【埋没鳥居・大蛇鳥居・七色鳥居】行ってみたくなる、変わりダネ鳥居⑬

2021.5.21

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久保多渓心 ( ライター・占術家 )

墨が織り成す一子相伝の占術 “篁霊祥命(こうれいしょうめい)” を主な鑑定手法とする占術家。他にも文筆家やイベント・オーガナイザーとしての顔も持つ。また引きこもり支援相談活動なども行なっている。

『行ってみたくなる、変わりダネ鳥居』も13回を迎えます。

鳥居は神社の入り口。神社への興味と学びの入り口にもなります。

鳥居に興味をもつと、街を歩く楽しみも深まります。

現在は、コロナ禍で不要不急の外出が憚れる時期ではありますが、記事を通して想像力の旅にお出かけ下さい。

 

椎取神社

以前、桜島の黒神地区と、大阪の玉造稲荷神社の「埋没鳥居」をご紹介しました。いずれも明神鳥居で、貫から下の柱が埋没している状態でした。額束なども残っているため、鳥居であることは一目瞭然です。

今回ご紹介する三宅島の「椎鳥(しいとり)神社」の埋没鳥居は、笠木から下が完全に埋まっているため、遠目では一本の丸太が地面に置かれているように見えます。

これは2000年の三宅島の噴火によって、大量の泥流が社殿と鳥居を飲み込んだもの。島内はこうした泥流の発生や、火山ガスの影響で生態系に深刻なダメージを被りましたが、現在は回復過程にあり、緑もよみがえりつつあるといいます。

椎鳥神社は延喜式内社に数えられる由緒ある神社で、かつては「志理太宣(しりたき)神社」といいました。ご祭神は「志理太宣命(シリタキノミコト)」。

平安時代に三宅島に来島した壬生氏(みぶし)が奉斎した「三島大明神」の第三后神「佐伎多麻比咩命(サキタマヒメノミコト)」の、八王子のうち五番目の王子「したい」が志理太宣命であるといわれています。

 

(*埋没鳥居については以下をご参照下さい)

かろうじて見える扁額、背後には社殿の屋根が見える

再建された椎鳥神社の社殿と鳥居

椎鳥神社
住所:〒100-1101 東京都三宅村

 

 

奥澤神社

目が丸くて可愛い、鳥居に飾られた大蛇。

自由が丘と田園調布に挟まれた、世田谷区の閑静な住宅街「奥沢」に鎮座する「奥澤神社」。

江戸中期頃、奥沢に疫病が流行し、多くの人々が犠牲になったといいます。そんな折、この村の名主の夢枕に八幡大神が現れて、「藁でつくった大蛇を村人が担ぎ、村内を巡行させると良い」とのお告げを受けました。

村人たちがさっそくその通りにすると、疫病は収まり、村には平穏が戻ったのです。

奥澤神社では、9月の第1日曜日に氏子らが集まって大蛇作りを行い、完成した大蛇は9月の第2土曜日に「大蛇お練り行事」として巡行を行ったあと、1年間、社殿に安置されます。その後、神職の修祓が行われ、鳥居に巻きつけられます。1年毎に大蛇は新しく作られ、巡行を経て鳥居に掲げられるのです。

大蛇お練りは、東京都の無形民俗文化財に指定されています。

 

奥澤神社・社殿

奥澤神社
住所:〒158-0083 東京都世田谷区奥沢5丁目22−1

 

足利織姫神社

栃木県足利市西宮町に鎮座する「足利織姫神社」。

1200年以上の歴史と伝統をもつ足利織物の守り神として、宝永2年(1705年)に足利藩主の戸田忠利により創建され、1879年(明治12年)現在の織姫山に遷宮されました。

その翌年に火災によって社殿などが消失し、しばらくは仮宮のままでしたが、1937年(昭和12年)に平等院鳳凰堂をモデルとした現在の、美しい社殿が再建されました。

この織姫神社には、何ともカラフルな鳥居が建っています。

以前、ご紹介した「カラフル鳥居」は、それぞれの社に珍しいカラーリングの鳥居が1基建てられていましたが、こちらの鳥居は、何基もの「七色鳥居」が立ち並んでいます。

この七色の鳥居をくぐって参拝することで、縁結びのご利益があるとされます。

七色の鳥居には、以下のような意味があります。これは織姫神社の御神徳でもあります。

1. よき人と縁結び
2. よき健康と縁結び
3. よき知恵と縁結び
4. よき人生と縁結び
5. よき学業と縁結び
6. よき仕事と縁結び
7. よき経営と縁結び

*七色はそれぞれ、朱・赤・青・黄・緑・黄緑・紫色。

珍しい紫鳥居、他には鹿児島県の大釈天宮などにみられる

赤と黄緑の鳥居

青空に映える壮麗な社殿

ライトアップされた社殿

(*カラフル鳥居については以下をご参照下さい)

足利織姫神社
住所:〒326-0817 栃木県足利市西宮町3889
HP:https://www.orihimejinjya.com/

 

参考文献

『鳥居 百説百話』川口謙二、池田孝、池田政弘著 東京美術
『鳥居』谷田博幸著 河出書房新社

久保多渓心 のプロフィール

久保多渓心

画家の父、歌人の母のもと、福岡市博多区で生まれる。

バンド活動を経て、DJ、オーガナイザーとしてアート系イベント、音楽イベントなどを多数手掛ける傍ら、フリーライターとしても活動。

音楽雑誌でのアーティスト・インタビュー記事、書籍、フリーペーパー、WEBなどの媒体で政治、社会問題から、サブカルチャー、オカルトまで幅広いジャンルでコラムを執筆。

引きこもり、不登校、心の病など自身の経験を活かし「ピアカウンセリング」を主軸にしたコミュニティを立ち上げる。後にひきこもり支援相談士として当事者やその家族のサポート、相談活動にあたる。

現在は亡き父から継承した一子相伝の墨を用いた特殊な占術『篁霊祥命』や、独自のリーディングによって鑑定活動を行っている。2021年で鑑定活動は16年目を迎える。

月参り、寺社への参拝による開運術の指導なども行う。

『AGLA(アグラ)』スーパーバイザーを務める。

2020年10月より活動名をマーク・ケイより、久保多渓心に改名。

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