【桃の鳥居・魚の鳥居・変形鳥居!】行ってみたくなる、変わりダネ鳥居②

2021.3.20

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久保多渓心 ( ライター・占術家 )

墨が織り成す一子相伝の占術 “篁霊祥命(こうれいしょうめい)” を主な鑑定手法とする占術家。他にも文筆家やイベント・オーガナイザーとしての顔も持つ。また引きこもり支援相談活動なども行なっている。

前回に引き続き、『行ってみたくなる、変わりダネ鳥居』の第2回をお届けします。

 

桃の鳥居

愛知県犬山市・桃太郎神社

扁額の代わりに桃のレリーフが飾られる二の鳥居

桃太郎伝説が残る、愛知県犬山市に鎮座する「桃太郎神社」には、非常に珍しい桃の鳥居があります。

桃は古から魔除け、災厄除けの吉祥のシンボルとして扱われてきました。これは「イザナギ」と「イザナミ」による国産み神話から発生したものです。

イザナギとイザナミは、日本の国土と、それらを支配する神々を産みました。イザナミは、火の神である「軻遇突智(カグツチ)」を産んだ際に、火傷をして病に伏せ、その後に亡くなってしまいます。

死後に黄泉(よみ)の国へと旅立ったイザナミを追って、イザナギは冥府下りをします。しかし、黄泉の国でイザナミの腐敗した姿を見て、黄泉の国から逃げ出してしまいます。

死後の姿を見られたイザナミは「恥をかかされた」と怒り、黄泉軍(よもついくさ)といわれる黄泉の国に棲まう鬼たちを従えてイザナギを追いかけます。

黄泉の国と地上の間にある、黄泉比良坂(よもつひらさか)まで逃げ延びて来たイザナギは、そこに大きな桃の木を見つけます。この桃の木になっていた3個の桃を、追ってくる鬼たちに投げつけると、鬼たちは一目散に逃げ出してしまったといいます。

イザナギは、自分の身を守ってくれた桃に「意富加牟豆美命(大神実命・おおかむづみのみこと)」という神号を与え、「これから地上の人々が苦しんだり、悲しむようなことがあれば、助けてやってほしい」と命じたのです。

こうした日本神話が、のちの桃太郎伝説を生むに至ります。

「桃太郎神社」のご祭神は、「大神実命」。鬼退治をした桃太郎と、同一の存在であるとされます。

桃の鳥居をくぐれば「悪は去る(サル)、病は居ぬ(イヌ)、災いは来じ(キジ)」といわれています。

桃太郎神社
住所:〒484-0002 愛知県犬山市栗栖大平853
電話:0568-61-1586

 

魚の鳥居

千葉県銚子市・長九郎稲荷神社

鯛(たい)と、秋刀魚(さんま)と、鰯(いわし)の鳥居があるのは「長九郎(ちょぼくり)稲荷神社」。

紀州から銚子にやって来た長九郎という漁師が、この地を大変気に入り、子孫繁栄と大漁満足を願って、京都の伏見稲荷大社を勧請して建てたのが、この稲荷社。

東日本大震災によって社殿が倒壊したため、現在の社殿は再興されたもの。お稲荷様といえば、お狐様ですが、この社殿の中にはヒキガエルの木造が安置されています。

「長九郎稲荷」のお狐様はメスなので、自分の姿は決して見せず、人前に現れる時はヒキガエルになって現れるとか。

この地の周囲には大蛇が住んでいるともいわれており、大蛇は社殿を守護する存在だとされます。この大蛇の抜け殻が最近になって見つかり、社殿の中に大切に納められているそうです。

「ちょぼくり」の読みは、「長九郎」が次第に訛ったもので、親しみを込めて、そう呼ばれているのだそう。

「長九郎稲荷」には、金の鳥居もあります。

長九郎稲荷神社
住所:〒288-0013 千葉県銚子市長崎町
HP:http://chobokuri-inari.org

 

紅白鳥居

神奈川県鎌倉市・鎌倉宮

笠木が赤で塗られ、島木、貫、柱が白く塗られているという珍しいカラーリングの鳥居。

珍しいのはカラーリングだけではありません。

笠木と島木があり、なおかつ反り増していることから、典型的な「明神鳥居」のようにも見えますが、額束がなく、貫も柱の外側に突き出していないため、「神明鳥居」の特徴も持ったハイブリッドな鳥居です。

「鎌倉宮」は後醍醐天皇皇子の護良親王(もりよししんのう)を祀る、皇室とのゆかりも深い由緒ある神社です。

紅白鳥居はコンクリート製で、創建150周年事業により、現在の色に塗られています。

福岡市西区・飯盛神社

こちらは私の氏神様にあたる、福岡の「飯盛神社」。

こちらには、見事に真ん中で色分けされた「紅白鳥居」が存在します。昨年、建立された真新しい鳥居です。めでたいカラーリングの鳥居で、思わずくぐりたくなりますね。

鎌倉宮
住所:〒248-0002 神奈川県鎌倉市二階堂154
電話:0467-22-0318
HP:http://www.kamakuraguu.jp

飯盛神社
住所:〒819-0037 福岡県福岡市西区大字飯盛609
電話:092-811-1329
HP:http://www.iimorijinja.jp

 

変形鳥居

東京都港区・烏森神社

建築家の郡菊夫氏による、現代アートを思わせるモダンな作りの鳥居は1971年に建てられたもの。鳥居の奥にある社殿、そして参道入口に建つ一の鳥居も、共通した形状となっています。

おみくじ、願い札、願い玉の3点からなる4色に色分けされた「心願色みくじ」が大変な人気となっています。

赤は恋愛と良縁、黄は金運、幸運、商売、青は厄祓・仕事学業、緑は健康家庭。

自分の願意、占いたい色に合わせて、おみくじをひきます。選んだ色と同じペンで、願い札に願い事をしたためて、結び紐に付けると、後日、神職によって祈願がほどこされます。

このおみくじ、なんと「超大吉」があります。

見事、「超大吉」を引き当てると、福分けセットが授与されます。運試しにいかがでしょうか。

その他の、授与品も大変充実しています。また、カラフルで美しい御朱印も人気です。

烏森神社
住所:〒105-0004 東京都港区新橋2丁目15−5
電話:03-3591-7865
HP:http://karasumorijinja.or.jp

 

〆鳥居

足長神社

足長神社」とは変わった名前ですが、その所在地が長野県だと聞くと思い出すのは「手長足長」という妖怪です。幼い頃、水木しげるさんの妖怪本に描かれていた「手長足長」のイラストのあまりの異様さ、怖さに凍り付いた記憶が蘇ります。

「足長神社」のある長野県諏訪地方では、「手長足長」は諏訪大明神(建御名方神と八坂刀売神)の家来とされ、夫婦の神として崇められています。この「足長神社」は足長を祀った神社で、近くには「手長神社」もあります。

ご祭神は、ヤマタノオロチ伝説に登場する奇稲田姫(くしなだひめ)の両親、脚摩乳命 (「足長神社」あしなづちのみこと)と、手摩乳命 (「手長神社」てなづちのみこと)。

この「足長神社」の拝殿前には2本の杉の大木に注連縄がかけられた「〆鳥居」があります。地方の山間の神社には時折、このように自然木を柱として利用した、〆鳥居を見ることが出来ます。

一方、切り出した丸太に、注連縄をかけた「〆柱」というものもあり、大神神社の延喜式内社「狭井神社」のものが有名です。
足長神社
住所:長野県諏訪市四賀足長山5386

狭井神社
住所:〒633-0001 奈良県桜井市大字三輪1422
電話:0744-42-6633
HP:http://oomiwa.or.jp/keidaimap/17-saijinja/

 

鳥居を乗せた亀

東京都新宿区・穴八幡宮

金色の藁座も眩しいですが、その下の台石をよーく見て下さい。

この台石、実は「亀」。なんとも重そうに鳥居を背中に担いでいます。

元々、台石のことを「亀腹」ともいいますが、「穴八幡宮」の台石は文字通りの「亀」です。

「穴八幡宮」の創建は1062年と古く、大変歴史のある神社です。

1641年(寛永18年)、神社の番をする宮守の庵を建てようと、山裾を切り拓くと横穴を発見。その中から御神像が現れたことから、「穴八幡宮」と称して徳川家の祈願所になりました。

出世、金運、開運のご利益がある神社で、毎年冬至から節分までの間にのみ授与される「一陽来腹御守」というお守りは、金運アップに絶大な効果を発揮すると人気を集めています。

穴八幡宮
住所:〒162-0051 東京都新宿区西早稲田2丁目1−11
電話:03-3203-7212

 

お寺の変形鳥居

愛知県名古屋市・徳林寺

明治維新によって幕藩体制が終わり、神仏分離の名による廃仏毀釈が進められる中で、古来からの神仏混淆の流れも閉ざされましたが、いまだにその名残として寺の中に鳥居が見られることがあります。

ここ「曹洞宗・相生山徳林寺」にある鳥居は、そうした鳥居とは趣を異にし、非常に特殊な形をしています。

鳥居の奥に見えるのは、ベトナムから招来したという重さ3トンの巨大梵鐘が納められた塔です。中国や東南アジア地域の建築様式を融合したような日本建築にはない独特な作り。

「徳林寺」は "開かれたお寺" をモットーに、30年以上前からアジアやアフリカなどから難民や、留学生を受け入れており、神仏混淆どころか、世界の宗教、伝統、文化をすべからく許容する「ミクスチャー寺院」といってもよい存在です。

お寺を開放したイベントや、地域活動も盛んです。

境内に入ると、そこは東南アジア。旅をした気分に浸れます。

徳林寺
住所:〒468-0037 愛知県名古屋市天白区野並相生
電話:052-896-1606
HP:http://www.aioiyama.net/

 

参考文献

『鳥居 百説百話』川口謙二、池田孝、池田政弘著 東京美術
『鳥居』谷田博幸著 河出書房新社

久保多渓心 のプロフィール

久保多渓心

画家の父、歌人の母のもと、福岡市博多区で生まれる。

バンド活動を経て、DJ、オーガナイザーとしてアート系イベント、音楽イベントなどを多数手掛ける傍ら、フリーライターとしても活動。

音楽雑誌でのアーティスト・インタビュー記事、書籍、フリーペーパー、WEBなどの媒体で政治、社会問題から、サブカルチャー、オカルトまで幅広いジャンルでコラムを執筆。

引きこもり、不登校、心の病など自身の経験を活かし「ピアカウンセリング」を主軸にしたコミュニティを立ち上げる。後にひきこもり支援相談士として当事者やその家族のサポート、相談活動にあたる。

現在は亡き父から継承した一子相伝の墨を用いた特殊な占術『篁霊祥命』や、独自のリーディングによって鑑定活動を行っている。2021年で鑑定活動は16年目を迎える。

月参り、寺社への参拝による開運術の指導なども行う。

『AGLA(アグラ)』スーパーバイザーを務める。

2020年10月より活動名をマーク・ケイより、久保多渓心に改名。

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