2020.5.25
心の性質(トリ・グナ)と、体質のいろいろ『アーユルヴェーダで手に入れる、ほんとうの健康と幸せ(連載第六回)』

複合体質
前の記事にも書きましたが、アーユルヴェーダの体質には1種類のドーシャが優勢な(多い)人もいれば、2種類のドーシャが優勢な人、3種類のドーシャが同じ程度などの複合体質の人もいらっしゃいます。
複合体質の人は2種・3種のドーシャの持つ長所と短所を兼ね備えており、複合している全ドーシャに気を付ける必要があるので、ここで少し触れておきます。
(アーユルヴェーダの体質チェックを行っていない方はこちらからどうぞ⇒第四回記事)
ヴァータとピッタの得点が同じ位で、カファよりも高い場合は、ヴァータ・ピッタ体質と考えられます。これらの人は、冷え性であると同時に暑さにもあまり耐えられません。食欲旺盛でよく食べますが、すぐに胃腸の調子が崩れます。目標に向かってやる気もありますが、不安も強くて怒りも出します。ヴァータとピッタの両方の特徴が出ます。
「ヴァータ・カファ体質」の人は、カファが頑強なため、ヴァータの体力の弱さは薄れていますが、2つのドーシャに共通する“冷え”が強く出ます。ヴァータとして不安定な時と、カファとして安定している時とがあり、シーソーのように相反しているエネルギーであるため、性格にも波があります。
「ピッタ・カファ体質」の人は、ピッタの計算上手なところとカファの溜め込む性質から、どのような業界でも成功している人が多いといわれます。暑さにも寒さにも強く体は丈夫で、精神的にも中和されてバランスしています。2つのドーシャには油性や湿性が共通しているため、むくみや炎症を起こしやすい傾向にあります。
3種のドーシャがどれも同じ得点の「ヴァータ・ピッタ・カファ体質」の人は稀ですが、ある時はヴァータの想像力が豊かであり、ある時はピッタの鋭い知性を発揮し、またある時はカファの愛情深さを見せます。3つのドーシャのバランスが良く健康に恵まれる場合もありますが、どのドーシャも乱れやすい人でもあります。
自分の体質がより一層クリアに見えてきましたでしょうか?
変化した体質
本連載3回目の記事で、3つのドーシャそれぞれの特徴や、アンバランス時の症状を理解しておくことで、2種・3種の複合体質であっても、現在どのドーシャが優勢に出ているのかを判断し、増えたドーシャの方を減らす食事や生活法を取り入れて、病気を治療、健康を維持・増進していくのがアーユルヴェーダの健康法であるということをお伝えしました。
ここで私自身を例に挙げて、体質が生まれ持ったものから他の体質へと変わっていったことについてお話します。
私が生まれたばかりの赤ちゃんだった頃、浣腸をしなければ排便がない位の酷い便秘だったそうです。便秘はヴァータの症状ですので、ヴァータ体質で生まれた赤ちゃんだったと察しがつきます。
小学生になると、いつも走り回って遊ぶ大変活発な女の子に成長しましたが、小学校4年生の頃に歯並びが相当悪いこと(これもヴァータの表れです)から歯科矯正を受けることになりました。
その当時は、歯の大きさも不揃いで並び方も前後にずれており、歯科医師は「歯茎が小さすぎて歯が全部入りきれないようだから、歯を上下左右の奥から1本ずつ抜いて歯が真っ直ぐ並べるようにする」ということでした。
歯科矯正器具を取り付けてすぐは、歯茎が痛んで食事が食べられずに泣いていたのを覚えています。
矯正開始から約7年後の、高校1年生になると歯並びは大体改善しており、思春期の私は歯に銀色の矯正器具をしているのが嫌で仕方がなかったので取り外してもらいました。
そこから時を経て、アーユルヴェーダを学び始めたのは29歳。自分でピッタ・ヴァータの複合体質であると判断し、インド政府からゴールドメダルをもらっている上馬塲和夫先生の脈診でもピッタの脈が強いと診断されました。
私は生まれた持った「体質/プラクリティ」は「ヴァータ」だったのですが、歯並び(悪いのがヴァータの特徴)を改善することによってヴァータが鎮静し、それ以降は「ピッタ・ヴァータ体質」になったというわけです。
興味深いことに、歯科矯正を始めた直後から乾燥(ヴァータの症状)と皮膚炎(ピッタの症状)の症状が出現して慢性化していきました。金属を口に入れっぱなしにするわけですから、金属アレルギーもあるかもしれませんし、食事や生活の影響もあるはずですが、歯科矯正をタイミングに急激に体質が変化したことは興味深いものです。
心の性質(トリ・グナ)
ここまで体質の話を主にしてきましたが、アーユルヴェーダでは、体質に加えて心の性質にも目を向けます。
心は目に見えないものですが、アーユルヴェーダでは「物質」であるとされています。この世界の全ての物質には性質があるため、心にも“質”があります。
それはトリ・グナ(トリは3の意味)と呼ばれる3種類の性質で、誰もが3種全てのグナを持っていますが、持っている割合が違っており、それによってドーシャに与えられる影響が変わってきます。
「トリ・グナ」チェックシート
以下がグナのチェックリストです。
1問5点で合計点を出して、自分にはどの性質が多いのかを確認してみましょう。
① スナック菓子やレトルト食品をよく食べている。
② 他人や世間は、よく分からないことばかりだと感じる。
③ 何事にも執着しやすい。
④ 大雑把で決断するのに時間がかかる。
⑤ 自己価値があるのか分からないので自虐的になる。
⑥ 気持ちが沈み、怠惰で何もしたくない。
⑦ 考えるのも話すのも苦手なので、あまり意見したくない。
⑧ 鈍感で感動する事があまりない。
⑨ 物がなかなか捨てられない。
⑩ 家族や親しい人が近くにいて安心できることに幸せを感じる。
① アルコール、辛いもの、塩気が強いものなど刺激的な味を好む。
② 他と競争するクセがあり、人よりも勝っていたいと考える。
③ 動き過ぎたり、喋り過ぎたりする。
④ 見栄っ張りで自分をステキに見せてくれる宝飾品が好き。
⑤ 批判的で怒りっぽく、攻撃的で激怒する事もある。
⑥ 権力に弱く、野心的である。
⑦ 神経質で不安感が強い。
⑧ こだわりが強い。
⑨ 快適な環境や贅沢な暮らしを求める。
⑩ 自分の目標や願望を実現することで幸せを感じる。
① 新鮮な旬の食物を出来立ての薄味で食べるようにしている。
② 相手の気持ちを想いながら会話をするようにしている。
③ 自分と相手のお互いにとって良い方法を考える。
④ 全ては天の計らいによって完璧に起こっていると考える。
⑤ よく熟慮した上か、確信ある直観に従って決断する。
⑥ 物質的な豊かさよりも、霊的・精神的な成長をしたいと思う。
⑦ いつも穏やかで、平安で幸せな気持ちでいる。
⑧ 全ての生き物に優しく、あるがままでいる事を許している。
⑨ 持ち物は少なく、簡素で素朴な生活をしている。
⑩ 魂、自然、宇宙、神聖な存在との繋がりに幸せを感じる。
ご自分にはどの性質が一番多いと感じられましたでしょうか。
心の性質に影響を与える食品例
このように心の性質トリ・グナは、タマス(惰性)、ラジャス(激性)、サットヴァ(純粋性)の3種類であり、これらは体のドーシャとも関連しており、グナもドーシャのように食べ物によっても影響を受けます。
食べ物も物質なので、心と同様に3つののグナをそれぞれの割合で持っており、その質が私たちの精神に影響を及ぼします。
タマス(惰性)が増えると怠惰になって精神活動が停滞するため、体において同じ性質を持っているカファのドーシャを増やします。それ故にカファ体質の人の心にはタマスが多い傾向があります。
【食品例】冷凍食品やレトルトなどの保存食、保存料などの食品添加物、作り置きの食事、スナック菓子など。
タマスが多い人はこのような食べ物を好みます。
ラジャス(激性)が増えると活動的になり過ぎたり、怒りっぽくなったりするため、同じ性質を持つヴァータとピッタのドーシャを増やします。それ故にヴァータ体質とピッタ体質の人の心にはラジャスが多い傾向があります。
【食品例】激辛食品、玉ねぎ、にんにく、肉類など。
ラジャスが多い人はこれらの刺激的な味を好みます。
以上2つのタマスとラジャスは体のドーシャを増やすので健康を害します。
(ドーシャは増えすぎてバランスを崩すのでしたね⇒連載第四回を参照)
一方、サットヴァ(純粋性)が増えると正しい知性や優しさや愛をもたらし、体の3つのドーシャをバランスさせるように働いて健康を増進します。
【食品例】米、ごま油、新鮮な果物、アーモンドなど。
サットヴァを増やす食べ物は長寿、高い精神力、健康、幸福、愛情を増すとされますので、どの体質の方もサットヴァの割合を増やしていくことで健康で幸せに満ちた人生を送ることができます。
とは言っても食べ過ぎにはご注意下さいね。過ぎたるは猶及ばざるが如しです。
次回は、アーユルヴェーダの健康観などについて見ていきましょう!
参考資料
AMAJ、RAMAのスクール講座資料
「美しく豊かに生きる」イナムラ・ヒロエ・シャルマ
「インドの生命科学アーユルヴェーダ」上馬塲和夫・西川眞知子著
梅村静代 のプロフィール

大学卒業を機にワーキングホリデーでオーストラリアへ。20代は雑誌編集・マンション販売などの仕事で得た収入で海外を放浪。
のちに霊性の向上を求めてインドへ渡り、アーユルヴェーダ・ヨーガ・瞑想を学ぶ。
2005年、日本アーユルヴェーダ・スクール本科1期を卒業。シンクロニシティに導かれ九州に戻り、介護職・パソコン営業などの仕事を経て、有名痩身エステサロンに入社。
プライベートサロン、アーユルヴェーダサロン勤務の後、アーユルヴェーダ・痩身・エステ・ヨーガ・スクールを融合させ2012年8月8日RAMA(ラーマ)を開業。
同年より日本人アーユルヴェーダ医師の田端瞳に師事。田端瞳代表のAMAJ(アーユルヴェーダ・メディカル・アソシエイツ・ジャパン)副理事長として、アーユルヴェーダを普及する活動を続けている。
2017年からはローフードマイスター福岡薬院校としてローフード資格講座も開始。
活動はサロン内に留まらず、ヨガスタジオ、統合医療施設、美容サロン、整骨院、食品会社等でも、各種セミナーや基礎理論講座などを行っている。
RAMAホームページ→ https://www.rama88.com/
AMAJ(アーユルヴェーダ・メディカル・アソシエイツ・ジャパン)ホームページ→ https://amaj.jp