2021.4.30
【賽銭箱鳥居・渦巻鳥居・カラフル鳥居】行ってみたくなる、変わりダネ鳥居⑨

早くも9回目を迎えた「行ってみたくなる、変わりダネ鳥居」。
変わった形の鳥居、不思議な鳥居は全国にこんなに多くあるんですね。
あまりに当然のようにそこにあり、普段は注目することがほとんどない鳥居。この連載をきっかけにして鳥居や、神社仏閣に少しでも興味を持っていただければ幸いです。
コロナ禍が落ち着きを見せた暁には、ご紹介した鳥居を是非、実際に現地に赴いてご覧ください。
元乃隅稲成神社
今や、観光地としても有名になった山口県長門市の「元乃隅稲成神社」。海へ向かって立ち並ぶ、123基の朱の鳥居は圧巻です。
この境内に建つ大鳥居には、他の神社にはないものがついています。
3匹の白狐が天を駆けている、その中央、額束の下に賽銭箱が設置されているのです。ここに見事、賽銭を投げ入れることができれば願いが叶うのだとか。
試してみたくなりますね!

賽銭を投げ入れる参拝客

123基の朱の鳥居
円応寺
温泉の町、佐賀県武雄市にある曹洞宗の寺院「円応寺」の参道には、約100本の桜の木が立ち並び、春には美しい桜のトンネルが現れます。
この参道入り口にあるのが、平成5年に武雄市の重要文化財の指定を受けた、不思議な形をした鳥居。
これまでご紹介してきたお寺の鳥居には、異形の鳥居が多くありましたが、この円応寺の鳥居も例外ではありません。
強い反りのある笠木は、両端が渦を巻き、貫には彫刻が施され、額束には横書きで「白雲関」の文字が刻まれています。柱には「寛政十年」と築造年が、また願主や施主の銘も彫られています。

円応寺参道の桜のトンネル
参道の桜のトンネルをくぐった先には、趣のあるアーチ型の石門が見えてきます。
この石門には切妻型の屋根がついており、両脇には小さな石塀があります。正面アーチ上部には第28代武雄領主・鍋島茂義筆の「西海禅林」の額石がはめ込まれています。

アーチ型石門
住所:〒843-0024 佐賀県武雄市武雄町10513
カラフル鳥居
鳥居といえば、石造のもの、朱色のものが大半ですが、なかには目を見張るような鮮やかな色彩の鳥居もあります。ここでは、全国各地の様々なカラーの鳥居を見てみましょう。
山津見神社(ピンクの鳥居)
北海道網走郡大空町・藻琴山の麓の丘陵地に、一面ピンクの絨毯が敷き詰められたかのような芝桜が咲き誇る場所があります。ここは「ひがしもこと芝桜公園」。
芝桜の開花時期に合わせ、毎年5月3日に開園する「ひがしもこと芝桜公園」には、キャンプ場や日帰り温泉、釣り堀やゴーカート場なども併設しており、家族連れで大変賑わっています。
そんな公園の一角に建っているのが、目にも鮮やかなピンクの鳥居。
園内に鎮座する「山津見神社」の鳥居です。
ご祭神は「大山津見神(オオヤマツミノカミ)」で、大正2年に福島県相馬郡飯舘村の山津見神社より、この地に勧請されました。
農業、狩猟、商売繁盛、良縁、安産、子宝、旅行安全、交通安全など、多くのご神徳があるといわれています。
フォトジェニックなピンクの鳥居と記念撮影をしてみたくなる神社です。

山津見神社

見頃を迎えた芝桜
寳登山神社・唐津神社(白い鳥居)

寳登山神社・二の鳥居
白い鳥居は全国に見られますが、その中でもとりわけ美しく威厳のある佇まいを見せるのが、埼玉県秩父郡長瀞町の豊かな自然に包まれた宝登山の山麓に鎮座する「寳登山(ほどさん)神社」の二の鳥居。
笠木の屋根の部分は黒く縁取りされ、島木と貫、額束には金の装飾金具が施されています。このカラーリングのバランスが絶妙で美しいのです。
こうした装飾の美しさは、本殿にも踏襲されています。別当寺(*)であった玉泉寺住職の榮乗が心血を注いで再建したといわれるこの本殿も素晴らしく荘厳な出立ちで、新緑にとてもよく映えます。
別に本職のある者が、他の職を兼務することを指す。主に神仏習合の時代に、神社を管理するために置かれた寺のこと。

寳登山神社・本殿
一方、余分な色を加えず全面白で統一した眩い美しさなのが、佐賀県唐津市の「唐津神社」の鳥居です。
この唐津神社の秋季例大祭にあたる「唐津くんち」では巨大な曳山(やま)を曳いての巡行が行われ、期間中50万人の人出で賑わいます(令和2年は中止)。
筆者は10代の頃、この唐津くんちの露天屋台でリンゴ飴を売るアルバイトをしたことがありました。懐かしい・・・

唐津神社の白鳥居
港神社・石垣宝来宝来神社(青い鳥居)
青い鳥居が目を引く、海辺の社「港神社」。
昨年暮れにTwitterの投稿で注目を集め、一躍人気スポットとなりました。
漁業関係者の安全を守るために、龍神が祀られています。
日本最南端の神社、沖縄県石垣島に鎮座する「石垣宝来宝来(ほぎほぎ)神社」には、南国らしい美しい青い鳥居があります。貫からはマリンベルが吊るされており、これを鳴らして鳥居をくぐり、参拝します。
石垣宝来宝来神社では、日中の参拝と、日没後の参拝の、「二度参り」という参拝方法をすることで祈願が成就されるといわれています。また、宝くじ当選のご利益のある神社としても知られています。
青い鳥居としては他に、宮崎県の「速開都比売神社」、福島県の「小名浜諏訪神社」などが有名です。

石垣宝来宝来神社(沖縄県石垣市)
住所:〒882-0016 宮崎県延岡市東海町
石垣宝来宝来神社
住所:〒907-0022 沖縄県石垣市大川 宇志原1134番1
HP:https://www.ishigaki-hogi.or.jp
速開都比売神社
住所:〒881-1122 宮崎県西都市大字片内字湯之内11843番地3
小名浜諏訪神社
住所:〒971-8161 福島県いわき市小名浜諏訪町23−1
猿投神社(黄色い鳥居)
愛知県豊田市の猿投山の麓に鎮座する「猿投(さなげ)神社」には、黄色い鳥居があります。また、兵庫県丹波篠山市の戦国時代の山城跡に鎮座する「城山稲荷神社」にも、黄色の鳥居が建っています。
先ほどご紹介した青い鳥居が、海や川といった水辺に鎮座する神社に建立されているのに対して、黄色の鳥居は山の麓や中腹など、山間部に鎮座する神社に建立されているのが特徴といえるでしょう(例外もあるようです)。
これは、陰陽五行に基づいたものと考えられます。
青は五行の「木」、方位の「東」を、黄はそれぞれ「土」と「中央」を意味します。四神相応では、東の方位は「青龍」に相当することもあり、前述の港神社のご祭神は龍神であり、鳥居は青だったのかもしれません。もちろん、龍神は水の神であるため海難除災、豊漁を祈願する対象でもあったのでしょう。
また、黄の五行である土、方位である中央は、山頂を表しています。山の麓や、中腹に鎮座する神社に黄色の鳥居が建てられていることが多いのは、信仰対象となっている山の御神気を鎮座地に集約させるためなのであろうと思われます。当然、これは修験道や山岳信仰とも密接につながるものです。
稲荷社というところでいえば、このような考え方も成り立ちます。
中国最古の字典『説文解字(せつもんかいじ)』の「狐」の項には、「狐、有三徳。其色中和。小前大後。死則丘首。謂之三徳」とあります。
狐には、「その色が中和であること」「前が小さく、後ろが大きいこと」「死ぬときは故郷の丘に首を向けること」の、三つの徳があるというのです。
中和は、五行において黄色を意味し、黄色は狐の色を表しています。五行で中央に位置する黄色は尊い色であり、土気を象徴します。
五行では「木生火(木は燃えて火を生む)」「火生土(物が燃えた後には灰が残り、灰はいずれ土に還る)」「土生金(土の中に鉱物や金属があり、掘ればそれらを得ることができる)」「金生水(金属の表面に水が生じる)」「木生水(木は水によって成長する)」といった相生(そうせい)といわれる関係性が基本にあります。
稲荷社といえば朱の鳥居がイメージされますが、五行相生の「火生土」、つまり朱(赤)が、土気(狐)を生じ、顕現させる、朱の鳥居を数多く並べ建てることによって、その頂上に稲荷神の出現を乞い願ったとの見方もできるでしょう。黄色の鳥居は、その最たる象徴かもしれません。
同時に朱の鳥居は、腐蝕防止と魔除けの効果以外の意味もあったということになります。
鳥居は、古の人々の思想が結実したものであることが分かりますね。
住所:〒470-0361 愛知県豊田市猿投町大城5
城山稲荷神社
住所:〒669-2154 兵庫県丹波篠山市今田町市原218
参考文献
『鳥居 百説百話』川口謙二、池田孝、池田政弘著 東京美術
『鳥居』谷田博幸著 河出書房新社
久保多渓心 のプロフィール

画家の父、歌人の母のもと、福岡市博多区で生まれる。
バンド活動を経て、DJ、オーガナイザーとしてアート系イベント、音楽イベントなどを多数手掛ける傍ら、フリーライターとしても活動。
音楽雑誌でのアーティスト・インタビュー記事、書籍、フリーペーパー、WEBなどの媒体で政治、社会問題から、サブカルチャー、オカルトまで幅広いジャンルでコラムを執筆。
引きこもり、不登校、心の病など自身の経験を活かし「ピアカウンセリング」を主軸にしたコミュニティを立ち上げる。後にひきこもり支援相談士として当事者やその家族のサポート、相談活動にあたる。
現在は亡き父から継承した一子相伝の墨を用いた特殊な占術『篁霊祥命』や、独自のリーディングによって鑑定活動を行っている。2021年で鑑定活動は16年目を迎える。
月参り、寺社への参拝による開運術の指導なども行う。
『AGLA(アグラ)』スーパーバイザーを務める。
2020年10月より活動名をマーク・ケイより、久保多渓心に改名。