2021.5.14
【屋根付き鳥居の豊富なバリエーション】行ってみたくなる、変わりダネ鳥居⑪

先日、「行ったみたくなる、変わりダネ鳥居」の連載をきっかけに、寺社参拝の楽しみ方が広がったというお言葉をかけていただきました。
ご利益や、ご朱印、お守りだけではない寺社の味わい方があることを、私のコラムを通して知っていただければ幸いです。
「寺社は神仏とのご縁を結ぶテーマパーク」が私の口癖。
どうぞ、自分の住む街を散策しながら、寺社の醍醐味を味わってみてください。
屋根付き鳥居のいろいろ
長老神社
屋根付きの鳥居は、宮島は「厳島神社」の大鳥居(両部鳥居)などにみられる特徴です。
厳島神社のような控柱(稚児柱)のある鳥居以外にも、屋根付きの鳥居はあります。
紅葉の名所として有名な、宮城県刈田郡七ヶ宿町に鎮座する「長老神社」。
南蔵王七ヶ宿線(県道51号線)を、長老湖へと向かう道すがら、左の車窓の木々の間に朱の鳥居がわずかに見えます。そこに神社があることを知らないと通り過ぎてしまいそうなくらい、ひっそりと佇む神社です。
戦後、この地域に入植した開拓民の方々が、土地を守る神を丁重に祀ったものだそうです。
この長老神社の、赤い鳥居には大きな屋根が付いています。鳥居に付いている屋根はほとんど申し訳程度に付いているものが多いのですが、こちらの鳥居はかなり立派です。
これだけの屋根があれば、雪の日でも鳥居が雪で埋もれることはありませんね。
*両部鳥居については以下を参照ください。
住所:〒989-0508 宮城県刈田郡七ヶ宿町長老166
白峰宮
皇位継承をめぐる内乱、保元の乱によって失脚した崇徳上皇が讃岐に配流されたあと、崩御するまで幽閉されていたとされる地に鎮座するのが、この「白峰宮」です。
上皇の崩御後、荼毘に伏すまでの間、この地にある冷泉「八十蘇場(やそば)の清水」に遺体を浸しておいたところ、約1ヶ月の間まったく腐敗しなかったばかりか、幽閉されていた御所から神光が発せられたという伝承が残されています。このことから白峰宮は「明ノ宮(あかりのみや)」とも呼ばれています。
白峰宮は、真言宗御室派の寺院「高照院天皇寺(明治期までは金華山妙成就寺摩尼珠院)」の境内に鎮座しています。怨霊と化した上皇の御霊を鎮めるため祭神として祀り、崇徳天皇社として造営されたのが始まりです。天皇寺は白峰宮の別当寺(*)だったのです。
奈良・東大寺大仏の造立責任者として知られる行基により開山され、空海によって中興された天皇寺は神仏習合の地、金山の麓に建立された古刹です。
この白峰宮の鳥居は、大神神社、三峯神社で有名な「三輪鳥居(三ツ鳥居)」を基本形としていますが、随所に珍しい箇所があります。
まず、三輪鳥居でありながら屋根をもつこと。そして朱の鳥居であること。脇鳥居が内側に閉じていること。中央の鳥居の柱部分が石と木で構成されていることなどが挙げられます。
鳥居の左にある下乗石(*)は、源頼朝の寄進とされています。
別に本職のある者が、他の職を兼務することを指す。主に神仏習合の時代に、神社を管理するために置かれた寺のことを指す。
*下乗石
社寺の境内など、聖地とされる清浄な場所では、どんな貴人であっても馬を下りなければならなかった。その馬を繋いでおく石のこと。つまり、この下乗石は結界にあたる。
三輪鳥居については以下をご参照ください。
住所:〒762-0021 香川県坂出市西庄町1719
車折神社
芸能・芸術の守護神として崇敬され、数々の芸能人が玉垣を奉納することで知られる「車折神社」は、嵐山の人気スポットです。
この三条通側の参道入口にある鳥居が、大変特徴的なのです。
屋根があることはもちろん、柱の中央部分には藁座(*)が設けられ、根本は黒く塗られています。さらに、笠木と貫の先端には金の装飾がある豪華な作りです。
一見すると明神鳥居のようですが、笠木と貫が水平で、島木もなく、柱に転び(柱が傾斜していること)もほとんどないことから、神明鳥居であることがわかります。
残念ながら、現在では撤去されています。
柱に板や竹を巻き付けたもの。根巻ともいう。
参考文献
『鳥居 百説百話』川口謙二、池田孝、池田政弘著 東京美術
『鳥居』谷田博幸著 河出書房新社
久保多渓心 のプロフィール

画家の父、歌人の母のもと、福岡市博多区で生まれる。
バンド活動を経て、DJ、オーガナイザーとしてアート系イベント、音楽イベントなどを多数手掛ける傍ら、フリーライターとしても活動。
音楽雑誌でのアーティスト・インタビュー記事、書籍、フリーペーパー、WEBなどの媒体で政治、社会問題から、サブカルチャー、オカルトまで幅広いジャンルでコラムを執筆。
引きこもり、不登校、心の病など自身の経験を活かし「ピアカウンセリング」を主軸にしたコミュニティを立ち上げる。後にひきこもり支援相談士として当事者やその家族のサポート、相談活動にあたる。
現在は亡き父から継承した一子相伝の墨を用いた特殊な占術『篁霊祥命』や、独自のリーディングによって鑑定活動を行っている。2021年で鑑定活動は16年目を迎える。
月参り、寺社への参拝による開運術の指導なども行う。
『AGLA(アグラ)』スーパーバイザーを務める。
2020年10月より活動名をマーク・ケイより、久保多渓心に改名。