五穀豊穣と開運勝利を司る、太陽信仰の霊鳥「カラス」-『神々の意思を伝える動物たち 〜神使・眷属の世界(第十二回)』

2020.9.6

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久保多渓心 ( ライター・占術家 )

墨が織り成す一子相伝の占術 “篁霊祥命(こうれいしょうめい)” を主な鑑定手法とする占術家。他にも文筆家やイベント・オーガナイザーとしての顔も持つ。また引きこもり支援相談活動なども行なっている。

神使「カラス」

皆さんの、カラスの印象とはどのようなものでしょうか?

不気味な黒一色のルックス、響き渡る大きな鳴き声、頭がよく、狡猾で、時には人をからかったりもします。そのため、都会では害鳥としての印象が強いですね。

先日の朝の情報番組では、JR長岡駅構内と周辺を占拠している3000羽のカラスが、JRを利用する乗客や近隣住民に大変な被害を及ぼしているという内容が取り上げられていました。

なんでも新型コロナウイルスによる非常事態宣言などによって、街に人が減ったためカラスが以前よりも大胆な行動を取り始めているのだとか。こんなところにもコロナの影響が出ているんですね。

また、怪我をしているところを人に助けられたカラスが家に居ついてしまい、ついにはご主人の言葉を真似て話すようになったとか、3工程までの計画を立てて、道具を使って餌を手に入れるほどの知能を持っているとか、滑り台を人間の子どものように繰り返し滑るなどの遊び心を持っているなど、カラスには不思議で、神秘的な魅力もあります。

映画好きな私は、あのブルース・リーの息子であるブランドン・リーが演じた、カラスから神秘の力を授かったダークヒーロー(エリック・ドラヴェン)の活躍を描いた『クロウ / 飛翔伝説』を思い浮かべます。

「クロウ」といえば・・・今日9月6日は「カラスの日」。英語でカラスを「Crow(クロウ)」というのと、カラスの黒い体の色からの語呂合わせです。

今回は、神使としてのカラスについて見てまいりましょう。

 

八咫烏

神使のカラスで思い出されるのは、「八咫烏(ヤタガラス)」です。

古来からカラスは神意を人々に伝える霊的な存在とされており、神の使いを意味する「御先 / 御前(ミサキ)」または「ミサキ神」と呼ばれていました。

ミサキ神は神霊が人間界に降臨する際に、それに先駆けて現れ、予兆を示す存在とされます。

日本神話では、神武天皇が熊野国から大和国へ向かう途中の、険しい山道にいたった時、高皇産霊尊(タカミムスビ)によって遣わされた八咫烏の導きを得て、吉野川の上流に着き、そこからさらに進んで宇陀にたどり着いたといわれています。

八咫烏の「咫」は「あた」と読み、日本の古い長さの単位です。

手を開いた時の、中指の先から親指の先までの長さが「咫」で、現代でいうならば約18cmの長さです。八咫烏は、八咫なので「18cm×8=144cm」の大きさ!・・・というわけではなく、古代の日本では「八」は神聖な数字であり、偉大さ、漠然とした大きさを示す数でした。

例えば「八百万(やおよろず)の神」が、その典型です。他にも日本神話では「百八十」も神聖な数字とされ「百八十神(ももやそがみ)」という表現もあります。

八咫烏は、" とても大きな " カラスだったのです。

弓弦羽神社(神戸市東灘区)の御影石製のサッカーボール

八咫烏は、日本サッカー協会のシンボルマークとしても採用されています。

これは、サッカーを日本に初めて紹介した "日本サッカー界の生みの親" 中村覚之助の故郷、和歌山県那智勝浦町にある「渚宮神社(現在の熊野三所大神社)」の神使が八咫烏であったことから、採用されたといわれています。

現在では、勝利を導く守り神としてサッカーファンに親しまれています。

熊野三山

熊野本宮大社(和歌山県田辺市)

熊野三山」(「熊野本宮大社」「熊野速玉大社」「熊野那智大社」の三社の総称。この三社に「那智山青岸渡寺」の一寺を加える場合も)の神使は八咫烏です。

境内各所には八咫烏をモチーフとした旗や像などが置かれています。これらの旗や像を見て気付くのは、足が三本あることです。

三本足は「天(天神地祇=神様のこと)」「地(自然環境)」「人」を表しており、太陽の下に神と自然と人が血を分けた兄弟であることを示しているとされます。しかし、『古事記」や『日本書紀』といった日本神話には、八咫烏の足は三本であるという記述は一切ありません。

右が三足烏(さんそくう)

中国神話には太陽に棲むとされる「三足烏(さんそくう)」と呼ばれる、伝説上の生き物の存在が信じられており、これが平安時代に日本に伝来したものと思われます。

中国の陰陽五行説では、偶数は陰、奇数は陽としており、三本足の「三」は陽となって、太陽の象徴とみなされました。

古来より、熊野や南紀一帯では、五穀豊穣を願った太陽信仰が盛んに行われていたと言います。カラスの霊力は農耕守護に効果を発揮するといわれ、カラスにお供え物をして豊作を祈る風習や、カラスに餌を与えて、その食べ方で豊作か否かを占う行事が各地で行われていました。

こうした日本と中国の古来の太陽信仰が、巧妙に結びついて三本足の神使「八咫烏」は生まれたのです。

 

各社のカラス

弓弦羽神社(神戸市東灘区)の願いを届ける「ゆづ丸

「ゆづ丸」は、八咫烏をモチーフとした弓弦羽神社のキャラクターです。

願い事を書いた紙を、ゆづ丸のお腹に入れます。そして、ゆづ丸に願い事をした日付、名前、そして思い思いの羽を書いて奉納台に納めると、ゆづ丸が願い事を書いた手紙を神様に届けてくれます。

熊野本宮大社の八咫烏ポスト

熊野本宮大社の社務所前には、黒い八咫烏ポストがあります。赤いポストは見慣れていますが、黒いポストは珍しいですね。でも、どこかしっくりくるカラーリング。

なんでも黒は全ての色を合わせた尊い色であり、八咫烏の色、本宮の大地を象徴する神聖な色なのだとか。

ポストの横には多羅葉のご神木があります。多羅葉の木は、その葉に爪などで文字を書いていたことが「葉書」の語源になっているそうで、社務所で葉書として使用できる絵馬を購入すると、このポストに投函ができます。

鴉宮(大阪市此花区)の八咫烏

師岡熊野神社(横浜市港北区)の八咫烏

杭全(くまた)神社(大阪市平野区)の八咫烏の絵馬

 

 

【神社】
熊野本宮大社
熊野速玉神社
熊野那智大社
八咫烏神社
弓弦羽神社
大國魂神社
など

 

参考文献

『神道辞典』国学院大学日本文化研究所(編)弘文堂
『神社のどうぶつ図鑑』茂木貞純(監修)二見書房
『神様になった動物たち』戸部民生(著)だいわ文庫
『東京周辺 神社仏閣どうぶつ案内 神使・眷属・ゆかりのいきものを巡る』川野明正(著)メイツ出版

久保多渓心 のプロフィール

久保多渓心

画家の父、歌人の母のもと、福岡市博多区で生まれる。

バンド活動を経て、DJ、オーガナイザーとしてアート系イベント、音楽イベントなどを多数手掛ける傍ら、フリーライターとしても活動。

音楽雑誌でのアーティスト・インタビュー記事、書籍、フリーペーパー、WEBなどの媒体で政治、社会問題から、サブカルチャー、オカルトまで幅広いジャンルでコラムを執筆。

引きこもり、不登校、心の病など自身の経験を活かし「ピアカウンセリング」を主軸にしたコミュニティを立ち上げる。後にひきこもり支援相談士として当事者やその家族のサポート、相談活動にあたる。

現在は亡き父から継承した一子相伝の墨を用いた特殊な占術『篁霊祥命』や、独自のリーディングによって鑑定活動を行っている。2021年で鑑定活動は16年目を迎える。

月参り、寺社への参拝による開運術の指導なども行う。

『AGLA(アグラ)』スーパーバイザーを務める。

2020年10月より活動名をマーク・ケイより、久保多渓心に改名。

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