2020.11.28
神意にこたえ、水音を止めた「アジメドジョウ」『神々の意思を伝える動物たち 〜神使・眷属の世界(第二十六回)』

神使「アジメドジョウ」
皆さんは、「アジメドジョウ(味女泥鰌)」をご存知でしょうか。
アジメドジョウは日本の固有種で、近畿地方や中部地方の透明度の高い河川の上中流域に自然分布する淡水魚です。
昨今、ダムや砂防堰堤の建設や、水質の悪化により生息数が減少しており、環境省のレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されています。
このアジメドジョウを神使とするのが岐阜県高山市の「飛騨一宮水無神社」です。

宮川にかかる赤い中橋
高山市の市街地を流れる宮川(下流は神通川)。飛騨高山のシンボルともいえる赤い中橋がかかり、周囲には古い情緒豊かな町並みや、賑やかな朝一が開かれる通りなどがあります。
この中心地から数kmの上流そばに位置するのが水無神社。この社前から、さらに上流域にかけては、川の流れはほとんどなく伏流水となっています。
これには、こんな理由があるのです。

飛騨高山の古い町並み
ある時、水無神社のご祭神「水無大神(ミナシノオオカミ)」が、宮川を隔てた対岸にある寺の和尚の説教を聞こうとしていましたが、寺の前を流れる宮川の川の音がうるさくて、説教が聞き取りづらく困っていました。
すると、宮川に住むアジメドジョウたちが、神様のお役に立ちたいと一斉に川底にもぐって、豊富な川の水を地下に導き、伏流水に変えてしまったのです。それ以来、アジメドジョウは水無神社の神使となったのでした。
このことによって、宮川上流の水量は減り、静かになりました。また、村人たちはアジメドジョウを捕ったり、食べることをしなくなったといいます。

水無神社(岐阜県高山市)
水無神社の「水無」は、「水主」つまり、川の水源を司る神という意味があります。
宮川(神通川)」の水源である飛騨の霊峰「位山」には、古代人に関わる遺物であるといわれる謎の巨石群が点在しています。その巨石に一つに「天の岩戸」と呼ばれるものがあり、これが水無神社の奥宮となっています。また、位山そのものが水無大神の御神体であるともいわれています。
水無大神は、農作物に実りをもたらす「作神様」として信仰されるほか、養蚕・畜産の守護神、延命長寿の守護神としての高いご神威があるとされます。
水無神社(岐阜県高山市)
参考文献
『神道辞典』国学院大学日本文化研究所(編)弘文堂
『神社のどうぶつ図鑑』茂木貞純(監修)二見書房
『神様になった動物たち』戸部民生(著)だいわ文庫
『東京周辺 神社仏閣どうぶつ案内 神使・眷属・ゆかりのいきものを巡る』川野明正(著)メイツ出版『日本の200名山霊峰位山』飛騨一宮観光協会(WEB)
久保多渓心 のプロフィール

画家の父、歌人の母のもと、福岡市博多区で生まれる。
バンド活動を経て、DJ、オーガナイザーとしてアート系イベント、音楽イベントなどを多数手掛ける傍ら、フリーライターとしても活動。
音楽雑誌でのアーティスト・インタビュー記事、書籍、フリーペーパー、WEBなどの媒体で政治、社会問題から、サブカルチャー、オカルトまで幅広いジャンルでコラムを執筆。
引きこもり、不登校、心の病など自身の経験を活かし「ピアカウンセリング」を主軸にしたコミュニティを立ち上げる。後にひきこもり支援相談士として当事者やその家族のサポート、相談活動にあたる。
現在は亡き父から継承した一子相伝の墨を用いた特殊な占術『篁霊祥命』や、独自のリーディングによって鑑定活動を行っている。2021年で鑑定活動は16年目を迎える。
月参り、寺社への参拝による開運術の指導なども行う。
『AGLA(アグラ)』スーパーバイザーを務める。
2020年10月より活動名をマーク・ケイより、久保多渓心に改名。