2021.5.17
【扁額屋根付鳥居・肥前鳥居・変形唐破風鳥居】行ってみたくなる、変わりダネ鳥居⑫

扁額屋根付き鳥居
前回は、屋根付きの鳥居の様々なバリエーションをご紹介しました。
前回は全て、笠木の全体を覆う屋根でしたが、今回は神社名が書かれた扁額部分だけを覆う屋根が付いている鳥居です。
これには大きく分けて、三つの屋根のパターンがあります。

平泉寺白山神社

大宮八幡宮境内社・大宮天満宮
一つは、この三角屋根の形状です。これを「切妻(きりつま)屋根」といいます。屋根の形状では最もポピュラーなものですね。

諏訪神社

長尾神社(奈良)
二つめが、屋根の中央部分が丸みを帯びた形状のもの。これを「唐破風(からはふ)屋根」といいます。
鳥居の種類で「唐破風鳥居」がありますが、こちらは笠木と島木が丸みを帯びた形状をした鳥居です。
(*「唐破風鳥居」についてはこちらをご参照下さい)

菅大臣神社

伊豆神社
最後は、屋根というよりも「庇(ひさし)」といった方が適切かもしれない屋根です。しかし、よく見ると切妻を横向きにして笠木に乗せていることが分かります。
お近くの神社で、これ以外の変わったかたちの扁額屋根があれば、どうぞお知らせ下さい!
住所:〒911-0822 福井県勝山市平泉寺町平泉寺56
HP:http://heisenji.jp
諏訪神社
住所:埼玉県深谷市血洗島117
菅大臣神社
住所:〒600-8444 京都府京都市下京区菅大臣町187
肥前鳥居

稲佐神社
上の画像を見てすぐにお気づきかと思いますが、笠木と貫の間が異様に狭く、笠木と島木が一体化し、その先端は反り上がっています。また、柱や笠木・貫が三本継ぎになって、とても太いのが明神鳥居の一形態「肥前鳥居」の特徴です。
代表的なのは福岡市の「筥崎宮」の鳥居で、別名「筥崎鳥居」ともいわれます。「肥前」というくらいですから、分布が最も多いのは佐賀県になります。
杵島郡白石町に鎮座する「稲佐神社」の肥前鳥居は、佐賀県内では最古のものとなり、天正13年(1585年)に造立されています。今年の春に、県の重要文化財に指定されました。
画像からも、その歴史が偲ばれます。額束がとても小さくて、可愛いですね!
「與止日女(よどひめ)神社」の三ノ鳥居は、慶長13年(1608年)に佐賀初代藩主の鍋島勝茂公が寄進したもので、市の重要文化財に指定されています。こちらには大きな台石が置かれています。
神埼市の「櫛田宮」の二ノ鳥居は慶長7年(1602年)造立、「與賀(よか)神社」の三ノ鳥居は慶長8年(1603年)造立の古いものです。
肥前鳥居は、いずれも1500年代後半から1600年代前半の、ごく短い期間に佐賀県を中心にした北部九州だけに造立された鳥居であり、どんな経緯でこのような形状になったかは不明・・・謎の多い鳥居なのです。

與止日女神社

與賀神社
住所:〒849-1206 佐賀県杵島郡白石町辺田2925
與止日女神社
住所:〒840-0214 佐賀県佐賀市大和町大字川上1−1
HP:https://yodohime-jinja.jimdo.com/
櫛田宮
住所:〒842-0001 佐賀県神埼市神埼町神埼419−1
HP:http://www5b.biglobe.ne.jp/~kusidagu/
與賀神社
住所:〒840-0047 佐賀県佐賀市与賀町2−50
HP:https://yokajinjya.sagafan.jp
変形唐破風鳥居

貫と額束のない唐破風鳥居
福岡市早良区と、佐賀県神埼市の境にそびえる標高1,054.6mの脊振山(せふりさん)。
天竺から弁財天を乗せて飛んで来た龍が、この山の上空で背びれを打ち振ったことから「脊振」の名がついたといわれています。
古くは空海、最澄、栄西といった密教の高僧たちが航海安全を祈願するために訪れ、山岳宗教の修行場として栄えた霊峰です。
日本三百名山の一つに数えられる脊振山。勢いよく流れる清流と、メタセコイア並木が美しい登山道は、春から夏にかけて多くの登山者で賑わいます。
脊振山頂には、「脊振神社・上宮」が鎮座しています。冬季は積雪により登山が困難になるため、佐賀県側の中腹には下宮が建立されました。
上宮の石の祠には弁財天と、市杵嶋姫命(イチキシマヒメノミコト)が御神体として祀られています。
この頂上の上宮の鳥居が少し変わっています。
基本形は「唐破風鳥居」なのですが、貫も額束もありません。よく見ると笠木と島木の部位と、柱の部位がそれぞれ色が異なります。
何らかの原因で倒壊した唐破風鳥居の笠木と島木の部位を、元々柱だけが建っていたところに乗せたものと考えられます。

後ろに見えるのは航空自衛隊のレーダー基地

左には福岡市街地、右には佐賀平野が広がる
住所:〒842-0203 佐賀県神埼市早良区脊振町服巻
参考文献
『鳥居 百説百話』川口謙二、池田孝、池田政弘著 東京美術
『鳥居』谷田博幸著 河出書房新社
久保多渓心 のプロフィール

画家の父、歌人の母のもと、福岡市博多区で生まれる。
バンド活動を経て、DJ、オーガナイザーとしてアート系イベント、音楽イベントなどを多数手掛ける傍ら、フリーライターとしても活動。
音楽雑誌でのアーティスト・インタビュー記事、書籍、フリーペーパー、WEBなどの媒体で政治、社会問題から、サブカルチャー、オカルトまで幅広いジャンルでコラムを執筆。
引きこもり、不登校、心の病など自身の経験を活かし「ピアカウンセリング」を主軸にしたコミュニティを立ち上げる。後にひきこもり支援相談士として当事者やその家族のサポート、相談活動にあたる。
現在は亡き父から継承した一子相伝の墨を用いた特殊な占術『篁霊祥命』や、独自のリーディングによって鑑定活動を行っている。2021年で鑑定活動は16年目を迎える。
月参り、寺社への参拝による開運術の指導なども行う。
『AGLA(アグラ)』スーパーバイザーを務める。
2020年10月より活動名をマーク・ケイより、久保多渓心に改名。