天女が舞い、龍が微笑む日本の聖地 ~江島神社~ 『四季に寄り添い、祈るように暮らす(連載第七十四回)』

2021.3.19

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三浦奈々依 ( フリーアナウンサー )

フリーアナウンサー・神社仏閣ライター・カラーセラピスト。
ラジオ番組にて20年以上にわたり、音楽番組を担当。東日本大震災後、雑誌Kappoにて約7年にわたり連載「神様散歩」を執筆。『福を呼ぶ 四季みくじ』出版。カラーセラピストとしても全国で活動中。

幼い頃から神社の境内でラジオ体操をしたり友だちと遊んでいた私は、自然と神々の歴史に興味を持ち、いつしか歴史ものの番組のリポーターや、神社仏閣、日本の四季の言の葉の記事を執筆するようになりました。

好きなものをコツコツと学んでいるうちに様々なご縁が結ばれ、道が生まれ、その道を歩く中でまた新たな出会いがあり、今に至ります。

東日本大震災の翌年、「心の復興」をテーマに雑誌の連載が始まり、仕事として40を超える神社仏閣の神職様、僧侶様を取材し記事を書き、またラジオ番組やウェブマガジンの連載をいれれば、その何倍もの数の神職様、僧侶様にお話を伺ってきました。

この311日で東日本大震災から10年を迎えました。

多くの方が祈りを捧げたこの3月、仕事の機会を頂いて大橋をわたり江島神社へ。

復興を願い、初めて江島神社でご祈祷を受けました。清らかな鈴の音が鳴り響く本殿には白龍と天女の絵が。

欽明天皇13552)年、412日の夜から23日の朝まで大地が震動し、空から天女が十五童子を従えて現れ、それに合わせて龍神達が雲上より出現し、江の島をつくったと伝えられています。

瑞心門をくぐると目の前に現れる弁財天と童子の像。

「天女が雲の上に顕れ、白龍 十五童子を従へ この嶋上に降居したまへり」

今日は江島神社をご一緒に旅してみませんか?

 

五つの頭を持つ龍の伝説と「龍恋の鐘」

江島神社では四季折々の花が私たちを迎えてくれます。

海と花、あふれる緑に抱かれて祈りを捧げるひととき。それもまた、江の島の神々から私たちへの素敵な贈り物でしょう。

さて、伝説によれば、鎌倉には昔、五つの頭を持つ龍がいて人々を苦しめていたといいます。

そこへ一人の天女が舞い降りました。その美しさに魅せられ、恋心を抱いた五頭龍は天女に結婚を申し込みますが、数々の悪行により断られてしまいます。

五頭龍は悪行を止め、改心。めでたく天女と結婚することができたとか。

天女とは江島神社に奉られている弁財天と伝えられています。

江島神社にある「龍恋の鐘(りゅうれんのかね)」。

思い人と二人で鳴らし、名前を書いた南京錠をつけると永遠の愛が叶うと信じ、訪れる人も少なくありません。

以前、修学旅行生でしょうか。中学生らしき男の子たちが勢いよく鐘を鳴らしていたところに、制服を着た女の子が数人やってきました。「鐘を鳴らして、恋を呼んだらいいんじゃね?」と一人の男の子が声をかけ立ち去っていくと、顔を見合わせ笑っていた女子たち。

青春真っ只中だなと、微笑ましい気持ちになりました。

高らかに鳴り響く鐘の音は、結婚を誓ったカップルが鳴らすカリヨンの音色にも似て、幸せの響きがあります。是非、恋人だけでなく、家族やお友だちといった大切な方と鐘を鳴らして下さい。

 

江島神社に祀られる三人の女神様

美しい海に囲まれた江島神社のご祭神は、天照大神(あまてらすおおみかみ)が須佐之男命(すさのおのみこと)と誓約された時に生まれた三姉妹の女神様です。

奥津宮の多紀理比賣命(たぎりひめのみこと)

中津宮の市寸島比賣命(いちきしまひめのみこと)

辺津宮の田寸津比賣命(たぎつひめのみこと) 

この三女神は古くは江島明神(えのしまみょうじん)と呼ばれていましたが、仏教との習合により、弁財天女とされ、海の神、水の神としてはもちろん、幸福や財宝を招き、芸道上達の功徳を持つ神として、広く信仰を集めています。

 

辺津宮(へつみや)

まず最初に参拝する辺津宮(へつみや)には田寸津比賣命(たぎつひめのみこと)がお祀りされています。ご祈祷は、こちらの辺津宮の本殿にて行われます。

建永元年、今から約800年以上前に時の将軍・源實朝(みなもとのさねとも)が創建。昭和51年の大改修により、権現造りの現在の社殿が新築されました。

屋根の江島神社の社紋「向かい波三つ鱗」。これは北条家の家紋「三枚の鱗」の伝説にちなみ考案されたものです。

『太平記』によれば、建久3(1190年)年、鎌倉幕府を司った北条時政が、子孫繁栄を願うため江の島の御窟(現在の岩屋)に参籠したところ、満願の夜に弁財天が現れ、その願いを叶えることを約束し、大蛇となり海へ。そのあとには三枚の鱗が残され、時政はこれを家紋にしたと伝えられています。

辺津宮には以前までは拝殿前に巾着の形をした珍しい賽銭箱が置かれていました。

相模彫りと言われる独特の彫り物で、お賽銭を入れると音が出る仕組みになっており、訪れる人の耳を楽しませていましたが、平成29年より混雑緩和の為、大型のお賽銭箱と代替り。

元の巾着型のお賽銭箱は社務所内で保管され、春秋の例祭、節分祭のみ、お目見えします。

ですが、八臂(はっぴ)弁財天(国指定重要文化財)と裸弁財天・妙音弁財天(市指定重要文化財)が祀られている辺津宮境内の八角のお堂・奉安殿(ほうあんでん)に置かれた巾着型のお賽銭箱もちょうど真ん中にお賽銭を入れると、何とも素敵な音色が聴こえてきます。気づかず通り過ぎてしまう方もいらっしゃるので、耳を澄ませてくださいね。

 

中津宮

中津宮(なかつみや)は、市寸島比賣命(いちきしまひめのみこと)をお祀りしています。

中津宮は、仁壽3853)年に慈覚大師(じかくだいし)が創建。元禄21689)年に、五代将軍・徳川綱吉により、本殿・幣殿・拝殿からなる権現造りの社殿が再建され、現在も当時の朱色が鮮明な社殿を再現しています。

ハッとするほど鮮やかな朱の世界に太陽の光が降り注げば、金の光りがきらめく美しさ。まさに、全ての女性の健康と長命、美を司るともいわれる美人弁天を祀るにふさわしい社殿となっています。

中津宮といえば、水琴窟(すいきんくつ)

水琴窟とは、日本庭園の装飾のひとつで、水鉢の水を柄杓ですくい、地中に埋めた瓶の空間へ雫として流すと地中から反響した音が奏でられるというものです。

また、こちらには珍しい水みくじもありますから、ぜひ引いてみて下さい。

現在、コロナウイルス感染拡大により柄杓は撤去されていますが、参拝者が訪れるとセンサーが反応し自動的に水が流れ、水琴の音が楽しめるようになっています。

心と体が癒され、場が浄化され、運気を上げるといわれる水琴の音。それはまるで、天女が空を舞うような美しい音色です。この3月、私が聞いた水琴窟の音色をお届けしましょう。

 

奥津宮

奥津宮(おくつみや)は、多紀理比賣命(たぎりひめのみこと)をお祀りしています。

多紀理比賣命は、三姉妹の一番上の姉神様。

龍神伝説発祥の地とされる岩屋に一番近い奥津宮は、昔は、本宮または御旅所(おたびしょ)と称され、岩屋の本宮に海水が入りこんでしまう4月~10月までの期間は岩屋本宮のご本尊が、ここ御旅所に遷座したと伝えられています。

壮麗を極めた社殿は、天保121841)年に焼失。翌年に再建され、昭和541979)年に御屋根が修復されました。また、平成23年(2011)年に本殿が170年ぶりに改修されました。

奥津宮のお賽銭箱の前に立ち、天井を見上げるとそこには、「八方睨みの亀」がじっとこちらを見つめています。

拝殿天井に描かれているのは、どこから見ても、こちらを睨んでいるように見える「八方睨みの亀」。不思議なのですが、どこから見ても視線が合います。亀は皆様ご存知の通り、不老不死の象徴であり、神の遣い。

江戸の絵師・酒井抱一によって描かれ、平成61994)年に片岡華陽が復元。藤沢市有形文化財指定され、実物は社務所にて保管されています。

 

龍宮

奥津宮の隣にあり、岩屋本宮の真上にあたるところに平成51993)年、崇敬者の御篤志により建てられた新しいお宮です。御祭神は龍宮大神。

江の島は、湧出以来、龍神の坐すところとされ、龍神は弁財天の夫とも、遣いともいわれています。

某テレビ番組で占い師の木下レオンさんが江島神社の龍宮を参拝。その後、大きな仕事が入りご利益がありましたとご紹介されたことから、熱い注目を浴びているようです。

その際、「猫を神社で見かけると運気が上がる」と話してましたが、江の島は「猫島」と呼ばれるくらいたくさんの猫がいますから、かなりの確率でのんびりと島を散歩する猫に会えるでしょう。

龍宮を参拝したら、江の島弁財天信仰の発祥の地とされる岩屋へ。

 

江の島弁財天信仰の始まりの地 神秘の岩屋

奥津宮から歩いて10分程の場所に岩屋があります。この日は雨が降っていました。

この場所は江の島弁財天信仰の発祥の地とされ、多くの高僧や武将が訪れて籠り、祈りを捧げていたそうです。夏は岩屋に海水が入るので、昔は旧暦の4月から10月の間は神様を山の上の御旅所(奥津宮)に遷座したと伝えられています。

先日の台風時も奥まで水が入り、立ち入り禁止になったと伺い、この洞窟が刻んできたであろう長い時に思いを馳せました。

奥行152mで富士山の氷穴に通じているといわれる第1岩屋と、龍神伝説の地とされる第2岩屋があり、ごつごつとした洞窟には多くの石仏が残されています。

地上とは全く違う空気をまとった洞窟は自然の神秘を感じる場所です。

洞窟から眺める海は神様の気配を色濃く帯び、もし目の前に龍神があらわれたらと、想像の膨らむ聖地でした。

いかがでしたか?

江の島の海岸沿いを歩いていたら桜貝にまじって、まるで白蛇が浮き出ているような小さな貝殻を見つけ、お守り代わりに。海は穏やかで、久しぶりに心からフーっと息をつけた気がしました。

江の島には素敵なカフェやレストランがたくさんありますね。コロナ禍、マスク着用はもちろんのこと、検温、手洗い消毒、ソーシャルディスタンスの確保のため人数制限を行うなどして、お客様が安全に、美味しい時間を楽しめるようにと、お店の皆様も懸命な努力を続けています。

大人数での行動は控え、少人数で。またこういった機会に一人旅を楽しむのもよいと思います。状況を見ながらではありますが、もう少し喜びに心を開くことが出来る、そんな日常生活が送れたらと願っています。

三浦奈々依 のプロフィール

三浦奈々依

フリーアナウンサー・神社仏閣ライター・カラーセラピスト。

ラジオ番組にて20年以上にわたり、音楽番組を担当。

東日本大震災後、雑誌Kappoにて約7年にわたり「神様散歩」の連載を執筆。心の復興をテーマに、神社仏閣を取材。

全国の神社仏閣の歴史を紹介しながら、日本の文化、祈りの心を伝えている。

被災した神社仏閣再建の一助となる、四季の言の葉集「福を呼ぶ 四季みくじ」執筆。


http://ameblo.jp/otahukuhukuhuku/
アマゾン、全国の書店、世界遺産・京都東寺等で販売。


カラーセラピストとしても全国で活動中。
旅人のような暮らしの中で、さまざまな神社仏閣を訪ね、祈り、地元の人々と触れ合い、ワインを楽しむ。

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