やその家族のサポート、相談活動にあたる。
現在は亡き父から継承した一子相伝の墨を用いた特殊な占術『篁霊祥命』や、独自のリーディングによって鑑定活動を行っている。2021年で鑑定活動は16年目を迎える。
月参り、寺社への参拝による開運術の指導なども行う。
『AGLA(アグラ)』スーパーバイザーを務める。
2020年10月より活動名をマーク・ケイより、久保多渓心に改名。