ハワイの植物療法を支える「カヌープランツ」『ひっそりと息づく、真のハワイアンヒーリングを求めて(連載第2回)』

2022.11.25

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Ki'i ( アロマセラピスト&ハーバリスト )

ハワイ在住のアロマセラピスト&ハーバリスト。フラワーエッセンスプラクティショナー。古代ハワイアンヒーリング、ホ・オポノポノプラクティショナー。

Plants used in La’au lapa’au
〜ハワイの植物療法で使われる植物〜

ケ・ブランリ美術館所蔵「ロノ像」, CC BY-SA 2.0 FR

古代ハワイアンヒーリングの一つである、ハワイの植物療法「ラアウ・ラパアウLa’au lapa’au)」は、古代ハワイから、「カフナ・ラアウ・ラパアウKahuna la’au lapa’au)」と呼ばれるお薬の専門家によって、大切に伝承されてきました。

ハワイ諸島に到達したポリネシア人によって選ばれた、ハワイの豊饒、農業、降雨、音楽、平和の神 ロノ (Lono)。ロノは、カフナ・ラアウ・ラパアウとして、ハワイの植物療法のルーツとなる技術と知識を、ハワイ諸島の人々に伝授していった伝説もあります。

この伝承方法は伝説の中に留まらず、現在も、カフナ・ラアウ・ラパアウに選ばれた人たちによって受け継がれています。

ハワイの植物療法の伝統では、その家庭やコミュニティで生まれた子供が5歳になると、カフナ・ラアウ・ラパアウによる指導が始まります。

そして、薬用としての植物、その効果や価値、それぞれの植物が生息するエリア、収穫方法や準備・管理方法など、包括的な指導を受け、植物学(botany)、薬学(pharmacology)、医学(medicine)、3つの分野をバランス良く同時に学んでいきます。

そのため、古代ハワイでは、このような教育を受けた人々は、ある時は“薬剤師”として、またある時は“医師”としての役割を果たしていたのです。

 

私のネイティブハワイアンの植物療法のKumu / クム()先生方も、4〜5歳の時に、カフナ・ラアウ・ラパアウによる指導を受け始めたと言っていますクムになっても、カフナ・ラアウ・ラパアウになれるのはネイティブハワイアンの中のわずかな人たち)。

(※)Kumu / クム:⒈土台・基礎 ⒉先生・教師 ⒊起源・始まり ⒋目的・目標 の意味。

何十年も学び続けているだけあり、ハワイ諸島に生息する植物を細かく識別し、その特徴を熟知しています。

植物の成熟度合や旬によって植物を使い分け、適切な割合で調合してお薬を作っているのです。

彼らが把握しているハワイの植物は、海や小川の海藻、地衣類、コケ、顕花植物を含めて、約317種類、さらに、ハワイ諸島で採れる塩、粘土、海と陸の生物や動物、約12種類のミネラルを加えると合計で400種類にも及びます。

ハワイの植物療法で使われる植物は、大きく3つに分けられます。

古代からハワイ諸島の大地に生息していたハワイ固有の植物
※さらに、ハワイ固有の植物は、ハワイ諸島にのみ自生していた植物と、ハワイ諸島や他の近隣地域で自生していた植物の2つに区分されます。

ハワイ諸島に到達した古代ポリネシア人によって持ち込まれた植物

その後、ハワイ諸島を発見した外国人によって持ち込まれた植物

 

今回は、ハワイ諸島に到達した古代ポリネシア人によって持ち込まれた植物についてお話したいと思います。

 

Polynesians, First Settlers of Hawai’i
〜ハワイ諸島に到達した古代ポリネシア人〜

西暦300600年頃、「Wa'a kauluaと呼ばれる大型カヌー(2つの船体を甲板で平行に繋いだ双胴船のこと)がハワイ諸島の海岸にたどり着きました。

それらのカヌーには、多くのポリネシア人が乗っていました。

彼らのハワイ諸島への到達が、ハワイ諸島の歴史の始まりでした。

そして、彼らの乗っていたカヌーには、ハワイ諸島の伝統文化のルーツとなる要素全てが積み込まれていたのです。

元々、古代ポリネシア人は、オーストラリア大陸の北に位置するメラネシア北西部から、太平洋上を東へ航海して広がっていった「ラピタ族」のグループから生まれた民族といわれています。

太平洋に浮かぶ、まだ人間が足を踏み入れたことのない“無人島の発見”という未知の世界を夢見て、Wa'a kauluaで船上生活をしながら、航海を続けていた古代ポリネシア人。

そして、彼らは、マルケサス諸島、タヒチ、およびその他の島々…数千マイルもの距離を、Wa'a kauluaで、波に乗って移動し、太平洋上の数々の島に定住していきました。

 

古代ポリネシア人は、彼らの持って生まれた感覚やスキルで、空に輝く太陽の光や夜空に浮かぶ星や月を詠み、風や音を感じ、動物の動きや海の潮の流れを観察し、多くの神々を崇拝し、忍耐強く航海を続けた結果、ついに、虹の楽園、ハワイの島々を見つけることができたのです。

 

 

Preparation and Departure for Polynesians’ Long Voyages 
〜古代ポリネシア人の長い航海への準備と旅立ち〜

古代ポリネシア人は、太平洋上の無人島を発見し、定住するために必要なものをWa'a kauluaに乗せていました。

彼らは、新しい島の土地で植物を栽培・収穫して生活ができるよう、カヌーに載せる植物を厳選し、種子、挿し木、果実、根、繊維など様々な方法で保存していたのです。

そういった植物は、食料としてだけでなく、住居、燃料、衣料、道具、お薬を作るためのもの、宗教的・文化的な理由から持ち込むもの、彼らを癒す、心地よい香りのする美しい草木のように、ただ楽しむためのものもあります。

さらに、単純に彼らが好んで食べるお気に入りの植物もありました。

このように、古代ポリネシア人は、Wa'a kauluaで運んできた植物をハワイ諸島に持ち込んだのです。

これらの植物は、「カヌープランツ(Canoe Plants)」と呼ばれています。

その後、ハワイ諸島への航海ルートを見いだした古代ポリネシア人は、さらに多くの「カヌープランツ」をハワイ諸島にもたらしたのです。

 

 “Canoe Plants” brought to Hawai’i by Polynesians
〜古代ポリネシア人がハワイ諸島に持ち込んだ「カヌープランツ」〜

歴史によると、古代ポリネシア人が到達する前のハワイ諸島には、新鮮な魚介類は豊富にあったものの、食用のハワイ固有の植物はほとんどなく、主にシダと数種類の木の実しかありませんでした。

そのため、「カヌープランツ」は、最初にハワイ諸島に定住した古代ポリネシア人に持ち込まれて以来、何千年もの間、大切な供給源として、栽培・収穫されました。

また、カヌープランツはハワイ諸島の人々の生活を支えてきた植物であり、ハワイの伝統文化、植物療法の中でも、重要な役割を果たしてきたのでした。

古代ポリネシア人が最初に持ち込んだ「カヌープランツ」は、約24種類といわれています。

現在では、多くの「カヌープランツ」はハワイ諸島の土地にすでに帰化しているか、元々、古代ポリネシア人が栽培していた場所にそのまま残っています(中には、ハウ/Hau (Hibiscus tileaceus)や、ミロ/Milo (thespesia populnea)など、未だに「カヌープランツ」かどうか不明な植物もあります)。

そして、何世代にもわたって、「タロイモ/Kalo (Colocasia esculenta)」、「パンノキ/Ulu (Artocarpus altilis)」、「サツマイモ/‘Uala (Ipomoea batatas)」などは、主食作物として育てられ、以下の植物は、ハワイの植物療法で頻繁に利用されてきました。

アヴァ / ‘Awa (Piper methysticum)
アヴァプヒクワヒウィ / ‘Awapuhi Kuahiwi
ショウガ / Ginger (Zingiber zerumbet)
ハラ / Hala (Pandanus tectorius)
ティリーフ/ Kī (Cordyline fruticosa)
サトウキビ / Kō (Saccharum officinarum)
ククイ / Kukui (Aleurites molucana)
ママキ / Māmaki (Pipterus albidus)
ノニ / Noni (Morinda citrifolia)
ウコン /‘Ōlena (Curcuma longa)

 

 

Hawaiian Culture Cannot Survive Without Plants 
〜ハワイの伝統文化は、植物なしでは存続できない〜

「ポリネシアの双胴船」 Public domain

大型カヌーWa'a kauluaで、太平洋の大海原に勇敢に立ち向かった最初の民族、古代ポリネシア人。彼らが、何世紀にもわたって、波に乗って移動して持ち込んだ「カヌープランツ」。

それらの植物とハワイ固有の植物は、ハワイ諸島の歴史の起源であり、定住した古代ポリネシア人、そしてネイティブハワイアンの伝統文化を作り、ライフスタイルを豊かに彩ってきました。

 

古代ハワイからハワイの伝統文化を伝承してきたネイティブハワイアンの人たちは、「ハワイの伝統文化は、植物なしでは存続できない」と言います。

植物が人々の生命と伝統文化を永続させる上で不可欠な役割を果たしていることを知っているからです。

古代ポリネシア人、そしてネイティブハワイアンの人々によって慎重に選ばれ、大切に育てられてきた植物それぞれに、長い歴史と語られるべき物語があります。

それぞれの植物のルーツを辿れば、この神秘的で孤立したハワイ諸島の歴史に触れることができます。

 

そして、ハワイの伝統文化の一つである、ハワイアンヒーリング、ハワイの植物療法の学びは、ハワイの植物を観察し、理解し、その正しい用途を知り、想像力や洞察力を身につけ、スピリチュアルな心を養うことができる場所であり、現代に生きる私たちにさまざまなヒントを与えてくれる素晴らしい機会だと思っています。

Ki'i のプロフィール

Ki'i

ハワイ在住のアロマセラピスト&ハーバリスト。フラワーエッセンスプラクティショナー。古代ハワイアンヒーリング、ホ・オポノポノプラクティショナー。

2013年にハワイ州オアフ島に移り住み、古代ハワイアンヒーリング、ホ・オポノポノを学び始める。その後、オラクルカード、サイキック、キャンドルをアメリカ人ヒーラーから学ぶ。

以来、古代ハワイアンヒーリングの学びを通じて、ネイティブハワイアンの人々と繋がり、ネイティブハワイアンのコミュニティの中で暮らしている。

現在は、ハワイの植物療法ラアウ・ラパアウを始め、民族植物学、メディカルハーブ、アメリカ式アロマセラピーを実践中。ハワイアンヒーリングを日々の暮らしに取りいれ、心、体、スピリチュアルのバランスを大切に、ハワイの植物でガーデニングも楽しんでいる。

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