薬草と植物化学成分の関係『暮らしを彩るハーブの魅力(連載第一回)』

2019.6.3

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岩橋たか子 ( ハーブ活用スペシャリスト )

一般社団法人アンフュージョンInfusion代表理事 / ひだまりハーブガーデン&スクール代表
ハーブ活用のスペシャリストとして、ハーブのもつ植物化学成分を日常に効果的でおいしく取り入れるための活動を中心に展開している。

皆様はハーブについてどれくらいご存じでしょうか?料理やバスソルト、石けんなど様々なシーンでその名を見る機会が増えています。

実は、私たち人間にとってとても身近な存在である「ハーブ」。今回からその魅力をシリーズでお伝えしてまいります。ぜひココロとカラダの健康、そして美容のヒントにしていただけると嬉しいです。

私はハーブの素晴らしさ、またハーブでQOL(人生の質)を高めるためのヒントを、衣・食・住に繋げる活用法を講座やセミナーなどを通してお伝えしています。

私自身の仕事は外部での活動が多いのですが、ハーブを学んで知識を伝えたいという熱意ある講師たちとともに、福岡市中央区に「ひだまりハーブガーデン&スクール」というハーブスクールを運営しています。

スクールには多くの受講生が通ってハーブの学びを深めていますが、その多くはハーブをご自身や家族の健康維持のために活用したいという方々です。

現代の人達の健康に対する意識は、もはや治療から予防へと遷移しているというのを色々な場面で感じ取る事ができます。

 

ハーブって何?

ハーブというと、一番身近なものは「ハーブティー」ではないでしょうか。最近では専門ショップやブレンドの資格取得講座など、広くハーブティーを飲むという事が知られてきました。

少し前だと、お洒落だけど、美味しくない、独特な味が苦手、敷居が高い、いう声の方が多かったようですが、最近では「健康に良い」「美容のため」という視点で広がっています。

ハーブは「香草」と訳されるように「香り」があるものを指します。広義では日本茶やコーヒーもハーブです。その香りも含め、ハーブに含まれる様々な成分が、古代から「薬草」として使われてきたものです。

ハーブに含まれる成分の殆どは「水溶性」です。ですので、ハーブティーとしてお湯で成分を抽出して頂くというのが一番手っ取り早く、カラダに自然の恵みを取り入れる方法でもあります。

ハーブは例えばカモミールやペパーミントやローズヒップの様にスーパーなどでもティーバッグやリーフティーとして販売されています。

個々のハーブをお話する前に、まずはその「自然の恵み」と言われるモトである「植物化学(フィトケミカル)成分」について、お話しておきたいと思います。

 

植物化学(フィトケミカル)成分とは

私たちにとって紫外線が「敵」であるように、動物や生物、植物にとっても自分のカラダを攻撃する敵になります。

その紫外線のダメージからカラダを守るために、私たちなら日焼け止めや日傘、サングラス、あるいは屋外に出ないなど意識的に避ける事ができます。

しかし、植物は土壌にタネが落ちて根付いた所が一生の住み処になるわけで、そこで一生を全うしなければなりません。更に自分の「種(シュ)」を次に繋ぐ使命も果たさなければいけないのです。

そうやって、種(タネ)を作るまで自分のカラダを紫外線や害虫などから身を守るために自ら作り出すものが「植物化学(フィトケミカル)成分」です。

ハーブを始め植物たちは「光合成」によって、二酸化炭素と水からグルコース、酸素、水を新たに生成しています。そこから更に自分の身を守るための成分を代謝して作り出すわけです。

そして、その成分には様々な作用があることが分かっています。

例えば、一番の敵である紫外線からのダメージを無くすためにフラボノイドという色の成分を作ります。日本茶の色である「黄色」もフラボノイド成分になります。いわゆる「抗酸化」を得意とする成分です。

一言でフラボノイドといっても、作用自体は様々ですが、カラダをサビさせるものから守る、という意味では共通しています。

次に、光合成をするためのクロロフィルは葉に存在していますが、その葉っぱを齧(かじ)られたり食べられたりすると光合成自体ができなくなり、栄養分が作れなくなります。

そうならないように、タンニンというたんぱく質を固める成分をつくり出し齧られないようにしています。

このタンニンは渋柿や日本茶などにも含まれるいわゆる「渋い」というキュッとする感覚を与える成分です。あとは根に多く存在する「苦味」という苦い成分。苦味は自然界の毒のシグナルであり、根を守る事で植物の生命そのものを存続させています。

子どもや動物は苦いものが口に入ってきたら、必ず吐き出すほど、私たち生物の遺伝子そのものに苦味を毒として排除しようとする仕組みが備わっているのです。

成分としては、よくドラマでも毒殺のアイテムとして使用されるアルカロイドもこの苦味質のひとつになります。

私たちのカラダは毒が入ってくると解毒しようとするため、消化器系(胃や肝臓)がフル稼働します。

私たち大人は少量の苦いものがカラダに良い作用をする事を長い歴史の中で体感して、受け継がれてきたのです。それこそ遺伝子に組み込まれているのでしょうね。非常に興味深いです。

また、私たちはこのストレス社会の中で、香りに癒される事も多いですが、植物の出す香りは「精油」という成分になり、虫などに齧られたりすると虫が嫌うニオイを出し、更には周りの仲間にも「敵が来たぞ!」というシグナルを香りという形で発します。

タネを作るために蜂や蝶を引き寄せる香りも「精油」です。こんな風に植物が自分の命を繋げるために様々な成分をつくり出している事がお分かりいただけたでしょうか。

素晴らしい知恵ですよね。私たち人間はその植物からの恵みを頂いて生きているのです。

 

ハーブにはそれぞれニックネームがある!

植物たちの知恵を理解頂いた所で、今度はハーブに話を戻していきましょう。

前述した通りハーブには素晴らしい植物化学成分がひとつの中に、数百、それ以上の種類が存在しています。

そして、ハーブにはそれぞれニックネームがありますが、それは私たち人間のニックネーム同様にハーブの性格や特長をあらわしています。その性格や特長を決定づけるのがその「植物化学成分」というわけです。

例えば、カモミール(学名Matricaria chamomilla)というハーブがあります。カモミールには「胃腸のファーストチョイス」というニックネームがあります。

その特長は含まれる植物化学成分で鎮静・鎮痙作用があるフラボノイド成分(アピゲニン)や精油成分(αビザボロール、カマズレンなど)によります。

胃腸の調子が悪い時、胃腸内では炎症が起こっているのですが、その炎症に対する抗炎症作用が力を発揮して胃の不快感を鎮めてくれる。

他にも「天然のスポーツドリンク」と言われる体内の代謝を促進するような成分をもつハーブハイビスカスや、強い抗酸化の成分をもつ「若返りのハーブ」と呼ばれるローズマリーなどがあります。

このように、ハーブが持つ成分が=(イコール)ハーブの特長になっているのです。また、病院で処方される薬の半分以上はこのハーブの植物化学成分からできています。

そのハーブたちを、古代から薬として使ってきた先人たちの知恵。それがあるからこそ、今もなおハーブが使い続けられているのです。

病気ではないけれど体調が思わしくない、元気になりたい、あるいはぐっすり眠りたい。そんな時にふと浮かぶファーストチョイスアイテムにハーブティーがある。自然の恵みを生活に取り入る。とても素敵だと思いませんか?

次回は、紫外線についてのカラダに与える影響や、それに対応するハーブたちをご紹介したいと思います。

単純に「紫外線対策のハーブ」というだけでなく、どうしてこのハーブが紫外線に対応できるのか?など少し掘り下げてお伝えしていきます。

岩橋たか子 のプロフィール

岩橋たか子

ハーブ活用のスペシャリストとして、ハーブのもつ植物化学成分を日常に効果的でおいしく取り入れるための活動を中心に展開している。

スクールでハーブの「ティーレッスン」から資格認定講座などを開催する一方、大学や企業での健康セミナーやイベントなどの講師活動も行っている。ハーブの枠にとどまらず、健康視点のアプローチが最近ではとても人気の講座となっていて、料理のプロではなく「ハーブのプロ」としてハーブ&スパイスを使った「ハーブクッキング講座」なども好評。

また、ハーブを健康や病気予防、美容の為だけでなく生活空間やテーブルを彩り生活を豊かにすることをコンセプトに、企業や協会の会報誌に寄稿、TVやラジオなどのメディアからも常に情報発信している。

さらに、ハーブ関連の商品プロデュースにおいては、健康増進と美容を目的としたブレンドティーやサプリメントなど多くの企業へレシピやアイデアを提供している。


HP→ ひだまりハーブガーデン&スクール


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