2021.4.28
【陶器の鳥居・遺跡鳥居・湾曲鳥居!】行ってみたくなる、変わりダネ鳥居⑧

今回も、全国の珍しい鳥居をご紹介いたします。
陶山(すえやま)神社
最初にご紹介するのは、文化庁の登録有形文化財に指定される磁器製の鳥居。
有田焼で有名な佐賀県有田町に鎮座する「陶山(すえやま)神社」の象徴的存在であるこの磁器製鳥居は、高さ3.7m、幅3.9mの大きさで、明治21年に奉納されたものです。
有田泉山の陶石から作られた白磁に、唐草紋様が天然の呉須によって描かれています。経年により欠けや、ひび割れが見られたため、昨年初頭より修復作業が行われ、現在では建立当時の鮮やかな色合いを取り戻しています。
長崎市八幡町の「宮地嶽八幡神社」にも、有田焼の磁器製鳥居があります。

修復前の磁器鳥居

繊細な唐草紋様が美しい

宮地嶽八幡神社の磁器製鳥居(長崎県長崎市)
住所:〒844-0004 佐賀県西松浦郡有田町大樽2丁目5−1
HP:http://arita-toso.net
宮地嶽八幡神社
住所:〒850-0801 長崎県長崎市八幡町8
清池(しょうげ)の石鳥居

桜の名所でもある清池の石鳥居
前回ご紹介した「元木の石鳥居」などと並んで、「最上の三鳥居」の一つに数えられる「清池(しょうげ)の石鳥居」。
ご覧の通り、笠木と島木があることから「明神鳥居」であることが分かりますが、その下にあるべき貫や額束がありません。柱の上部には貫が貫通していた穴が開いていますので、何らかの原因で破損し、笠木と島木、それに柱だけになってしまっているようです。
まるで、太古の遺跡のような風格があります。
元木の石鳥居は、山岳信仰のメッカである瀧山の方を向いて建っていましたが、こちらの鳥居は東に位置する宝珠山・立石寺(山寺)を向いて建っています。瀧山同様、円仁によって開山された立石寺は、東北を代表する霊山として知られます。
石鳥居は、巡拝路の起点の役割を果たしていたのでしょう。
平安時代末期に作られたと見られる、非常に古い貴重な鳥居です。

貫が差し込まれていたと思われる穴

立石寺・開山堂
宗像大社

織女神社(画像:筆者)
神明鳥居の笠木の、向かって右側(鳥居の左側)が太く、上方に反り上がっているのが分かります。
これは向かって右側を樹木の根本(元口)、左側を梢・先端(末口)にしているからです。つまり、太く反り上がっている側は、木の根本というわけです。
鳥居の原型をイメージさせるこのタイプの鳥居が、数多くあるのが2017年に「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群の構成資産の一つとして世界文化遺産登録された「宗像大社」三社のうちの一社、「湍津姫神(タギツヒメノカミ)」をご祭神とする「中津宮」が鎮座する宗像大島です。
中津宮・本殿へと至る階段左手前に鎮座する「織女(しょくじょ)神社」の鳥居、「夢の小夜島」の鳥居、湍津姫神降臨の地である「御嶽(みたけ)神社」への参道入り口の鳥居などがそうです。

織女神社(画像:筆者)

夢の小夜島(画像:筆者)

御嶽神社参道の鳥居
また、以前ご紹介した「大魚神社」の鳥居もこのタイプのものですが、よく見ると貫は柱から突き出ており、楔(くさび)も打ち込まれています。両脇には控柱もあり、何より後ろに見えている2基目の鳥居の笠木は、元口、末口が逆になっているハイブリッドタイプです。

大魚神社・海中鳥居
宮坂八剣神社の湾曲鳥居

雰囲気ある佇まいの宮坂八剣神社の鳥居
茅野市街地のメルヘン街道から、人気の観光スポット「御射ヶ池」を経て、八ヶ岳中腹の渋の湯を結ぶ国道152号線(通称・湯みち街道)沿いにひっそりと佇む、小さな祠と御神木。
三基の鳥居が並んでいますが、視線が釘付けになってしまうのは一番右の鳥居です。
笠木と貫が、への字に湾曲しています。
なぜ、このような形なのでしょうか。
木製であることは間違いありませんが、どのように加工したのか謎です。
この地からほど近い諏訪市には、「八千矛神(ヤチホコノカミ)」、「日本武尊(ヤマトタケルノミコト)」、「誉田別尊(ホンタワケノミコト)」をご祭神とする「八剱(やつるぎ)神社」があります。この八剣神社は「御神渡り神事」が行われる神社として、全国的にも有名です。
「宮坂」とは、熱田神宮に仕えた神職であり、のちに熱田神宮を当地へ分祀した宮坂氏のことであると思われます。また、三基ある鳥居は諏訪市の八剱神社に祀られた三柱の神に、それぞれ対応しているのかもしれません。

諏訪湖の御神渡り
住所:〒391-0211 長野県茅野市 湖東堀4879
八剱神社
住所:〒392-0024 長野県諏訪市小和田13−18
参考文献
『鳥居 百説百話』川口謙二、池田孝、池田政弘著 東京美術
『鳥居』谷田博幸著 河出書房新社
久保多渓心 のプロフィール

画家の父、歌人の母のもと、福岡市博多区で生まれる。
バンド活動を経て、DJ、オーガナイザーとしてアート系イベント、音楽イベントなどを多数手掛ける傍ら、フリーライターとしても活動。
音楽雑誌でのアーティスト・インタビュー記事、書籍、フリーペーパー、WEBなどの媒体で政治、社会問題から、サブカルチャー、オカルトまで幅広いジャンルでコラムを執筆。
引きこもり、不登校、心の病など自身の経験を活かし「ピアカウンセリング」を主軸にしたコミュニティを立ち上げる。後にひきこもり支援相談士として当事者やその家族のサポート、相談活動にあたる。
現在は亡き父から継承した一子相伝の墨を用いた特殊な占術『篁霊祥命』や、独自のリーディングによって鑑定活動を行っている。2021年で鑑定活動は16年目を迎える。
月参り、寺社への参拝による開運術の指導なども行う。
『AGLA(アグラ)』スーパーバイザーを務める。
2020年10月より活動名をマーク・ケイより、久保多渓心に改名。