大威徳明王の使い「水牛」『神々の意思を伝える動物たち 〜神使・眷属の世界(第三十一回)』

2021.1.24

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久保多渓心 ( ライター・占術家 )

墨が織り成す一子相伝の占術 “篁霊祥命(こうれいしょうめい)” を主な鑑定手法とする占術家。他にも文筆家やイベント・オーガナイザーとしての顔も持つ。また引きこもり支援相談活動なども行なっている。

神使「水牛」

家畜としての「水牛」

竹富島の水牛

沖縄県の八重山諸島、竹富島や由布島といった観光地で牛車を引く水牛はお馴染みですね。離島の集落を、ゆっくり、のんびりと歩く水牛の姿は優雅で癒されます。

野生の水牛の体長は2〜3m、体重は1000kgを超す個体も珍しくなく、後ろ向きに湾曲して生えた大きな角が特徴です。

これだけの巨体を誇る水牛ですが、いたって温厚で、人にもよく慣れます。

中国やインド、タイといったアジア各国では、5000〜8000年ほど前から家畜化されています。

水牛は昆虫による害から体を保護するため、また暑さから逃れるために泥の中に入ることを好む性質があるので、人間だと足をとられてしまうような水田での優れた機動力を活かして、農業に広く使われて来ました。

また、インドなどヒンドゥー教を信仰する国々では牛は神聖視されていますが、信者がその肉を食することは禁忌とされています。一方、乳牛として飼育されている水牛は搾乳ができなくなると解体され、食肉として食べられています。

なんとも可哀想な気が・・・

やはりこれにはインドでも抗議の声が上がっているのだとか。

大威徳明王と文殊菩薩

大威徳明王像(13世紀、ボストン美術館所蔵)public domain

五大明王(他は不動明王、降三世明王、軍荼利明王、金剛夜叉明王)のうち、西方の守護者とされる「大威徳明王(だいいとくみょうおう)」が乗っているのが、神の使いの水牛です。

チベット仏教では「ヤマーンタカ(死神閻魔をも降す者)」とも呼ばれる大威徳明王。

その大威徳明王と、水牛の関係をあらわす伝承が残されています。

ある修行僧が長年に渡る過酷な行を経て、いよいよ悟りに到達しようとする直前に、盗賊の襲撃に遭い首をはねられて殺されてしまいました。

その凄まじいばかりの怨念から、盗賊がはねた水牛の首を自分の胴体につけ悪鬼となって蘇り、復讐の限りを尽くすのです。

しかし、自らを殺した盗賊だけではなく、無関係の人々までを襲うようになったことから、このことを憂いた文殊菩薩が牛の頭をもつヤマーンタカ(大威徳明王)に姿を変え、修行僧の怨霊を調伏するのです。

密教においては「三輪身」という考え方があり、各仏は本来の姿である「自性輪身(じしょうりんしん)」、菩薩の姿となった「正法輪身(しょうぼうりんしん)」、忿怒尊(ふんぬそん)の姿をとる「教令輪身(きょうりょうりんしん)」に変化するとされます。

大威徳明王の自性輪身は「阿弥陀如来」、正法輪身は「文殊菩薩」といわれています。

 

【水牛に所縁あるお寺】
東寺(京都市南区)
醍醐寺(京都市伏見区)
大覚寺(京都市右京区)

 

参考文献

『神道辞典』国学院大学日本文化研究所(編)弘文堂
『神社のどうぶつ図鑑』茂木貞純(監修)二見書房
『お寺のどうぶつ図鑑』今井浄圓(監修)二見書房
『神様になった動物たち』戸部民生(著)だいわ文庫
醍醐寺霊宝館・五大明王像のうち大威徳明王像(WEB

久保多渓心 のプロフィール

久保多渓心

画家の父、歌人の母のもと、福岡市博多区で生まれる。

バンド活動を経て、DJ、オーガナイザーとしてアート系イベント、音楽イベントなどを多数手掛ける傍ら、フリーライターとしても活動。

音楽雑誌でのアーティスト・インタビュー記事、書籍、フリーペーパー、WEBなどの媒体で政治、社会問題から、サブカルチャー、オカルトまで幅広いジャンルでコラムを執筆。

引きこもり、不登校、心の病など自身の経験を活かし「ピアカウンセリング」を主軸にしたコミュニティを立ち上げる。後にひきこもり支援相談士として当事者やその家族のサポート、相談活動にあたる。

現在は亡き父から継承した一子相伝の墨を用いた特殊な占術『篁霊祥命』や、独自のリーディングによって鑑定活動を行っている。2021年で鑑定活動は16年目を迎える。

月参り、寺社への参拝による開運術の指導なども行う。

『AGLA(アグラ)』スーパーバイザーを務める。

2020年10月より活動名をマーク・ケイより、久保多渓心に改名。

↓こちらからマーク・ケイ先生の鑑定を受けられます!↓
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